行政 : どうなる?社会福祉事業法の改正
8月10日、厚生省は社会福祉事業法等の改正のため、中央社会福祉審議会に「社会福祉の増進のための関係法律の整備等に関する法律案(仮称)・制定要綱」について諮問を行った。
厚生省は、この諮問に対する答申を受けて、今年秋の臨時国会には、社会福祉事業法の改正案を提出すると見られている。施行は、一部を除き平成12年4月1日からを目指している。
答申は9月末を予定しているという。
社会福祉法人の法人格の認定用件の緩和については「事業規模要件の緩和:常時保護を受ける者が二十人未満であるために社会福祉事業に含まれなかった事業のうち政令で定めるものについては、常時保護を受ける者が十人以上であれば、社会福祉事業に含まれるものとすること。」とされている。
NPO法人との関係や、NPO法人の行う事業との関係は不明である。
社会福祉事業法の改正は、今後のNPOの制度改革に大きな影響を与えると見られている。
社会福祉事業法等一部改正法案要綱の概要は以下のとおり。
社会福祉事業法等一部改正法案要綱の概要
第1 改正の趣旨
個人が尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう、個人の選択を尊重した制度の確立、質の高い福祉サービスの拡充、個人の自立した生活を総合的に支援するための地域福祉の充実を図るため、所要の改正を行うもの。
第2 内 容
[1] 改正等の対象となる法律(8本)
社会福祉事業法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法、社会福祉施設職員等退職手当共済法、民生委員法、生活保護法、公益質屋法(廃止)
[2] 改正の概要
- 社会福祉事業法の一部改正
- 法律の題名、目的規定及び基本理念規定の改正
- 社会福祉事業の推進
[社会福祉事業の範囲の見直し]
- 社会福祉事業の追加及び削除
[規制緩和]
- 政令で定める事業の規模要件(通所施設20人以上)を緩和し、社会福祉法人の設立を促進。
[情報開示]
- 社会福祉法人に財務諸表及び事業報告書の開示を義務付け
- 社会福祉事業の追加及び削除
- 福祉サービスの適切な利用の推進等
[情報提供]
- 社会福祉事業経営者及び国、地方公共団体の情報提供に係る責務の明確化
- 福祉サービスの利用契約の適正化
- 利用契約についての説明・書面交付義務付け
- 誇大広告の禁止
- 利用契約についての説明・書面交付義務付け
[苦情解決、権利擁護]
- 社会福祉事業経営者の苦情解決の責務を明確化
- 都道府県社会福祉協議会に、福祉サービス利用援助事業の実施及び福祉サービスに関する苦情解決のための運営適正化委員会を設置
[その他]
- 社会福祉事業経営者についてサービスの自己評価などにより質の向上に努める責務を明確化
- 社会福祉事業経営者及び国、地方公共団体の情報提供に係る責務の明確化
- 地域福祉の推進
[地域福祉計画]
- 地域福祉を推進するため、市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画に関する規定を設けること
[社会福祉協議会]
- 市町村社会福祉協議会について、二以上の市町村を区域として設立することができることなどを規定
- 都道府県社会福祉協議会の役割として社会福祉事業従事者の養成研修、社会福祉事業の経営指導などを行うことを明記
[共同募金]
- 共同募金に関する制度の見直し
- 大規模災害に対応するため、県外への広域配分の実施を可能とすること
- 配分の透明性を確保するため配分委員会を設置すること
- 「過半数配分原則」(県内の過半数の社会福祉事業経営者に配分しなければならないという原則)を撤廃
- 大規模災害に対応するため、県外への広域配分の実施を可能とすること
- 地域福祉を推進するため、市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画に関する規定を設けること
- 法律の題名、目的規定及び基本理念規定の改正
- 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法及び児童福祉法の一部改正
- 措置制度の支援費支給方式への変更
以下に掲げる福祉サービスの提供方式を、現行の措置制度から、利用者が福祉サービスの提供者と直接契約し、市町村が利用者に対し支援費を支給する方式(支援費支給方式)に改めること- 対象事業
- 身体障害者福祉法上の事業
- 施設:身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設
- 在宅:身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業、身体障害者短期入所事業
- 施設:身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設
- 知的障害者福祉法上の事業
- 施設:知的障害者更生施設、知的障害者授産施設、知的障害者通勤寮
- 在宅:知的障害者居宅介護等事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者短期入所事業、知的障害者地域生活援助事業(グループホーム)
- 児童福祉法上の事業
児童居宅介護等事業、児童デイサービス事業、児童短期入所事業
- 施設:知的障害者更生施設、知的障害者授産施設、知的障害者通勤寮
- 身体障害者福祉法上の事業
- 支援費支給方式における市町村等の役割
[市町村の役割]
- 相談、情報提供、及び必要に応じたあっせん又は調整等。
- 緊急の場合等、契約によるサービスの利用が著しく困難である場合には、職権による入所等の措置。
[国及び都道府県の財政援助]
- 国及び都道府県は、市町村が支援費として支弁する費用の一部を負担又は補助。
- 相談、情報提供、及び必要に応じたあっせん又は調整等。
- 対象事業
- 事業の法定化
- 事業・施設の追加
- 身体障害者・知的障害者・障害児相談支援事業
(相談、情報の提供並びに助言及び指導、連絡調整等の援助を総合的に行う事業)
- 身体障害者生活訓練等事業
(身体障害者が日常生活又は社会生活を営むために必要な訓練等の援助を提供する事業)
- 手話通訳事業
- 盲導犬訓練施設、盲導犬の貸与
- 知的障害者デイサービス事業、知的障害者デイサービスセンター
- 身体障害者・知的障害者・障害児相談支援事業
- 視聴覚障害者情報提供施設に、点訳、手話通訳等の機能を追加
- 事業・施設の追加
- 措置制度の支援費支給方式への変更
- 児童福祉法の一部改正
- 助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直し
助産施設及び母子生活支援施設について、現行の措置制度から、保育所の利用方式と同様の方式(利用者が、希望する施設を都道府県等に申し込み、利用する方式)に改めること
- 児童委員の見直し
要保護児童を発見した者が、当該児童を福祉事務所又は児童相談所に通告する場合に、児童委員を介して行うことができること等とすること。
- 助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直し
- 知的障害者福祉法及び児童福祉法の一部改正
都道府県が行う知的障害者福祉、障害児福祉に関する以下の事務を市町村に委譲
- 知的障害者更生施設等への入所、知的障害者短期入所に係る事務
- 知的障害者地域生活援助事業(グループホーム)に係る事務
- 児童短期入所(障害児のショートステイ)に係る事務 等
- 知的障害者更生施設等への入所、知的障害者短期入所に係る事務
- その他
- 民生委員法の一部改正
- 住民の立場に立った活動を行う民生委員の職務内容を明確化
- 民生委員推薦会の委員の資格要件を緩和
- 住民の立場に立った活動を行う民生委員の職務内容を明確化
- 社会福祉施設職員等退職手当共済法の一部改正
- 共済契約の対象範囲を社会福祉法人が経営する社会福祉施設等以外の施設及び事業に拡大すること
- 掛金の額を、概ね五年を通じ財政の均衡を保つことができるように決定すること
- 退職手当金の算定基準を、国家公務員退職手当に準じたものとすること
- 共済契約の対象範囲を社会福祉法人が経営する社会福祉施設等以外の施設及び事業に拡大すること
- 公益質屋法の廃止
- 民生委員法の一部改正
- 施行期日
この法律は、平成12年4月1日から施行。ただし、
- 身体障害者生活訓練等事業、盲導犬訓練施設の法定化及び社会福祉事業への追加に関する規定、助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直しについては、平成13年4月1日から、
- 地域福祉計画、措置制度から支援費支給方式への変更及び知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲に関する規定については、平成15年4月1日から、
それぞれ施行。 - 身体障害者生活訓練等事業、盲導犬訓練施設の法定化及び社会福祉事業への追加に関する規定、助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直しについては、平成13年4月1日から、
【新規に追加される社会福祉事業(9事業)】
* なお、公益質屋については、今回、社会福祉事業から削除。 MAILMAGAZINENPOに関する政策・制度の最新情報、セミナー・イベント情報など月数回配信しています。 NPO法人セイエンのメールマガジン登録ご希望の方はこちらから
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