行政 : ローマ字による法人名称の登記に関する法務省見解
NPO法人の登記において、名称や目的にローマ字やアラビア数字を使えないことに対する不満が高まっている。北海道や関西の団体が、ローマ字の名称をつけて、所轄庁に相談に行ったところ、ローマ字では登記できないとの理由で、変更を要求されたりしている。
この現状を受けて、民主党の金田誠一議員が、法務省に、ローマ字名称の使用の可否に関して、質問趣意書で昨年質問を行った。
法務省からは、今年の1月22日に返答があった。
以下、質問と答弁を掲載する。
【質問】
特定非営利活動法人の登記に関する質問主意書
提出者 金田誠一
この十二月一日から、特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)の認証受付けが開始された。特定非営利活動促進法によれば、所轄庁の認証を得たNPO法人は、その後、組合等登記令に基づき、登記を行うことで、法人として成立することになる。現在、各NPOは、認証の準備をすすめているが、法人格を取得しようとしている多くのNPOから登記の現状について、「NPOという標記が認められない等、余りにも時代錯誤であり、現状にそぐわないのではないか」等の困惑の声が寄せられている。実際、二十一世紀が目前に迫り、国際化、高学歴化が進行する中で、登記行政の現代化が求められていると考える。
従って、次の事項について質問する。
一 法人の名称について、アルファベットの表記をカタカナに書き直させているが、その根拠は昭和二十年二月十七日付民生局長の回答に基づいているようである。これは、英文が敵性言語とされていた時代の産物ではなかろうか。アルファベットの読み方を小学校で学ぶ現在、アルファベット表記を名称に使用することは、登記の目的からしてなんら差し障りがないといえる。アルファベット表記を認めるべきであると考えるが、いかがか。
二 法人の定款における目的、事業などについても、アルファベットの不使用の他に、「・」やカギカッコなどについて制限的な指導を行っていると聞いている。これは、私的自治の原則に基づいて活動するNPOに些末な点で行政が介入することになるのではないか。一般社会で多用され、一般に定着している表現・表記を広く認めるべきではないかと考えるが、いかがか。
右質問する。
【法務省答弁】
内閣衆質一四四第九号 平成十一年一月二十二日
内閣総理大臣 小渕恵三
衆議院議長 伊藤宗一郎殿
衆議院議員金田誠一君提出特定非営利活動法人の登記に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員金田誠一君提出特定非営利活動法人
の登記に関する質問に対する答弁書
一について
特定非営利活動法人等の法人の登記は、当該法人に関する基本的な事項を、その活動に直接従事する者のみならず、広く一般に公示する制度であるから、当該法人や関係者の正当な利益を保護するためにも、登記された事項が正しく理解されるように配慮する必要があり、その表記方法についても、商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第四十八条及び法人登記規則(昭和三十九年法務省令第四十六号)第九条の規定を定めるなど明確性、統一性の確保に努めているところである。
同様の配慮から、現在の登記実務では、法人の名称又は商号を登記する際にはアルファベットの表記は認めておらず、日本文字を用いることとしている。名称又は商号にアルファベットが用いられている法人についても、登記に関しては仮名で表示すべきものとしている。
登記における表記方法については、御指摘のとおり、国際化、高学歴化等の社会の動向を十分勘案すべきであるが、同時に、表記方法の統一による正確性の保持等の要素にも配慮し、登記制度が国民の権利を保護する制度として適切に機能するよう努めるべきである。政府としては、今後とも、このような多様な観点を踏まえて、検討を続けてまいりたい。
二について
特定非営利活動法人等の法人の目的等を登記する際にアルファベットを用いることができるかどうかについては、一についてでお答えしたのと同様である。
なお、法人の目的等を登記する際にいわゆる中点やかぎ括弧を用いることは、かぎ括弧が相互に対応していないなど不適切な場合を除き、差し支えないものと考えている。