行政 : 介護保険事業の課税は未決定
NPO法人が、介護保険事業を行ったとき、その介護保険事業による収益は課税になるかどうかは、まだ未決定であることが明らかになった。
宮澤大蔵大臣は、17日の衆議院予算委員会で、「4月にお始めになるのにご不便になりませんように、それまでに方針を決定させていただきます。」と語り、4月までには課税関係を決定したいとした。
この問題は、NPO法人が介護保険事業を行った場合、その介護保険事業は、まったく新しい事業であり、従来課税となる法人税法上の公益法人税制の収益事業33業種に該当するのかどうかが不明であることに起因する。
昨年4月、辻元清美衆議院(社民党)事務所が、大蔵省主税局に確認したところ
「33業種には、介護保険事業にぴったりと合う事業項目がなく、現状では課税とするのは難しく、来年の介護保険スタート時には非課税でスタートする予定である。ただし、その後は、民間企業などとの競争の状況などを見て、課税関係を考えていきたい。」
とする旨の回答を受けていた。
しかし、今年に入ってから、一部税務署などで、介護保険事業を課税とする見解をだされることがあったり、税理士が「介護保険事業は請負業にあたり課税事業」とセミナーで述べるなど、混乱した状況にあった。
そこで、再び辻元清美事務所から、今年2月に入って、大蔵省主税局に確認したところ、国税庁に確認するように指示され、国税庁に再度確認したところ、
「NPO法人等の介護保険事業に関しては、まだ全く未検討で、大蔵省や厚生省とともに早急に検討したい」
という回答を受けていた。
このような状況を受けて、17日の予算委員会で、石毛えい子衆議院議員(民主党)が、大蔵大臣に見解を質したところ、「まだ未決定である」との返答を得たものである。
なお、この件に関しては、一部新聞等で「NPO優遇税制創設へ~介護保険事業参入を促進」というような記事が流されているが、これはちょっと行き過ぎた表現であるといえよう。
17日の予算委員会で、明らかになったのは、
- 現状では、介護保険事業が、公益法人等における法人税法上の収益事業とするかどうかは未決定である。
- 4月までには、どうするか決めたい。
- 厚生省としては、NPO法人の活動しやすい環境をつくりたいと考えている。
程度のことである。
また、介護保険事業が、公益法人に対する法人税法上の収益事業にあたらないとなれば、NPO法人以外の公益法人(社会福祉法人も含む)に対しても、非課税となるので、NPO法人だけの優遇措置とは言えない。
17日の衆議院予算委員会での質疑応答の概要(シーズで編集)は以下のとおり。
石毛えい子議員:
介護保険と介護保険に基づくサービスを提供する事業主体、とりわけNPO法人についてお伺いしたいと思います。
まず最初に大蔵大臣にお尋ねする中身ですけれども、介護保険事業を行うNPO法人ですけれども、このNPO法人は、法人税上の取り扱いとしましては、介護保険からの介護報酬にかかわる収入に関しましては非課税、そういう理解でよろしわけでございますよね。
宮澤大蔵大臣:
今、お話のことは、公益法人がしております仕事の中で、何が法人税法の課税の対象となる収益事業か、何がそうでないかということでございますけれども、収益事業というのは、一応法人税法で三十三という項目を定めておりまして、例えば請負業、医療保険業、物品賃貸業等々が挙げられておりますけれども、介護保険事業とそれらの事業とがどういう関係に立つか、その中に入るか入らないかということは、実はこれから決めなければならない問題でございます。これから、介護保険法の施行に伴いまして、介護保険業、どういうものが行われていくかということは、実は行政の側で、具体的には厚生省と課税当局との間で具体的にこれから決めていかなければならない問題でございます。
まだ多少時間がございますので、関係方面ともよく接触をしながら、お尋ねのまさにその問題について、国としての方針を決定しなければならないと思っております。
石毛えい子議員:
今、大蔵大臣の御答弁をお伺いしまして、私は大変驚きましたんですが、いただきましたこの三十三業種の中に介護サービス事業というのは入っておりませんので、当然非課税かというふうに私は理解しておりましたということですけれども、四月からの施行に向かってこれから決めなければならないという、今そういう段階でおられるのかということに大変驚きましたので、いつごろそれは決まるのでしょうか、お決めになるおつもりなのでしょうか、そこのあたりを教えてください。
宮澤大蔵大臣:
当然この中に入らないとおっしゃいますと、ちょっと私の方も少し驚く点がございますけれども、具体的に考えまして、例えば医療保険業なんということはございますので、しかしそうではないだろうとお思いになられる方もありましょうし、新しく介護保険事業が実施されることになりますから、それを今までの扱いとどう関係づけていくかということは行政にとりましては新しい問題だというふうに承知をいたしまして、それについての決定をいたさなければならない、行政としてはそういう問題として考えております。今までの範疇で、この三十三の中に当然入らないと即断できませんものですから、そこは行政でよく協議をして決めてまいりたい。
宮澤大蔵大臣:
いずれにいたしましても、せっかくこの仕事をしていただくのでございますから、四月にお始めになるのに御不便になりませんように、それまでに方針を決定させていただきます。
石毛えい子議員:
ぜひ、NPO法人で地域で活動されている諸団体、それぞれの方々が元気が出るような方向で御検討いただきたいと思います。厚生大臣に、今の中身について、所管されているお立場でどういうふうにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
丹羽厚生大臣:
私は、このNPOの税制上の問題につきまして、かねてから大変関心を持っております。 介護保健サービスの重要な担い手としてその活躍が、大蔵大臣もおっしゃいましたけれども、期待されているところでございますので、その環境の整備につきまして、十分に活動しやすいような体制をぜひともつくっていただくよう願っているものでございます。
(中略)