行政 : 政府雇用対策に「NPOの育成」
政府の産業構造改革・雇用対策本部は、26日、「中間とりまとめ」を決定し、発表した。
この「中間とりまとめ」では、
- 新市場、新産業の育成による雇用創出
- 人材育成・能力開発の推進
- 安心して働ける就業環境の整備
- 労働市場の構造改革に適した雇用面のセーフティネットの整備
の4項目に関して、基本的な方向性を示しているとされている。
このうち「1)新市場、新産業の育成による雇用創出」において、「新たな経済主体(NPO)の育成」という一章が設けられている。
「中間とりまとめ」の前文部分と、NPO関連部分は以下の通り。
産業構造改革・雇用対策本部 中間とりまとめ
平成13年6月26日
産業構造改革・雇用対策本部決定
21世紀を迎え、我が国は、バブル崩壊後の経済の停滞状態から決別し真に豊かな国を構築するか、
国全体が地盤沈下していくかの重大な岐路に立っている。
今まさに求められているのは、不良債権の最終処理などの「過去の清算」と、21世紀にふさわしい
競争的経済システムの構築という「未来への挑戦」の両面から構造改革を断行することである。その際、
不良債権の最終処理などを進めていく過程で懸念される雇用情勢の変化に的確に対応し、痛みを乗り越
えて改革を断行していくことが重要である。
このため、産業構造改革・雇用対策本部において、聖域なき構造改革を断行するという哲学の下、全
閣僚の叡智を結集し、
1)新市場、新産業の育成による雇用創出
2)人材育成・能力開発の推進
3)安心して働ける就業環境の整備
4)労働市場の構造改革に適した雇用面のセーフティネットの整備
について、具体的な施策の実現に向けて精力的に検討を行い、今回、その基本的な方向性について中間
とりまとめを行った。
政府としては、この中間とりまとめで示した方向性に基づき、成長の源泉となるイノベーションの基
盤整備、重点戦略分野での研究開発、ベンチャーの振興を実施するとともに、各分野での規制・制度改
革などにより新たな市場と雇用を創出していく。さらに、能力開発の推進、多様な雇用形態の整備、円
滑な就業の促進など、雇用システムの改革とセーフティーネットの整備を推進していく。
なお、この中間とりまとめの内容を具体的施策に結実するため、我が国企業における国際競争力の向
上及び新規雇用の創出という観点も含め、引き続き項目の洗い出しを徹底して行うとともに、制度改革
等、必要となる施策の内容の更なる具体化、スケジュールの明確化に鋭意取り組み、本年9月を目途に、
総合的な政策パッケージをまとめ、新市場・雇用創出のための対策を決定する。
I. 新市場、新産業の育成による雇用創出
2. 医療福祉、環境、物流、都市・土地・住宅、情報通信などの分野における規制・制度改革等
○NPO
・新たな経済主体としてのNPOの育成
○新たな経済主体(NPO)の育成
近年、介護福祉、環境・リサイクル、まちづくり等の分野で先駆的な社会事業を実施する新たな組織
形態であるNPOの設立が相次いでおり、その団体数(公益法人等を除く)は約9万に及ぶとの調査結
果もある。こうしたNPOは、高齢者、女性、障害者の社会参画や雇用を促進し、充実した自己実現の
場を提供するものとして我が国経済社会にとって益々重要な役割を果たすことが期待される。
このため、経済社会システムにおけるNPOの位置づけについて分析をするとともに、NPOが事業
主体、雇用主体として発展する上で隘路となっている人材、資金、活動基盤等に係わる課題を明らかに
し、その解決のために必要な環境整備を図る。
○NPOの位置付けについて分析
・今年度、国民生活審議会の報告等を踏まえつつ、更に経済社会におけるNPOの役割とその発展が
もたらす影響を具体的に分析し、健全な発展に向けた課題と解決策について提言する。
○NPOによる経済社会インフラ整備の促進
・環境NPOの政策提言を行政施策につなげるための事業の推進、NPOと連携した社会資本マネ
ジメント、NPOへの委託訓練を活用した能力開発の推進の検討、高齢者・障害者の情報通信利
用を促進する非営利活動の支援等、NPOと行政の連携による経済社会インフラの整備を促進す
る。
・まちづくり、介護福祉、生涯教育、起業支援、地域産業振興、新エネルギー・省エネルギー、技
術開発等の各分野におけるNPO活動を促進する。
○NPO活動の環境整備
・地域環境基金の活用等による環境NPOに対する支援を強化する。
・勤労者マルチライフ支援事業の推進により、勤労者のNPOへのボランティア参加を促進する。
・NPOと他の経済主体とのイコールフッティングを図る観点から、企業、公益法人等を対象とす
る補助金、委託費、政策融資等へのNPOの対象追加等、必要な事業環境の整備について検討す
る。
○NPO法の見直し
・特定非営利活動促進法(以下NPO法と略称)の見直しについては、今後、立法府等で本格的な
検討が行われることから、立法府等での見直しの議論に資するため、特定非営利活動の対象分野
の追加、申請書類の簡素化等について、検討材料の提供を行っていく。
○NPO会計基準に関する考え方の整理
・特定非営利活動法人に係る会計基準については、NPO法に定める原則以外は各法人の判断に任
せられているため、NPO側のニーズを踏まえ、具体的な基準について考え方の整理を図る。
○NPO法の適切な運用
・NPO法の普及定着を図る観点から、引き続き法人の設立申請等に際しての相談を実施していく
とともに、法人制度の広報、法人に関する情報公開を一層充実させていく。
・今年度から施行されるNPOに関する税制上の優遇措置につき、広報活動等を通じ制度の定着を
図る。