行政 : 兵庫県がボランタリー活動支援条例を制定の方向
兵庫県は、9月の県議会で「県民ボランタリー活動の促進等に関する条例(仮称)」を制定する方向で調整を進めている。8月28日に神戸新聞が報じた。条例は、ボランティア活動を対象としたもので、宣言的な内容の理念条例で具体的な支援措置を定めたようなものではないという。
まだ、条文はオープンになっていない。
■解説~NPO・ボランティア条例の種類について
国会におけるNPO法の成立・施行を受けて、各地でNPO・ボランティア活動に関する条例の検討が相次いでいる。
この条例の種類だが、次のような種類があることに注意を要する。
まず、組織としてのNPO(民間非営利組織)を対象としたものと、個々人のボランティア活動を対象にしたものとの2種類があることだ。NPOを対象としたものは、「非営利性」をキーワードにするのに対し、ボランティアを対象としたものは、「無報酬性」をキーワードにしている。
岩手県が今年3月に制定した「社会貢献活動の支援に関する条例」は、どちらかといえばこのボランティア活動を対象としたものに入る。
まだ、自治体レベルでは、NPOの特徴やその重要性を理解されていないようである。そのため、NPOをボランティア活動と同じものと考えているか、NPOではなくボランティア活動の面ばかりに着目する自治体が多いようだ。
ボランティア活動はもちろん重要なので、その支援のための条例づくりも大切だが、今日は、NPOに対する認識が問われている背景もきちんと認識される必要がある。
ボランティア支援条例だけでは、NPO支援にとっては、かえってマイナスとなる場合もあることも認識しておくべきだ。
NPOに関する条例では以下の3種類ある。(分類の概念は松原による)
もちろん、(2)と(3)を一緒にしたようなタイプの条例もある。
今後、各自治体で、さまざなま内容案が出てくるので、きちんとタイプの特徴をつかまえておこう。
(1)施行条例
NPO法(特定非営利活動促進法)により都道府県に委任された事項を定めるための施行条例。もっぱら法律の運用上の手続を定めるため、手続条例という。山形県が、すでに6月議会で制定し、現在、46都道府県が9月議会で制定する予定にしている。もっぱら、NPO法で議論される「条例」とはこのことを指す。支援的な内容は一切含まれていない。
(2)理念条例
NPOに対する県の姿勢や、県とNPOとの関係の理念について述べた条例で、宣言的なものや基本条例的なもの。具体的な支援内容はふくまれない。NPOが重要であることを謳ったり、自治体とのパートナーシップのあり方や関係性を述べたり、「(自治体は)、NPO活動支援のために財政的な措置を講ずるものとする」や「(自治体は)、NPO活動の促進のための施策の実施に努めるものとする」といった努力規定を置くなどするもの。
北海道庁が、今年4月に発表した「北海道市民活動支援条例(案)」などがこのタイプになる。
現在、行政によるNPOの支援については、NPOの自主性・自律性を尊重する立場から、むやみに支援することに対しては批判がある。そこで、逆効果になりかねない支援よりも、理念的な条例で、支援の具体策は個別や情況を見て行おうという自治体は、この条例を検討しているようだ。
ただし、中には、「市町村の責務」「県民の責務」などを定めて「県民は、県のNPO活動支援に関する施策に協力する責務を有する」「NPO活動は、県と企業とのそれぞれの協働の下に実施されなければならない」などと、全体主義的な条文になってしまいかねない懸念もあり、注意を要する。(これではまるで大政翼賛会?)
(3)支援条例
具体的な支援施策を定めた条例。普通は、条例名に「支援」と命名されてはいない。
総合的な支援の他に個々の支援施策ごとに条例がつくられる場合も多い。たとえば、支援センター、基金、補助金制度のための条例などがある。
ボランティア活動も含んではいるが、「神奈川県立かながわ県民活動サポートセンター条例」がこれにあたる。
ただし、自治体がともかく支援すればNPO活動が発展するとするという考えには問題がある。NPOの自立と経営をよく考えた支援のあり方が検討されるべきである。
*なお、ボランティア支援に関しても、この理念条例と支援条例、その混合形態がある。