行政 : 介護車両はオレンジナンバー
10月14日に開催された「全国介護移送シンポジウム2003」で、介護タクシー業者による「全国介護移送協会」(黒田司郎会長)と福祉NPO「市民福祉団体全国協議会」(田中尚輝事務局長)は、介護移送サービス車両のナンバーを、白でも青でもなくオレンジにする構想で一致した。今後、国土交通省、厚生省などに積極的に提言していく。
今年4月の介護報酬改定では、高齢者や障害者が通院に利用する移送サービスについて、その介護報酬の給付範囲を明確にするために、「乗車・降車の介助」という新しい介護報酬を設定して、1回1,000円(運賃は給付対象外)と決められた。
同時に、移送サービスの前後に介護事業者が身体介護を30分以上行った場合には、移送を含めた一連の行為に対して、より単価の高い身体介護の報酬(30分以上1時間未満で4,020円)を請求できるとした。(その場合は運転時間分の報酬は請求できない。)
この改定に伴って、移送サービスで介護報酬を得るには「タクシー事業の許可=青ナンバーが必要」とする国土交通省と、「必要ない=白ナンバーでよい」とする厚生労働省の見解が対立し、自治体の取り扱いもまちまちで、現場では混乱が続いている。
移送サービスを行うNPO法人やボランティア団体にとって、青ナンバー取得に必要な道路運送法の営業許可を取得することや、運転者が二種免許を取得することは容易ではない。
そのため青ナンバーが必要とされた地域ではサービスの継続ができなくなり、その結果、高齢者や障害者が、これまで利用していた移送サービスが利用できなくなるといった事態も生じている。
介護タクシー業者にとっても、介護報酬改定後も青ナンバーを取得しないNPOなどが従来どおり移送サービスを行う地域では、利用者が増えていないといった現状もある。
こうした現状を打開するために、移送サービスを行っているタクシー業者がつくる「全国介護移送協会」は、自家用車や第一種運転免許での輸送を認める介護移送専門事業許可「オレンジナンバー制度」の創設を提唱してきた。
10月14日に開催された「全国介護移送シンポジウム2003」では、介護タクシー業者による「全国介護移送協会」と福祉NPO「市民福祉団体全国協議会」が、従来の営業許可よりも緩やかな介護移送専門事業許可「オレンジナンバー制度」の創設によって、現場の実情に合った法整備の実現を目指して連携していくことで一致した。
オレンジナンバー構想には、運転者の普通一種免許、自家用車の持ち込みなどが認められる一方、安全管理のために運行管理資格者を配置することや一定額の損害保険などを義務付けることが盛り込まれている。
今後は、NPOと介護タクシー業者が、立場の違いを超えて介護における移送のあり方について情報を共有して、さらに議論を進めながら法整備に向けて政府に働きかけていく。
「全国介護移送協会」事務局長の山下勝久氏は、
「移送サービスでもっとも大切なサービス受益者のことを考えると、安全が確保され、しかも介護に関わるNPOやボランティア団体が参入可能な、きちんとした法整備が必要。
これまで、国土交通省と厚生労働省の見解の相違から、介護タクシー業者とNPOが相対する立場に置かれていたが、今後は連携して受益者本位の移送サービスの実現と普及に取り組んでいきたい。」
と語った。