行政 : 政府税調、寄附金税制見直しを
政府税制調査会は、14日、中長期的な税制改革の基本方針として「あるべき税制の構築に向けた基本方針」を首相に答申した。寄付金税制については、「新たな公益活動の担い手としてのNPO法人等の円滑な活動に資するよう見直すこと」としている。
現在、政府では、政府税制調査会と経済財政諮問会議の2つの異なる機関が、それぞれ首相の諮問を受けて、税制改正を検討している。
このうち、政府税制調査会が、首相からこの1月に「税制改革の基本的な考え方」を示すよう検討を指示されていたことに対して、答申をまとめて、14日に発表したのが今回の「基本方針」だ。
この考え方に基づき、政府税制調査会は、秋までに具体的な制度設計を詰めるとしている。
一方、経済財政諮問会議も、税制改革の基本方針を6月中にはまとめることになっている。
また、これに先だって、経済財政諮問会議では、6月3日に、「経済活性化戦略」をとりまとめており、そこでは、すでに「NPO活動促進のための、現行NPO税制の認定要件の見直しを検討する」ことをすでに答申している。
例年だと、秋以降に、自民党税制調査会が翌年度の税制について検討を始め、与党3党の税制協議会で審議したあと、12月中旬に「税制改正大綱」をまとめる。
それに基づいて、翌年の1月から始まる通常国会に予算案と一緒に税制改正案が提出され、4月から施行されるというのが、税制改正の流れとなっている。
それに対し、政府税制調査会は、中長期的な税制改正の方向性を検討してきた。
ところが、 平成15年度(来年度)の税制改正の内容については、政府税制調査会、経済財政諮問会議、自民党税制調査会という3つの機関がそれぞれ独自に検討を行っているのが現状だ。
この3つの機関が、十分な調整なく、来年度以降の税制を検討しているところが、議論の進み具合を測ることを分かりにくくしている。
しかし、経済財政諮問会議、政府税制調査会という2つの機関が揃って、NPO活動を促進する方向での寄附税制の見直しを打ち出したことで、NPO支援税制に関しては、最終的には自民党税制調査会の検討を待たなければならないとしても、年末の税制改正に向けて大きく議論が前進したといえる。
なお、政府税制調査会では、一方で、公益法人等のNPO法人を含む非営利法人全体への課税の見直しも答申しており、課税についても今後大きな焦点となってくると考えられる。
政府税制調査会の今回の答申「あるべき税制の構築に向けた基本方針」のうち、NPOに関する部分は以下の通り。
第二 個別税目の改革
二 法人課税
(3) 経済社会の新しい動きへの対応
経済活動のグローバル化や金融の自由化等に伴い、様々な投資形態が出現するとともに、企業の事業形態や事業規模も多様化している。また少子・高齢化社会において、NPO法人等の行う民間非営利活動は、活力ある経済社会を構築していく上で、大きな役割を果たしていくことが期待される。
こうした経済社会の新しい動きに対応して、法人の性格も踏まえつつ、次のような諸課題に取り組むべきである。
イ.適正な課税を確保しつつ円滑な企業活動に資する観点から、同族会社の留保金課税、パートナーシップ等の多様な事業体に対する課税について見直すこと。
ロ.これまで課題としてきた公益法人等の収益事業課税や公益法人等及び協同組合等に係る軽減税率などについては、公益法人改革の動向を踏まえつつ、NPO法人や中間法人等の新たな法人等に対する課税のあり方も含め、非営利法人課税全体のあり方の中で幅広く見直すこと。
ハ.寄附金税制についても、諸外国の制度や民間非営利活動の実態を踏まえ、認定NPO法人制度等の各制度間の整合性を図りつつ、新たな公益活動の担い手としてのNPO法人等の円滑な活動に資するよう見直すこと。
政府税制調査会の「あるべき税制の構築に向けた基本方針」全文は財務省のホームページにある、以下の税制調査会のホームページで見ることができる。
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top.htm