行政 : 介護保険事業課税に関する国会答弁
介護保険事業が、収益事業として課税するとした大蔵省の決定に関して、4月19日の衆議院厚生委員会で、その理由や背景についての説明が政府からなされた。
これは、民主党の古川元久衆議院議員の質問に対して、福田大蔵省審議官、丹羽厚生大臣が答えたもの。
以下に、衆議院の速記録(未定稿)から、その質疑答弁の内容をお知らせする。
○ 江口委員長
古川元久君。
○ 古川委員
民主党の古川でございます。
本日は、児童手当の改正案についての御質問をさせていただく前に、きょうの新聞に「介護サービス NPOに課税」、こういう記事が載っておったのですけれども、この点についてひとつ御質問をさせていただきたいと思います。
実は、私のところに、日曜日に、政府がNPOの介護保険事業へ課税を決定した、これに対してNPO団体として抗議の声を上げよう、そんなEメールがやってきました。きょうの新聞にも、近く大蔵省は国税庁を通じて通達を出すということになっておりますけれども、これは事実ですか。
○ 福田政府参考人
お答え申し上げます。
近々、今先生御指摘のような通達を出すというふうに聞いております。
○ 古川委員
今回の介護サービス事業に対して、これを収益事業と判定して課税をするという中で、社会福祉法人などは法人税法上非課税になっているから、これは課税対象とはしない。しかし、同じように介護保険の指定業者としてちゃんと指定を受けたNPO法人であっても、これは課税を受けるということのようなのでありますが、社会福祉法人も指定を受けたNPO法人も、ともに非営利で本来事業としてこうした介護事業を行うという点では同じであって、これを法人税法上の取り扱いで異なるような取り扱いをする合理的な理由はないと思うのですけれども、これはどうしてですか。
○ 福田政府参考人
お答え申し上げます。
介護保険法におきまして、保険給付の対象とされております介護サービス事業につきましては、現時点で想定されております事業内容等から見て、法人税法施行令に定められておりますいわゆる医療保健業、物品貸付業、物品販売業または請負業に該当すると考えられること等から、原則といたしましてこういう事業を行います営利法人、それから農協、生協、NPO法人、社会福祉法人につきましては、基本的には課税されることになっております。
御指摘のNPO法人を含めまして、公益法人等が営む介護保険のサービス業は、原則として、医療保健業も含めまして収益事業に該当し、法人税が課されることになっております。
なお、御指摘の医療保健業につきましては、これは実は昭和三十二年に収益事業とされたものでございますが、その際、社会福祉法人につきましては、社会福祉という一般的に公益性が高いと認識されている事業を営むことを目的として設立される法人であり、適正な運営を確保する観点から、法律上、設立、管理、監督に関し厳格な内容の規定が設けられておりまして、社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならないとされておりますこと、また、生活困窮者に対しましては無料または低額な料金での診療事業や老人保健施設を利用させる事業を行うことが法制度上予定されている法人であること等も踏まえまして、社会福祉法人が営む医療保健業につきましては、例外的に収益事業から除外されているということでございます。
○ 古川委員
要は、法律で社会福祉法人だけ除外されているからそこだけ除いたということですね。それ以上法律に書いてないからという、ある、ない、それだけで区別した、それだけですね、理由は。
○ 福田政府参考人
法律上、社会福祉法人につきましては、今申し上げましたような特別な位置づけがなされているということで、その位置づけにのっとって、例外的に収益事業から除外したということでございます。
○ 古川委員
大臣、今の大蔵省の答弁で、これで厚生省はいいんですか。
○ 丹羽国務大臣
前の委員会でもたしか私申し上げたと思いますが、石毛委員の質問に対してだと思います、私どもといたしましては、NPO法人につきましては、介護サービスの重要な担い手であると期待をいたしておるわけでございますし、活動しやすい環境づくりに向けて努力をしていく、こういう基本的な考え方に立つものでございます。
法人税の今後の取り扱いにつきましては、介護保険の事業主体となる、今委員から御指摘がありました社会福祉法人は非課税であって、医療法人であるとか営利法人、それからNPOが課税と、こういうことの仕分けが審議官から説明があったわけでございますけれども、それぞれの法人の性格や規制のあり方などを含めてさまざまな観点から検討していかなければならない、こういうことでございますが、私は、厚生省としては、これはあくまでも十分にそういった点を勘案して、ひとつ今後の検討課題として位置づけて、NPO法人がより活動しやすいような環境づくりを目指していくことが私どもの立場だ、このように考えているような次第であります。
○ 古川委員
要は、これは見直しを求める、大蔵省に対してこれを非課税にしてくれというふうに厚生省から働きかけるということと理解してよろしいですね。
○ 丹羽国務大臣
今後の、つまり十三年度以降のことになると思いますけれども、私どもとしては、そういった問題を指摘しながら、まだ正式に決めておるわけではございませんけれども、一つの要望事項として当然検討していかなければならない問題だ、こう認識をいたしておるような次第でございます。
○ 古川委員
介護保険見直しというのを、導入を円滑に進めるためにといって去年ずっと与党でも検討されていらっしゃったわけでしょう。その中で、保険料の徴収猶予だとか家族介護に対して慰労金を出すとか、そんなことをやっている場合があったらどうしてこういう問題をもっと早くからちゃんと見直しておかないのですか。これはもうわかっていたことで、さっきの大蔵省の説明からしても、明らかに法律の欠缺ですよ。法整備を怠っていたからこういうことになるわけですね。これは厚生省の責任として、そんな悠長な話じゃなくて、今すぐにでも大蔵省とちゃんと協議をする、そのような形で見直しを求めるということを強く最初にお願いしたいというふうに思います。
本題の方の質問に入らせていただきたいと思いますけれども、今回の児童手当の見直し案、一部改正案につきましての前提としまして、ちょっと大臣の御見識をお伺いしたいと思うのですが、そもそも子供というのは私たちの社会にとって、そして国家にとってどのような存在として大臣はお考えになっておられるのか、御見解をお聞かせいただけますか。
○ 丹羽国務大臣
まず、その前段として申し上げさせていただければ、恐縮でございますがNPO法人が行う介護サービスに対する法人税の取り扱いでございますが、これは税務当局において現行法令に照らして決められたということでありまして、先ほど福田審議官の方から答弁があったとおりでございますけれども、私どもといたしましては、先ほどから申し上げましたように、いわゆる介護サービスの重要な担い手という立場から、今後、与党内においても十分に協議をしながら一つの要望事項として検討する課題だ、こういう認識を持っておるような次第でございます。
それから、本題でございますが、子供というのはいつの時代にありましても次の世代の社会を担う存在でございます。子供が心身ともに健やかにはぐくまれることは、社会にとって極めて重要なことである、このように考えているような次第でございます。
こうした考え方に立ちまして、子育てを行う家庭を社会全体で支援するということが何よりも大切なことでございまして、政府といたしましては、福祉のみならず、教育であるとか、そのほか全般につきまして、子供を健やかに産み育てるための施策を推進していきたい、このように考えているような次第であります。
○ 古川委員
大臣が言われたので一言申し上げますけれども、繰り返しになりますけれども、こういう問題が出てくるという話は前からわかっていたわけですね、NPOの話は。厚生省だって、何も話を聞いていなくて突然大蔵省からぽんと言われたというわけじゃないはずですね。協議していてこういうことになったわけですね。
NPOを本当に大事な介護保険の担い手だ、主体だというふうに考えておられるのだったら、口先だけでなくてちゃんと態度で示さなきゃ、やっている方からしたら、厚生省は本当に我々をどう考えているのかというふうに思いますよ。
介護保険をしっかり定着させようというのだったら、そういう問題にきっちり一つ一つ取り組むことというのは大事なのじゃないですか。その点が欠けていて、目先の保険料の徴収猶予とかそういうことばかりやっているのでは、これでは介護保険制度自体の信頼が失われる、そういう大きな問題だ。これは小さな問題に思われるかもしれませんが、私は、この介護保険制度をどう円滑に定着させるかという意味で極めて大きな問題だ、そのことを指摘させていただきたいと思います。