行政 : 政府、新ODA大綱を閣議決定
8月29日、政府は10年ぶりの改定となる新たな政府開発援助(ODA)大綱を閣議決定した。新大綱では、ODAの目的として、「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである」と、国益を強調している。
政府開発援助(ODA)大綱とは、政府開発援助のあり方に関する原則や理念を定めたもの。
1994年に最初の大綱が定められ、今回が初めての改定となる。
新大綱の構成は、理念(目的、方針、重点課題、重点地域)、援助実施の原則、援助政策の立案および実施等となっている。
一方、旧大綱では、基本理念と原則、重点事項、実施のための方策、内外の理解と支持を得る方法、実施体制等という構成となっていた。
基本理念では、政府開発援助の目的として、『開発途上国の離陸へ向けての自助努力を支援することを基本とし、広範な人造り、国内の諸制度を含むインフラストラクチャー及び基礎生活分野の整備等を通じて、これらの国における資源配分の効率と公正や「良い統治」の確保を図り、その上に健全な経済発展を実現する』となっていた。
これに対し、改定されたODA大綱では、その目的は「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資すること」と、国益が重視されている。
また、新大綱では、重点課題として、「平和の構築」が挙げられ、具体的な取り組みとして、「和平プロセス促進のための支援、難民支援や基礎生活基盤の復旧などの人道・復旧支援、元兵士の武装解除、動員解除及び社会復帰(DDR)や地雷除去を含む武器の回収及び廃棄などの国内の安定と治安の確保のための支援、さらに経済社会開発に加え、政府の行政能力向上も含めた復興支援を行う。」と、されている。
民間援助団体(NGO)に関する記述としては、基本方針の中で、「国際社会における協調と連携」というテーマのもと、「国連諸機関、国際開発金融機関、他の援助国、NGO、民間企業などとの連携を進める」とされているほか、援助政策の立案及び実施の中で、「内外の援助関係者との連携」というテーマのもと、「国内のNGO、大学、地方公共団体、経済団体、労働団体などの関係者がODAに参加し、その技術や知見をいかすことができるよう連携を強化する」とされている。
加えて、実施にあたって、提案募集やボランティアによる国民参加や透明性確保のための情報公開を強調している。
NGOに関しては、旧大綱では、実施のための方策の中で、「民間援助団体(NGO)との連携を図るとともに、その自主性を尊重しつつ、適切な支援を行う」とされていたが、新大綱では、「連携」を強調してはいるが、旧大綱にあったNGOの「自主性の尊重」や「適切な支援」という言葉が消えた格好だ。
新大綱は、平成4年に閣議決定された旧大綱に比べて、国益と平和構築が強調されている。そのため、NGOなどからは「ODAの第一の目的は日本の安全や繁栄ではなく、世界の安全と安定ではないか」などの反発の声も上がっていた。また、今年4月には、経団連が「貿易や投資など経済活動のためのODA活用」を提言して、経済的な「国益」も求められていた。
政府開発援助大綱の改定については、外務省サイト内、下記URLを参照のこと。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/seisaku_1/t_minaoshi/