行政 : 埼玉県、補助金改革打ち出す
埼玉県の財政改革を検討してきた改革戦略会議は、10月10日、「改革戦略会議報告書」を土屋義彦埼玉県知事に提出した。県から市町村への補助金を大くくりにする包
括補助金制度の導入や、補助金に変えて、NPO支援をすることによって、より大きな政策効果を求めることを提案している。
報告書のタイトルは「改革戦略会議報告書――財政構造の改革を目指して」というもの。
埼玉県改革戦略会議(議長・鈴木宮夫副知)は11人のメンバーで構成されている。
約600億に上る財政収支赤字を将来的に改善していくために、補助金、公共投資、人件費、公債費、人材開発、県施設、出資法人の7分野の課題と歳出削減方針を提案したもの。
まず、報告書の「基本的な考え方」で、「分権の時代にあって、市町村、NPO、県民の方々がそれぞれ自立して活動していくことが基本であることを念頭に置いた改
革を行う。」と述べた上で、次のように提案している。
「歳出削減に当たっては、(中略)県が直接行う施策については、地域の発展に資するとか、県民の生命財産の保護に資する社会基盤の整備などの施策の効果がより明確
な分野に、また県民や民間企業、各種団体などに対する支援施策については、より県民福祉の向上につながる活動に対する支援に、それぞれ重点化を図る」。
こうした上で、県の財政構造の課題を以下のように分析している。
- 県の一般財源の4分の3が義務費(人件費や公債費等)であり、政策に使える財源は一般財源の4分の1しかない。
- 政策に使える財源のうち4分の3以上が補助金などで占められている。
- さらに政策に使える財源に占める補助金の比率は、平成8年と平成13年を比べると48.8%から75.1%へと大幅に増加している。
- 補助金は、いったん始めるとなかなか見直せない、受給者の自立を阻害する、政策目的達成へのチェックが甘くなるなどの弊害がある。
このような分析から、報告書では、報告では、補助金の見直しを強く打ち出している。
補助金の見直しの方策としては、
- 補助金のいっそうの削減
- 市町村向け包括補助金制度の導入
- 補助効果が不明確な補助金の見直し
- 財政富裕団体に対する任意補助の見直し
- バウチャー制度の導入
などを挙げている。
市町村向け包括補助金制度については、『既存の補助金を廃止する一方で、大きな政策目的のくくりのもとに市町村が事業内容を自由に決定できるようにする補助金。これまでの「統合・メニュー化」方式では、市町村は予め示されたメニューの中から選択する他はなかったが、この包括補助金制度においては、市町村がそれぞれの状況に応じ、自ら工夫し、事業内容を決定することができる。』と説明している。
また、「補助効果が不明確な補助金の見直し」では、「補助効果が不明確な、各種団体に対する補助や現金給付補助などは廃止する。各種団体への補助金については、
県民福祉の向上につながる活発な活動を行っている団体に重点化を図るほか、特に使途を制限しない現金給付補助については、例えばNPO支援を通してサービスの提供を
充実させることなどにより、限られた財源でより大きな政策効果を発揮できる政策に転換する」としている。
また、既存の県立施設の見直し策として、福祉センター、青年の家、幼稚園は廃止、農業大学校と農業教育センター、女性センターと母子福祉センターは統合、住民や民
間と連携した施設運営が期待されるものとして「県民活動総合センター」の名称も上がっている。
通常、こうした報告書は庁内に諮った上で発表されるが、これはその手続きを踏んでいない。県が本年2月に打ち出している「行財政改革プラン」を来年度以降の予算
案に生かす基本方針として位置づけ、今後は関係部局と協議して具体化し、06年度までに段階的に財源不足を解消していくとしている。
この報告書は、埼玉県の以下のホームページでみることができる。
http://www.pref.saitama.jp/A02/BY00/senryaku/report.htm