行政 : 中教審、奉仕活動等を奨励・支援
7月29日、中央教育審議会は「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」と題する答申を遠山文部科学相に提出した。答申は、社会全体で「奉仕活動・体験活動」を推進していくための社会的仕組みや社会的気運を醸成する必要があるとし、ボランティア活動等を積極的に評価する高校入試の工夫、ボランティア活動等の 高校における単位認定や、活動等と関連付けた大学入試の推進なども求められるとしている。
中央教育審議会(鳥居康彦会長)は、昨年4月11日に文部科学大臣の諮問を受け、「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」検討を続けてきた。
同審議会は、青少年をめぐるさまざまな問題の背景には、思いやりの心や社会性が青少年に育まれておらず、他人を省みない自己中心的な大人の意識や生き方などが深く関わっているという認識から、直接的体験を通じて人格形成に寄与する「奉仕活動・体験活動」が、問題を解く糸口になるとしている。
そのため、今回の答申では「初等中等教育段階までの青少年」や、「18歳以降の成年や勤労者等」の「奉仕活動・体験活動」の奨励・支援のための方策と、こうした活動を学校、大学、教育委員会、国、NPO、企業など、社会全体で推進していくための社会的仕組みのあり方や社会的気運を醸成していくための方策等を提言している。
答申には、次の提言が含まれている。
学校(初等中等教育段階)の取り組みとして
・全ての教職員が協力して取り組むための校内推進体制の整備
・地域の協力を得るための学校サポート委員会(仮称)の設置
・自発的なボランティア活動等の高校における単位認定
大学・短期大学・高等専門学校・専門学校などの取り組みとして
・正規の教育活動としてボランティア講座、サービスラーニングやNPO関連の専門科目の開設
・インターンシップを含め、学生のボランティア活動等の単位認定の積極的推進
・大学ボランティアセンターの開設や、ボランティア休学制度などの環境整備
教育委員会の取り組みとして
・教材・プログラムの開発や指導者の養成・確保(教職員のNPO等での長期体験研修含む)
・ボランティア活動を積極的に評価する高校入試の工夫
・「ヤング・ボランティア・パスポート(仮称)」の作成と活用による青少年の奉仕活動促進
企業の取り組みとして
・体験活動に対する施設の開放
・社員の指導者としての派遣
・青少年の受け入れ
・採用にあたって、ボランティア活動等の重視
・ボランティア団体・NPO等への財政的協力の検討(商品にポイントを付加し、ポイント数に応じて団体に寄附。また、クレジットカードやマイレージポイントのボランティア団体への寄附など)
国の取り組みとして
・奉仕活動・体験活動の実施状況の全国調査
・学校や地域を通じた活動の目標の検討
・ボランティア活動等と関連付けた大学入試の推進
この答申に対して、大阪ボランティア協会の早瀬昇事務局長は、以下のようにコメントしている。
一言でいえば、あまりに乱暴な内容。多くの懸念が指摘されているのに、とにかく上から「やるべし」で進められることに怒りを覚える。
今回の答申は、「フグのキモ」といっていい。つまり、おいしそうだけれども、毒を持っている。
おいしそうに見えるところは、ボランティア活動をすれば単位がとれるところ。一見、いいように見えるが、福祉施設で暮らす人たちが「教材」となりかねないなど、毒も大きい。
それに、この答申でも「奉仕」にこだわっている。それは「お手伝い」でしかない。自治につながる「ボランティア」ではないのだ。
結局、単位といったニンジンを馬の前につって走らせるようなもので、国民はどんどん飼い慣らされていく道となる。言い過ぎかもしれないが、それは奴隷化される国民への道にもなりかねない。
この答申の全文は、以下のホームページで読むことができる。(PDF)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/020702a.pdf