行政 : 行革事務局、大綱で3法人一本化
3月中を目途に策定される「公益法人制度等改革大綱(仮称)」では、行政改革事務局としては、公益法人とNPO法人、中間法人を一本化する内容で固める意向であることが、2月28日、シーズの意見書提出の際に明らかになった。この場合、非営利法人の枠組みは原則課税になる。またこの大綱では、内部留保や基金制度などNPOから批判の強い社会貢献性の基準については検討課題となる可能性が高い。
3月中を目途に策定される「公益法人制度等改革大綱(仮称)」では、行政改革事務局としては、公益法人とNPO法人、中間法人を一本化する内容で固める意向であることが、2月28日、シーズの意見書提出の際に明らかになった。この場合、非営利法人の枠組みは原則課税になる。またこの大綱では、内部留保や基金制度などNPOから批判の強い社会貢献性の基準については検討課題となる可能性が高い。 シーズは、2月28日、行政改革推進事務局(行革事務局)と、財務省・政府税制調査会(提出先:財務省主税局)に対し、現在進められている公益法人制度改革への反対を表明した意見書を提出した。(意見書の内容は2月28日のニュースを参照のこと)
公益法人制度改革について、行政改革推進事務局は法人制度部分を、財務省・政府税制調査会が税制部分について検討している。
法人制度に関しては、行革事務局は公益法人とNPO法人、中間法人を一本化して大綱に盛り込みたい意向をもっていることが分かった。これに対して財務省は、法人制度を決める行革事務局の決定を尊重するだけであることを強調したが、中間法人が入る場合は「原則課税」とせざるを得ないことを明らかにした。
今回の意見書提出の際、確認できたことは以下のとおり。
(以下はヒアリングの記録であるので、行革事務局、財務省の意見が述べられている。財務省に関しては、まとめの文責はシーズ事務局)
■行革推進事務局
1.公益法人制度改革の進め方について
- 石原大臣の私的諮問機関である「公益法人制度の抜本的改革に関する懇談会」は意見書をとりまとめる場としてよりも、有識者の意見を参考にする場として位置づけている。実は、昨年内に法人制度の輪郭を描いて公にできるような議論を重ねてきたが、懇談会ではさまざまな意見が出され、法人制度の骨格についてコンセンサスを得ることが難しい状態のまま年が明けた。大綱をまとめる3月が近づくにつれ、中間段階の案をとりまとめるために時間を費やすよりも、よりよい大綱を策定することを優先すべきという判断に傾き、中間報告的なものを公にしなかったことが、結果として内輪だけで議論をすすめているような印象を与えてしまったかもしれない。しかし、正直なところ、現在も十分議論がまとまっていない、というのが実情。
- 懇談会の議事録は行政改革推進本部のHPで公開している。ただし、中間報告など議論の成果物が公表されていないという論点にたてば、十分ではないという見方ができるかもしれない。
2.法人制度と税制度について
- 公益法人とNPO法人、中間法人を「非営利法人」として一本化することで、調整中。
- 非営利法人のうち、一定の社会貢献性があると判断した法人には原則非課税となるような資格を与える。
- 原則課税を懸念する声が多いが法人制度を立案する側としては現に法律の趣旨に沿った公益活動をしているような団体は、新しい法人制度でも社会貢献性があると判断できるような制度設計を考えたい。
- 数年ごと(何年になるかは不明)の更新制度は導入の方向で検討。
3.社会貢献性の要件について
- シーズのHPで公表していた30%の内部留保基準や300万円の基金制度については、実情としては数値をどうするかといった具体の議論まで整っていない。例えば基金などはそもそも導入するかどうかの議論が必要。内部留保も指標の一例として考えているが、これから具体の議論を行う段階。30%や300万円といきなり出せば、NPOの批判が強くなることもわかる。大綱にはこれらの基準をはっきりと書き込むようなことにはならず、入れ込むとしても、現在の検討状況からすれば、おそらく検討課題となるだろう。
- 基金制度を義務づけるかどうか、そんな制度は設けないかという議論のほかに、基金を積みたい法人は積めるようにする選択肢もあろう。
4.適正な組織運営の内容と、監督について
- 政治活動の制限項目は、現在の公益法人の規定のなかにはない。NPO法には主たる目的としないことが定められており、むしろNPO法の方が規制が強いともいえる。これについては、大綱後にさらに議論を行うことになろうが、現に規制されていないものに規制をかけることになると、いろいろ微妙な問題がでてくるかもしれない。
- 「非課税」と引き換えに「監督」が強まるような危機感が広がっているようだが、非課税となる「登録非営利法人(仮称)」に対して、登録機関が日常的におかしなことをしていないか監視するといったような監督は考えていない。事後的なチェックに転換するというのが今回の改革の考え方。
- 登録先行政庁と国税庁が協議して監督を行うかどうかといった具体の議論はまだ進んでいない。実際的に運用可能どうか見極める必要があると思う。仮にこうした案を検討対象とする場合でも、租税回避を目的にしないなどの判断をどのように下すのかなど、つめなければならない課題は多い。
5.大綱策定の時期など
- 大綱は、場合により若干のズレがあるかもしれないが、今はとにかく本年度中を目途として努力しているところ。その後のスケジュールは、大綱の中で明らかにすることとしている。
■財務省主税局
1.公益法人改革の進め方、原則課税方針について
- 今回の税制度について検討している、財務省・政府税制調査会の「非営利法人課税ワーキンググループ」では、大綱が策定される前になんらかの会としての報告を発表する予定にしている。
- 堀田さんがあのような提言をされたことによって、我々が悪の権化のように思われているが、誤解されている部分もある。我々はあくまでも、中間法人が非営利法人の枠組みに入ってくるのであれば、「原則課税」とせざるを得ない、といっているだけだ。会社とちがうところはどこかといえば、「存続中の利益配当はしない」という一点のみ。これでは、課税を基本とせざるを得ない。まっとうな活動をしているNPOや公益法人は、現在とそう変わらない非課税扱いになるはずだ。財務省でも、「公益法人制度・中間法人制度・NPO法人制度という異なった理念の仕組みを一括りにすること」に疑念がないわけではない。
- 「登録非営利法人(仮称)」は原則非課税であるが、営利法人と競合する事業については課税する方針。
- この課税の仕方はまだ決まっていないが、ふたつの方法を検討中であり、現行の限定33業種の範囲を広げるというものと、「対価を得て行う事業で一定のもの」というような包括的な規定で課税するものが検討されている。
- 33業種の限定列挙方式は、時代の変化にそって追加してきた経緯があるが、ここ十年ほど追加されていない。そのことに対し特に企業から強い批判があり、追加する方式であればいずれ時代に合わなくなるのは避けられないことから、後者の方が有力でることには違いない。
- このような道筋がつけられることで寄付金や助成金に対しても課税される可能性があるため(現行でも収益事業33業種に対するものであれば課税)、この点についてNPOの実態をまだ把握していない。実態調査を実施する必要性は認める。
- 非営利法人は、原則課税となった場合は、普通法人並み課税となる。現在の「公益法人等」という課税上の分類が、呼び方は決まっていないが「(仮)登録非営利法人等」とかになるのだろう。
- 法人の課税の考え方では、法人格という制度を使い、人格を持つ以上、そこに所得があれば、課税対象となると考えている。非営利性をもって非課税とは考えない。ただし、法人実在説という立場に立っているわけではない。法人擬制説にもいろいろある。
- 人格なき社団に関しても、今後は、課税していく方向を検討する考えである。カラオケ同好会であろうが、趣味の会であろうが、団体に所得があれば課税していくことを検討すべきと考えている。
2.適正な組織運営、事業活動を必要とすることについて
- 内部留保の適正基準をどこにおくかは、実態を把握していないので、調査する方針。たとえ、そこに基準ができたとしても、内部留保を超えた場合には「課税」されるだけだから、問題ないと考えている。
3.公益法人改革のスケジュールについて
- 新しい税制度をつくる場合、特に課税強化の場合は、国民の納得が得られなければ絶対にできないことを我々はよく知っている。3月に大綱が閣議決定されたとしても、12月の税制大綱でひっくり返る可能性は十分にある。3月の大綱はあくまでも「基本考え方」を示すものだ。