行政 : 内閣府新基準、適用始まる
内閣府が3月に発表したNPO法の運用新基準の適用が、昨日5月1日から始まった。この基準は、「収益事業が2年連続して赤字計上されている」の場合は、所轄庁の監督対象となるなどとするもの。特定非営利活動が主たる目的でないものや、営利目的の団体を懸念し監督強化する目的。ただし、内閣府以外の所轄庁が採用するかどうかは今のところ分かっていない。
内閣府は、NPO法の新しい運用基準について、今年2月4日、論点整理を発表。その後、3月25日に『「NPO法の運用方針」について』という文章で、新基準を5月1日から適用することを公表した。
この基準は、内閣府に認証申請する団体や、内閣府の認証を受けたNPO法人に対して、昨日から適用されている。
この基準は、NPO法人格の取得が容易であることから、制度が濫用されていることを懸念するとして、「NPO法の適切な運用等に関する検討会(座長 :升田純聖心女子大学教授)」が策定したもの。NPO法人が、(1)特定非営利活動が「主たる目的」でないもの、(2)営利目的のもの、(3)反公益的なもの、と考えられる場合に認証を厳しくしたり、監督強化する内容だ。
認証の基準や監督の基準としては、具体的に以下の9項目があげられている。
■認証段階(以下の基準が認証の基準となる)
- 法人の目的、特定非営利活動の種類、特定非営利活動に係る事業その他当該法人が行う事業の内容が、定款上それぞれ具体的かつ明確に記載されていること。
- 特定非営利活動に係る事業の支出規模は、設立当初の事業年度及び翌事業年度ともに総支出額の2分の1以上であること。
- その他の事業において、設立当初の事業年度及び翌事業年度ともに赤字計上されていないこと。
- その他の事業の収益は、設立当初の事業年度及び翌事業年度ともに特定非営利活動に係る事業会計に全額繰り入れられていること。
- 管理費の総支出額に占める割合が、設立当初の事業年度及び翌事業年度ともに2分の1以下であること。
■監督段階(以下の基準が守られていないと監督規定が発動できる)
- 特定非営利活動に係る事業の支出規模が、2事業年度連続して総支出額の3分の1以下である場合。
- その他の事業において、2事業年度連続して赤字計上されている場合。
- その他の事業の収益が、2事業年度連続して特定非営利活動に係る事業会計に全額繰り入れていない場合。
- 管理費の総支出額に占める割合が、2事業年度連続して3分の2以上である場合。
しかしながら、この新基準では、「主たる目的」を支出額のみで計ろうとしていたり、特定非営利活動を支えるための収益事業が2年連続して赤字計上されていたり、収益事業の収益を2年連続して特定非営利活動に全額繰り入れていないと所轄庁の監督を受けることになったりするなど、NPO側からは現場の状況を全く理解せずにつくられた基準であるとして、反発も呼んでいる。
せんだい・みやぎNPOセンターの高田氏は、「単なる検討会の報告書を元にNPO法の運用を変更することは、行政が恣意的に運用を行うことを禁じたNPO法の理念に反する」「規制の設定についてはパブリック・コメントを取らねばならないという閣議決定があるのに、こうした手続きも経ずして設定された基準だ。手続き的にも問題だ」と述べている。
この新基準は、内閣府が適用するものだが、他の所轄庁がこれと同様の基準を採用するか否かは、まだ分かっていない。
新基準の詳細は、内閣府のホームページを参照 のこと。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/npo/law/030325program.html