行政 : 支援費は医療保健業で課税
NPO法人が支援費制度を行った場合の法人税の扱いについて、本日9月30日、国税庁がホームページで、「医療保健業に該当する」とした見解を公表した。厚生労働省が、支援費事業は「医療保健業に該当すると考えるが、貴庁の見解を承り」たいとする照会をしたのに対し、国税庁が「貴見のとおりで差し支えない」と回答したもの。
今年4月1日より、障害者を対象とした支援費制度がスタートし、すでに5ヶ月が経過しているが、NPO法人がこの事業に参入した場合、この事業の法人税は課税か否かが明確になっていなかった。
しかし、国税庁からの回答により、NPO法人を含む公益法人が支援費事業を行った場合には、「医療保健業」として課税対象事業となることが明らかになった。
ただし、公益法人のうちでも、社会福祉法人等が行う医療保健業に関しては、法人税法施行令第5条の規定により非課税扱いとなる。つまり、介護保険事業の法人税の場合と同様の扱いとなった。
ホームページによれば、9月16日、支援費制度を所管する厚生労働省社会・援護局は、文書で次のように照会している。
「(支援費)サービスは、障害者に対して介護等の提供を行う対人サービスである。こうした障害者は、医療保健面でのケアを必要とするのが通例であることから、医療と密接な連携がなされており、実際面において、これらは居宅介護計画の策定過程等を通じて確保される。ついては、こうした特徴を有する支援費サービス事業を(略)公益法人等が行う場合、(略)当該支援費サービス事業は(略)医療保健業に該当すると考えるが、貴庁の見解を承りたく照会する」
これに対し、国税庁は9月17日に「貴見のとおりで差し支えありません」と回答しており、医療保健業と見解を示している。
なお、回答には「照会に係る事実関係が異なる場合又は新たな事実が生じた場合には、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがある」などと添えられているが、こうした文言は国税庁の回答には必ず添えられる文言だという。
また、今回の照会を行った厚生労働省社会・援護局の障害福祉課では、支援費事業に関わる施設においては医師や看護士を置かなければならないこと、また居宅サービスにおいても、事業主は利用者の健康面を含めた全般を把握していなければならず、指定基準にも医療関係者と密接な連携を持たなければならないとされていること、加えて身体障害者の場合は手帳の交付を受けるにあたっては医師の判断が必要であることなどから、医療保健事業に該当すると考えるとしている。
NPO法人にとっては、社会福祉法人との課税上の扱いが違う事業が増えることになり、不公平であるという批判が高まると予想される。
また、「支援費事業は医療保健的な側面が薄く、介護保険事業と同じに考えるのはおかしい」という税務の専門家の意見もあり、今後、その点についても議論を呼びそうだ。
国税庁ホームページに掲載された厚生労働省からの照会文と、国税庁の回答文は、以下のとおり。
<照会文>
平成15年9月16日
国税庁課税部長 殿
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長
支援費サービス事業に係る法人税法上の取扱いについて(照会)
平成15年4月1日より、「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律(平成12年法律第111号。以下「法」という。)」のうち、身体障害者福祉法等の障害者福祉サービスに係る支援費制度に関する規定が施行されたところである。
法の規定に基づく支援費サービス事業(児童福祉法第6条の2第5項に規定する児童居宅生活支援事業、身体障害者福祉法第4条の2第5項に規定する身体障害者居宅生活支援事業、第5条第2項に規定する身体障害者施設支援、知的障害者福祉法第4条第6項に規定する知的障害者居宅生活支援事業、第5条第2項に規定する知的障害者施設支援)については、実費弁償的な性格を有する行政からの委託費ではなく、サービスの対価としての施設訓練等支援費又は居宅生活支援費及び利用者負担によってまかなわれることとなる。
これらのサービスは、障害者に対して介護等の提供を行う対人サービスである。こうした障害者は、医療保健面でのケアを必要とするのが通例であることから、医療と密接な連携がなされており、実際面において、これらは、居宅介護計画の策定過程等を通じて確保される。
ついては、こうした特徴を有する支援費サービス事業を法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第6号に規定する公益法人等が行う場合、法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第5条に規定する収益事業の判定においては、当該支援費サービス事業は、同条第1項第29号の医療保健業に該当すると考えるが、貴庁の見解を承りたく照会する。
<回答文>
回答年月日:平成15年9月17日
回答者:国税庁課税部長
回答内容
標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。
ただし、ご照会に係る事実関係が異なる場合又は新たな事実が生じた場合には、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることを申し添えます。
なお、上記の照会文と回答文は、次のホームページからも読むことができる。
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/bunsyo/02/houzin/2004/01.htm