行政 : 政府の中期展望でNPO促進
政府は、25日の閣議で、2002年度から5年間の構造改革の道筋を示す「構造改革と経済財政の中期展望」を決定した。この中で、政府は、「NPO活動は未だ限定的」とする認識を示す一方、「社会需要の拡大などに対応してNPO等の活躍の場が拡大する」として、政策で「NPO活動を促進する」としている。
この中期展望は、18日に、政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)によって作成・決定されたものを閣議で決定したもの。
この中期展望では、「日本が目指す経済社会の姿と、それを実現するための構造改革を中心とした中期的な経済財政運営について明確な将来展望を示している」とされ、この展望に「盛り込まれた政策は、政府として実行すべきものである」とされている。
内容は、以下の目次から構成されている。
はじめに
1.日本の経済社会についての現状認識
(1)脆弱な経済構造
(2)限定的な社会活動
(3)公的部門の非効率性
(4)構造改革を進めない場合の問題
2.中期的に実現を目指す経済社会の姿
(1)「人」を何より重視する経済社会
(2)雇用・高齢化・地域経済等の課題への積極的な挑戦
(3)強靱な経済、財政の実現
3.構造改革を中心とする経済財政政策の在り方
(1)デフレの阻止と不良債権問題の解決
(2)活力ある経済社会を目指した規制改革、制度改革
(3)政府の在り方
(4)社会資本整備の在り方
(5)持続可能な社会保障制度
(6)地方行財政制度の改革
中期展望では、
1.-(2)限定的な社会活動
2.-(1)「人」を何より重視する経済社会
(2)雇用・高齢化・地域経済等の課題への積極的な挑戦
3.-(2)活力ある経済社会を目指した規制改革、制度改革
(3)政府の在り方
の箇所でNPOについて触れられている。
まず、中期展望では、「1.日本の経済社会についての現状認識」で、「限定的な社会活動」として、NPOの現状について以下のような認識を示している。
ボランティア、NPOなどの活動は、法律の整備などによりある程度の拡大をみせたものの、
未だ限定的であた。また、都市環境や保健、介護など社会のネットワークが形成されること
によってはじめてより良質なサービスの供給が可能になる、いわゆる社会需要は潜在的に拡
大しているが、十分に充足されていない。
そして、「2.中期的に実現を目指す経済社会の姿」として、「(1)「人」を何より重視する経済社会」を第一に掲げ、その項目(iii) 「「人」を育む社会環境、自然環境の形成」で、政府とNPOの将来について以下のように展望を示している。
(簡素で効率的な政府とNPO等の活躍)
社会が柔軟で効率よく機能するためには、国民に対して説明責任を果たし、簡素で効率的
な政府が必須である。また、社会需要の拡大などに対応して民間企業、NPO等の活躍の場が
拡大する。
(2)雇用・高齢化・地域経済等の課題への積極的な挑戦
国民がこれらの問題について感じている不安の背景には、個人や社会が持てる力を十分発
揮できていないという状況がある。それを克服することは、新たな発展の契機ともなる。政
府は環境を整備し、国民、企業、NPO等が多様な挑戦を行う。
(雇用拡大への挑戦)
雇用創出の鍵をにぎるものは民間需要主導の持続的な経済成長である。同時に、雇用創出
効果の高い歳出への重点化、規制改革などの構造改革を進め、雇用を創出するとともに、労
働力需給のミスマッチを縮小し、失業率をできる限り低くするよう努め、雇用不安の軽減を
目指す。働き方に対する価値観の多様化に伴う様々な就労形態を実現しつつ、ワークシェア
リングについても議論を深める。また、都市環境、介護など、国民と政府、企業、NPO等に
よるネットワークを形成することにより良質なサービスの供給が可能になるいわゆる社会需
要が顕在化され、新たな雇用が創出される。
そのための政策としては、「3.構造改革を中心とする経済財政政策の在り方」の「(2)活力ある経済社会を目指した規制改革、制度改革」で、「生涯現役社会、男女共同参画社会の構築」や「地方の自立・活性化」における政策として、NPOが取り上げられている。
(生涯現役社会、男女共同参画社会の構築)
年齢や性別にかかわりなく能力に応じて働ける社会を構築していく。定年延長や継続雇用
の促進、募集・採用における年齢制限の緩和、有期労働契約、派遣労働など雇用の選択肢の
更なる拡充、雇用に関する性による差別の撤廃等を通じ、働きやすい・雇いやすい環境づく
りを進める。また、女性の就業意欲を阻害しないよう、社会保障制度等を見直す。同時に高
齢者や子どもたちにとって何が幸せかという視点に立って、多様な保育・介護ニーズに対応
できるよう、保育・介護サービスの拡充と質的向上に向けた規制改革を進める。こうした取
り組みにより、高齢者の意欲と能力を活かせる雇用システムの構築、女性の社会進出の円滑
化を図る。また、NPO、ボランティア活動を促進する。更に、子どもを産み育てやすい環境
を整備し、少子化の流れを変えるため、積極的な対応策を社会全体で進める。
(地方の自立・活性化)
「国土の均衡ある発展」の本来の考え方を活かすため、「個性ある地域の発展」、「知恵
と工夫の競争による活性化」を重視する方向へ施策の重点化を進める。
水道など地方公営企業への民間的経営手法の導入を促進し、介護福祉、まちづくり、リサ
イクルなど地域社会において社会事業を担うNPOの支援強化など地方の活性化を図る。
(後略)
そして、官民の役割分担という点では、「3.(3)政府の在り方」で、NPOを民間部門と位置付けた上で、以下のように「NPO等の活躍の場を拡大する」としている。
(官民の役割分担)
民間需要主導の持続的成長は、旺盛な活力にあふれた民間部門と簡素で効率的な政府を実
現することによって初めて可能となる。このため、官民の役割分担を見直し、特殊法人改革、
財政投融資改革、公益法人改革等を進めるとともに、民間企業、NPO等の活躍の場を拡大す
る。更に、財政投融資については、行財政改革の趣旨を踏まえ、民間ではできない分野・事
業に特化する等対象分野・事業の重点化を図るとともに、時々の社会経済情勢を踏まえ、
セーフティネットの構築等真に政策的に必要と考えられる資金需要には的確に対応する。
この中期展望の全文は、官邸ホームページで見ることができる。