行政 : 男女共同参画会議、新設保育園は企業・NPO等で
6月19日、政府の男女共同参画会議「仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会」(会長・樋口恵子東京家政大学教授)は、「仕事と子育ての両立支援策について」と題する最終報告を小泉純一郎首相に提出した。
この最終報告書には、「仕事と子育ての両立支援策に関する提言」が含まれており、その提言の中で、「新設保育所については、学校の空き教室等の既存の公的施設や民間施設を活用して企業、NPO等をはじめ民営で行うことを基本とする。 」としている。
政府は、この最終報告に盛り込まれた方針について、22日に閣議決定し、来年度予算案に反映させるたいとしている。
提言部分の全文は以下の通り。
仕事と子育ての両立支援策について
平成13年6月19日
男女共同参画会議
仕事と子育ての両立支援策
に関する専門調査会
仕事と子育ての両立支援策に関する提言
男女共同参画会議仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会の検討結果として、以下の施策を、
基本的には平成13・14年度に開始し、遅くても平成16年度までに実施するよう提言する。
これらの事業については、特段の配慮をし必要な予算を確保し、緊急に実施する。
1 両立ライフへ職場改革
2 待機児童ゼロ作戦
-最小のコストで最良・最大のサービスを-
3 多様で良質な保育サービスを
4 必要な地域全てに放課後児童対策を
5 地域こぞって子育てを
1.両立ライフへ職場改革
1 基本方針
(1)各企業が、仕事と子育ての両立がしやすい多様な雇用形態や処遇、弾力的な労働時間制な
どに一層積極的に取り組む。そのため、政府としても各種支援・要請を行うとともに、税
務上も配慮する。
(2)育児休業制度ならびに出産休暇の十分な活用を求める。とりわけ男性の育児休業取得を奨
励するとともに、父親の出産休暇の全員取得をめざす。(「父親の産休5日間」)
(3)企業の両立指標を開発・公表するとともに、優良企業については内閣総理大臣が表彰する。
また、各企業に両立支援の風土を育てるため、経営者や幹部の研修を推進する。
(4)労働契約の形式上期間雇用者であっても、実質上期間の定めなく雇用されている者につい
ては、育児休業の対象となることを明確化する。
2 具体的目標・施策
(1)各企業等の取組に対する支援
・事業主が、所定外労働時間の削減を図り、また、フレックスタイム制や短時間勤務等を導入
できるよう積極的に支援を行う。
・待遇面や仕事の内容は正社員と同じで勤務形態が短い、短時間正社員の制度について制度導
入を支援する。
・企業の両立支援への取組にかかる経費について、福利厚生費として幅広く損金算入を認める。
・女性のキャリアプランの確立の支援に努める。
・求人の年齢制限緩和に向けた取組を促進する。
(2)育児休業制度と出産休暇の十分な活用
・育児休業制度の広報を一層積極的に行い、男性の育児休業取得を奨励する。また、配偶者の
出産時における父親の出産休暇について、育児休業の制度を活用して取得が可能であること
を広くPRする。
(3)企業の評価・研修
・企業の両立指標の開発に着手し、できるだけ早く結果を公表する。
・両立支援に積極的な企業に対して総理大臣表彰を実施する。
・各企業のトップや幹部に対して、両立支援の風土を育てるための事業・研修を実施する。
(4)期間雇用者への対応
・事実上期間の定めなく雇用されている者が、育児休業を取得しやすくなるような指針を策定
する。
2.待機児童ゼロ作戦 -最小コストで最良・最大のサービスを-
1 基本方針
(1)待機児童の解消をめざし、潜在的な需要を含め、達成数値目標及び期限を定めて実現を図
る。特に、待機児童の多い地域の保育施設を重点整備する。
(2)保育の拡充は公立及び社会福祉法人立を基盤としつつ、さらに、民間活力を導入し公設民
営型など多様化を図る。また、自治体等の適正な基準を満たした施設の設置は迅速に行う。
(3)学校の空き教室など利用可能な公共施設は保育のために弾力的に活用する。また、駅など
便利な拠点施設を保育に活用するための支援や助成を行う。
2 具体的目標・施策
○待機児童ゼロ作戦
保育所、保育ママ、自治体におけるさまざまな単独施策、幼稚園における預かり保育等を活
用し、潜在を含めた待機児童を解消するため、待機児童の多い地域を中心に、平成14年度
中に5万人、さらに平成16年度までに10万人、計15万人の受け入れ児童数の増大を図
る。施設の運営は民間を極力活用し、最小コストで最大の受け入れの実現を図る。
○新設保育所については、学校の空き教室等の既存の公的施設や民間施設を活用して企業、N
PO等をはじめ民営で行うことを基本とする。
○上記民営保育所の整備を促進するため、引き続き会計処理の柔軟化を進めるとともに、公有
財産の利用等の環境整備を行う。また、待機児童のいる市町村は公設民営保育所整備計画の
策定に努める。
○保育所の定員の弾力化や設置基準の緩和、保育所を併設した各種施設を増やすための支援を
行うとともに、地方公共団体は基準を満たした保育所の設置認可を迅速に行なう。
3.多様で良質な保育サービスを
1 基本方針
(1)病院や診療所における病児・病後児保育及び保育所における病後児保育を一層推進すると
ともに、延長保育や入園時期の弾力化、育児休業中の上の子の受け入れなどの柔軟な受け
入れを実現する。
(2)民営型保育所の参入による多様できめ細かなサービスの展開や公立保育所の終業時間後の
民間による補足サービスなど、民間の資源も活用した良質なサービスを供給し選択の幅を
拡大する。
(3)保育や育児に関連する各自治体の創意工夫を奨励し、各種モデル事業に対し財政的措置を
講じる。また、好事例に関して情報ネットワークを通じて広く紹介する。
(4)利用者が保育内容を十分把握できるよう、経営主体に対して十分な情報開示を義務づける。
また、地域の育児に関する情報を各地域の実情に応じて利用しやすい形で提供する。
2 具体的目標・施策
(1)保育所等のサービスの多様化
・病児、病後児保育を推進するため、市町村は必要な地域全てにおいて、関係者間の協議をす
すめる。
・現在17%の公営保育所における延長保育の民営なみ(62%)の実施をめざし、一時保育、
休日保育等多様なサービスの実施の倍増以上をめざす。また、公営保育所における民営での
延長サービスの実施など、必要に応じて公と民が協力してサービスを実施する。
(2)地域の実情に応じた取組の推進
・駅前や商店街等における各種保育サービスや郊外の保育所への送迎サービスの提供等、地域
の実情に応じた保育を発展させるため必要な助成を行い、地域に即した取組を促進するため、
特に重点地区でのモデル事業を支援する。
(3)保育に関する情報の提供
・保育に関する各自治体の好事例について広く情報提供する。
・i-子育てネット等を活用し、提供される保育サービスに関する内容・第三者評価や各種子
育て支援情報をユーザーの立場に立った、わかりやすい形で情報提供する。
4.必要な地域すべてに放課後児童対策を
1 基本方針
(1)大都市周辺部等の放課後児童対策が必要な全ての地域で学校・児童館等に学童のための居
場所を確保し、時間的にも保育所と同等のレベルを確保しつつ、ニーズに応じた弾力的な
放課後児童対策を推進する。
(2)運営は公的な責任の下に民間の活用を図り、豊富な経験をもった地域のさまざまな人材を
活用する。
2 具体的目標・施策
(1)放課後の居場所拡充計画
放課後児童クラブや地域の全ての児童に居場所を確保する事業などの放課後児童の受け入
れ体制を大都市周辺部を中心に整備し、平成16年度までに、全国で15000箇所とす
る。受け入れ体制の整備に当たっては、公的施設を活用するとともに、運営は民間主体を
極力活用し、最小コストでの最大のサービスの実現を図る。
○放課後児童対策のための施設の新設に当たっては、学校の空き教室など、利用可能な施設を
利用し、公設民営方式等による柔軟な運営を推進するとともに、高齢者等の地域の人材を活
用することを基本とする。
○市町村は、民間主体やコンペ方式などを活用し、子どもの発育に役立つプログラムを提案し
てもらい、内容においても適切な実施を確保する。
(2)情報の提供
・施設に関する必要な情報について、ユーザーの立場に立った、わかりやすい形での提供を行
う。
5.地域こぞって子育てを
1 基本方針
(1)ファミリー・サポート・センターを整備するとともに、良質なベビーシッターの紹介や保
育ママの支援など、地域の実情に応じた多様な家族支援サービスを充実させる。
(2)幼稚園における子育て支援を充実するとともに、学生や生徒が男女共同参画社会の担い手
として子育て支援を体験するボランティア活動の機会を作る。
(3)保育所等が組み込まれた職住近接のまちづくりを促進するため、保育所を組み込んだまち
づくりを行うとともに、都市近郊からの都心居住を促進する。
2 具体的目標・施策
(1)家族支援サービスの充実
・ファミリー・サポート・センターについて、必要な整備を進める。
・良質なベビーシッター探しを支援するとともに、保育ママについてバックアップ体制を確立
するなど推進する。
・親に対する子育て支援サービス(子育て学習や相談体制の整備など)を充実させる。
(2)幼稚園における子育て支援の充実
・希望のあるすべての幼稚園で「預かり保育」を実施できるよう推進する。
・幼稚園における総合的な子育て支援活動(子育て相談や保護者の交流のための場の提供など)
を推進する。
(3)地域における多様な子育て支援の充実
・地域の多様な人材を子育て支援に活用する仕組みづくりを進める。
・保育所や放課後児童の受け入れの現場体験を地域における学生・生徒の体験活動の大きな柱
として位置付ける。
(4)職住近接のまちづくりの促進
・若い親が居住できる、良質な賃貸住宅の供給を都心部において促進するとともに、利便性の
高い場所での保育所等の立地を支援する。