国税庁認定NPOの新制度移行の詳細が判明
今年4月1日に施行される改正NPO法(特定非営利活動促進法)に関して、既に国税庁からの認定を受けている認定NPO法人の監督などについて、詳細が明らかになった。既存の国税庁認定法人が、新制度に基づく所轄庁の認定を受けた際は、所轄庁の監督が優先することなどが分かった。
これにより、既存の国税庁による認定NPO法人が、今年4月から施行される改正NPO法に基づいた所轄庁(都道府県・政令市)による認定NPO法人へ移行する際の流れが明らかとなった。既存の認定NPO法人は今年4月1日以降に、所轄庁へ改正NPO法に基づいた認定申請を行い、認定を受けることで、実質的に新しい認定NPO法人制度へ移行できることとなった。
来年4月1日に施行される改正NPO法に伴い、認定NPO法人制度は抜本的に改正される。認定権限が国税庁から所轄庁(都道府県・政令市)に移管される他、「仮認定制度」が導入され、「みなし寄附金制度」が拡充されるなどの大改正が実現する。
改正NPO法施行は、あと2ヶ月に迫ってきたものの、国税庁から既に認定を受けている認定NPO法人が、どのように所轄庁が認定を行う新しい制度へ移行するかなどについて、はっきりとしない点が残っていた。
こうした中で、今回、シーズが行った内閣府からの聴取により、既存の認定NPO法人の新制度対応について、以下のような点が明らかとなった。
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●平成23年度までの国税庁による認定制度(以下、旧認定)と、平成24年度からスタートする所轄庁=都道府県・政令市による認定制度(以下、新認定)の制度は、別制度である。
【新しく認定申請を行う法人の取り扱い】
●平成23年度中(2012年3月31日まで)に国税庁へ認定申請があった法人については、国税庁が旧認定制度に基づき、認定を行い、認定有効期間の終了まで監督も行う。
※国税庁で申請を受け付けた審査中の法人を、所轄庁へ引き継ぐことは無い
●平成24年度以降(2012年4月1日から)に所轄庁に認定申請があった法人については、所轄庁が新認定制度に基づき、認定を行い、監督も行う(以下、新認定法人)。
【既に認定を受けている法人の取り扱い】
●旧認定制度で認定された特定非営利活動法人(以下、旧認定法人)は、改正NPO法施行後も認定有効期間終了までは、国税庁の担当であり、国税庁が監督を行う。(附則第10条第1項・第3項)※ただし、後述するように新認定も受けた場合は所轄庁が優先
・事業年度ごとの報告書類等の提出先は、引き続き「国税庁」である
・旧認定法人への調査権限や認定取消し権限も「国税庁」が有する
●改正NPO法では、旧認定法人が新認定を受けることを禁止していない。また、旧認定法人が新認定を取得した場合でも、旧認定は失効しない。
⇒結果として旧認定法人が新認定も取得した「旧認定法人かつ新認定法人」が可能になる。
※旧認定法人が新認定を取得すると、拡充後の「みなし寄附金制度(控除上限額:所得の50%または200万)」を利用可能になる
●改正NPO法では、「旧認定法人かつ新認定法人」について、基本的に新認定制度における「所轄庁」の監督が優先されることとなっている。(附則第10条第3項中の除外規定)
・事業年度ごとの報告書類等の提出先は、「所轄庁」のみとなる(事業年度途中で新認定を受けた場合は、例外的に国税庁と所轄庁双方に提出が必要になる)
・調査権限や認定取消し権限等も「所轄庁」が優先される
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新制度への移行を読み解く上では、まず第一に、現在の国税庁による認定NPO法人制度と、今年4月からスタートする所轄庁(都道府県・政令市)による新認定NPO法人制度は連続的でない、別の制度であるという理解が必要だ。
そのため、今年3月31日までに国税庁に認定申請を行ったNPO法人の審査・認定・監督等は、4月1日の改正NPO法施行後も、引き続き国税庁が担当することとなっており、所轄庁へは引き継がれない。国税庁による認定NPO法人の認定有効期間(認定日から5年間)は、引き続き有効であり、その期間中、認定に関する報告書類等の提出は国税庁に対して行うとされている。すなわち、2012年4月1日から最大約5年間半は、国税庁による旧認定NPO法人と、所轄庁による新認定NPO法人の両方が併存する形となる。
※租税特別措置法に基づく現在の認定NPO法人制度では、法人自らが認定を取り下げることができない。
しかし、国税庁による旧認定NPO法人のままでは、改正NPO法によって拡充される「みなし寄付金」の損金算入限度額が、従来のまま適用される(所得金額の20%まで)ことが明らかになるなど、拡充された税制優遇を活用できない点が課題だった。
そこで、租税特別措置法に基づく国税庁認定(旧認定)から、改正NPO法に基づく所轄庁認定(新認定)へどう移行するのかが焦点となっていたわけだ。
今回の聴き取りから、国税庁による認定有効期間中でも、所轄庁への認定申請や認定取得は可能である前提を踏まえた上で、所轄庁による認定が優先されることが判明した。具体的には、国税庁の認定に加えて、所轄庁の認定を取得することで、みなし寄付金拡充等の改正NPO法に基づく税制優遇が得られる他、各種報告書類や監督は国税庁ではなく所轄庁が担当することになり、国税庁に提出の必要はなくなる。いわば<国税庁の認定を、所轄庁の認定が上書きする形だ>。
※ただし、事業年度途中で新認定を受けた場合は国税庁へも報告が必要
国税庁による認定の認定有効期間中は、国税庁の認定NPO法人であることに変わりはないが、所轄庁の認定も取得することで、実質的には改正NPO法に基づく新認定制度へ移行することができるわけだ。
これらが判明したことにより、既に認定を受けている旧認定法人に関して、今後の新認定への移行に向けた流れが、以下のように考えられることになった。
【旧認定法人から新認定法人への移行方法】
●A:認定有効期間の終了を待つケース(旧認定法人→新認定法人)
旧認定制度の認定有効期間の終了に合わせて、新認定制度の申請を行い、切れ目なく認定を受けるパターンである。
(例)
旧認定 認定有効期間(~平成25年9月30日)
↓※切れ目なく認定を受けられるように、早めに認定申請しておく
新認定 認定有効期間(平成25年10月1日~)
●B:認定有効期間の終了を待たないケース
(旧認定法人→旧認定法人かつ新認定法人→新認定法人)
改正NPO法の施行後、旧認定の有効期間がかなり残っている段階で、新認定の申請・認定を受け、何年間かの「旧認定法人かつ新認定法人」を経て、完全な新認定法人へ移るパターンである。
(例)
旧認定 認定有効期間(~平成25年9月30日)
↓
新認定 認定有効期間(平成24年8月1日~)
旧認定かつ新認定 (平成24年8月1日~平成25年9月30日)
※約1年間の「旧認定かつ新認定」期間中は「所轄庁」が監督
↓
新認定 (平成25年10月1日~)
※旧認定有効期間が終了することで、新認定のみとなる
旧認定法人が、税制優遇の切れ目なく、新認定法人への移行を行うには、上記のどちらかのパターンで新認定制度へ移ることが必要になる。
国税庁の認定有効期間がまだ多く残っている段階で、新認定を取得するか、あるいは認定有効期間が残り少なくなってきてから取得するかは、各団体の判断による。ただし、認定有効期間の残りが余りに少ない状態で申請をすると、期間終了までに新認定が受けられず、優遇税制に切れ目ができてしまう可能性もあるので、早めの申請がお勧めだ。(参考:平成24年度中に認定有効期間が終了する国税庁認定NPO法人は無い)
また、新認定を受ければ、拡充後のみなし寄附金制度を活用できることから、パターンBによる移行が今後増えていく可能性がある。