行政 : 伊勢、名宿を街づくりの拠点に
11月3日、国の登録有形文化財になっている三重県二見町の和風旅館「賓日館(ひんじつかん)」が、NPOの運営によるまちづくりの拠点として再スタートした。1999年に営業を停止した名宿の歴史的建造物を一般公開して、あわせて展覧会や各種イベントなども開催していく予定。
夫婦岩で知られる二見町の「賓日館」は、1887年(明治20年)に伊勢神宮の崇敬団体が賓客の接待の目的で建てた2階建て、述べ1700平方メートルの木造建築物。
その後、隣接していた旅館「二見館」に払い下げられ、1999年まで、伊勢志摩地方を訪れる皇族や要人も宿泊する高級旅館として営業されてきた。昨年9月に「賓日館」は二見町に寄贈され、地元住民らで構成される「NPO法人二見浦・賓日館の会」(小西蔀会長)がまちづくりの拠点として運営することになった。
二見町のまちづくり運動は、平成10年に「二見まちづくり検討会議」が発足して、旅館街を中心にした歴史を活かしたまちおこしを検討してきた。
99年に、不況のあおりで「賓日館」が閉館し、町は、あらたに「二見浦・賓日館の保存と活用を考える会」を立ち上げて「賓日館」の保存と有効利用について取り組んできた。同会は、今年7月に「二見浦・賓日館の会」としてNPO法人となり、賓日館をまちづくりの拠点として再スタートさせる準備を進めてきた。事務局長は地元住民から公募した。
補修工事を終えて、11月3日に再オープンした賓日館には、あらたに展示室が設けられ、昔の写真や宿帳、屏風絵などが公開されている。建物は一般公開されて歴史的建造物をだれもが見学できるようなった。また、各種イベントの開催も予定されている。
公募で採用された林紀幸事務局長は、
「オープン後2日間で300人余りの人が来場したが、皆、賓日館の建築美に感動してくれる。
賓日館は名工を集めて建てられた建物で、かつては日本でも有数の名宿だった。それが老朽化と不況で閉館したことは、二見町にとって残念なことだった。しかし、100年以上にわたって町の誇りだった賓日館が、まちづくりの拠点として再スタートできたことは何よりだと思う。
近々、篆刻(てんこく)展覧会、落語の会などのイベントも開催する。町民や観光客がたくさん集るような、まちおこしにつながる施設にしていきたい。」
と抱負を語った。
賓日館の入場料は一般300円、小中高生150円。開館は午前9時-午後4時半。火曜休館。問い合わせは、二見浦・賓日館の会事務局 電話番号0596(43)2003へ。