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2000年08月30日 10:00

行政 : 経企庁が大蔵省にNPO優遇税制を要望

 

 

 経済企画庁は、8月30日、大蔵省に対する平成13年度の税制改正に関して、NPO法人に対する税制上の優遇措置を新設することを求める要望を提出すると発表した。

 要望の内容は、


  • 一定の要件を満たすNPO法人を「適格NPO法人」とすること
  • 適格NPO法人に対しては、収益事業の課税の軽減や、その法人に寄附した寄付者への税制上の優遇措置をもうけること
  • 地方税の優遇措置も設けること

などが柱になっている。

 大蔵省は、これを受けて、NPO法人に対する優遇税制の具体的な検討に入ることになる。

 今後の議論の進み方は、政府レベルでは、経済企画庁が大蔵省に税制優遇措置の実現を働きかける一方、NPO議員連盟や各党のNPO委員会の議論などを経て、自民党NPO特別委員会を初めとする与党NPO委員会が与党税制調査会に働きかけ、その実現の可否や内容などについて検討していくことになる。
 最終的な決着の場は、与党税制調査会となる。
 この検討は、12月中旬の与党税制調査会での税制改正大綱が決まるまで続けられる。

 一部新聞などでは、すでにNPOへの税制優遇措置が新設されることが決定されたかのような報道があるが、本格的な検討は、この経済企画庁の要望を皮切りに、ようやく始まるというのが正しい。

 経済企画庁の要望は、従来の公益法人税制をかなり踏まえたものとなっており、まだ、NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会が出した提案の軽減税率の程度とは開きがある。
 また、認定機関も、第三者機関とするか、国税庁とするか、判断を先送りしたものとなっており、この具体的内容や要件に関しては、政治へボールを投げた内容になっている。

 しかし、網羅的に優遇税制に関する内容が書き込まれており、昨年の「NPO/NGOに関する税・法人制度連絡会の提言」、「NPO議員連盟の提案」などと並んで、今後の大きな議論の叩き台となるものである。

 これらの提案や要望に対して、今から、市民サイドで、どれだけ運動が盛り上がるかが、税制優遇措置実現の大きな鍵を握ることになるだろう。

 経済企画庁の要望の具体的内容は、以下の通り。


     平成13年度税制改正に関する経済企画庁意見

                            平成12年8月
                             経済企画庁

   特定非営利活動法人に対する税制上の優遇措置の新設について

趣旨
 NPOは、我が国において行政でも営利企業でもない第3のセクターとして、
国民の多様化したニーズに効果的かつ機動的に応えるとともに、個々人の自己
実現の意欲を活かすことができる仕組みとして、21世紀に向けて、今後ます
ます重要な役割を果たすことが期待されている。
 特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)は、市民自らが行う自
由な社会貢献活動の促進を目的とする特定非営利活動促進法(平成10年12月1
日施行)に基づき設立され、この活動をより一層発展させていくことが期待さ
れている。財政基盤の強化は、NPO法人に対する重要な政策の一つであり、
その一つとして税制上の優遇措置を講じる必要がある。
 税制上の優遇措置を設けることについては、国民の納税の義務を免除するも
のである以上、相当の公益性を有するものに限って行われ、それにふさわしい
公益性を判断する基準やその公益性が担保される仕組みを備えることが必要で
あり、一定の要件を満たすNPO法人(以下「適格NPO法人」という。)に
対して、以下のような税制上の優遇措置を設けることが効果的である。

I 税制上の優遇措置の内容

1 適格NPO法人自身に対する措置

(1)法人税【国税】・法人住民税法人税割及び法人事業税【地方税】
  1) 「収益事業」への課税の軽減措置
       適格NPO法人の各事業年度の収益事業から得た所得に対する
      税率を公益法人等と同等の取扱い(800万円を超える分の所得
      についても税率を22%とする。)
  2) 寄付金の損金算入枠を公益法人並みに拡大
       適格NPO法人は、各事業年度において支出した寄附金の損金
      算入限度額を公益法人等と同等の取扱い(当該事業年度の所得金
      額の20%を限度として損金の額に算入することができる)とす
      る。
  3) 「みなし寄付金」の適用
       適格NPO法人が収益事業に属する資産のうちから収益事業以
      外の事業のために支出した金額は、公益法人等と同等にその収益
      事業に係る寄付金の額とみなす(損金算入限度額は、公益法人等
      と同等の所得の20%とする。)制度を導入する。

(2)所得税【国税】・法人住民税利子割【地方税】
  ○ 利子等の所得の非課税措置
       適格NPO法人が支払いを受ける所得税法上の利子、配当等に
      ついては、公益法人等と同等に非課税とする。

(3)その他【地方税】
   図書館、博物館の設置を主たる目的とするような適格NPO法人に対し
  て、公益法人に準じて法人住民税の均等割及び法人税割、固定資産税並び
  に不動産所得税の非課税措置を要望する。

2 適格NPO法人に寄付をした者に対する措置

(1)法人税【国税】・法人住民税法人税割及び法人事業税【地方税】
  ○ 法人が適格NPO法人へ寄付した場合の損金算入枠の創設
   内国法人が適格NPO法人に対して支出した寄付金の額は、いわゆる一
  般寄付金枠及び特定公益増進法人に対する寄付金枠とは別枠で一定額を限
  度として損金に算入できるものとする。

(2)所得税【国税】・個人住民税【地方税】
  ○ 個人が適格NPO法人へ寄付した場合の所得控除の創設
   個人が適格NPO法人に対して支出した寄付金について、一定額を限度
  として所得控除の対象とする。

(3)相続税【国税】
  ○ 個人が相続・遺贈財産を寄付した場合の寄付相当分の相続税の非課税
    措置
   相続又は遺贈により財産を取得した者が適格NPO法人に対して当該取
  得した財産を贈与した場合、当該贈与した財産は相続税の課税計算上非課
  税の対象とする。

II 適格性の認定基準
 NPO法人に対して税制上の優遇措置を設けることについては、国民の納税
の義務を免除するものである以上、相当の公益性を有するNPO法人を適切に
選んで行う必要がある。
 但し、今後、NPO法人の実態を踏まえて、更に検討をしていくこととする。

1 相当の公益性の担保
(1) 活動・事業内容の公益性に着目した一定の基準
   一定期間以上存続している団体については、市民からある程度認知を受
  けたものとして、一定の要件を満たしているか判断する。

(2) 収入面に着目して一般からの支持度合いを測る基準
   基準が明確で恣意性が働きにくいといわれている米国のパブリック・サ
   ポートテストを参考に日本の社会に合致した一般からの支持度合いを測
   る基準を作成し、客観的に判断する。

2 適切な業務運営
 特定の個人、法人その他の団体の利益を目的として事業を行うことを排除す
る効果をもつ要件を満たしているか判断する。

III 適格性の認定機関
 第三者機関、税務当局という2つの考え方がある。
 明確な認定基準ができなければ、公正・中立な審査を行う第三者機関を新設
するという考え方があるが、行財政改革の流れとの関係等の問題がある。
 他方、明確な認定基準ができるならば、第三者機関を置かず、地域社会と一
定の距離を保ち専門的な判断ができると考えられる税務当局が、通常の税務執
行の一環として直接に執行にあたることが適切という考え方もある。
 上記IIと同様に、今後、NPO法人の実態を踏まえて、更に検討をしていく
こととする。

○ 適格性の認定基準の例

1 相当の公益性の担保
(1)活動・事業内容の公益性に着目した一定の基準
  1) 一定の事業実績があること。
  2) 不特定多数の者を対象として活動をしていること。
  3) 特定非営利活動に係る支出が、全体の支出の一定以上であること。
  4) その法人の事業の運営につき、法令、法令に基づく行政庁の処分又は
    定款に違反する事実がないこと。
  5) 特定非営利活動促進法に定める情報公開の規定を的確に守っているこ
    と。また、容易にアクセスできる方法で情報公開を行っていること。

(2)収入面に着目して一般からの支持度合いを測る基準
  1) 多くの者の指示を得ていること。
  2) 総収入に占める助成金、寄付金又は会費収入、政府補助金が一定以上
    であること。

2 適切な業務運営
(1)特定非営利活動法人の活動に実質的な影響力を行使する立場にある、又
   はあった特定の個人又はその親族が役務の提供の対価以上の便益を当該
   法人より得ていないこと。
(2)特定非営利活動法人が特定の個人又は法人その他の団体に対して有利な
   条件で、当該法人の財産の利用、財産の譲渡、給与支給等の行為をして
   いないこと。
(3)特定非営利活動法人の役員及び職員について報酬給与を公開していること。

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