行政 : 連絡会、税制改正要望まとめる
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会は、11月14日、「平成16年度に向けたNPO法人制度に係る改正に関する要望書」をとりまとめた。認定NPO法人の認定要件のさらなる緩和などを求めている。今年年末に行われる税制改正作業に向けて、各党・政府に要望していく予定だ。
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会は、シーズ、日本NPOセンター、NPO事業サポートセンター、大阪ボランティア協会など、全国40のNPO支援団体でつくる制度改正のためのネットワーク組織である。
これまでも、認定NPO法人制度の創設・改正やNPO法の改正などの要望活動を展開してきている。
11月11日、都内で、連絡会は、世話団体会を開催し、来年度の税制改正に向けて「平成16年度に向けたNPO法人制度に係る改正に関する要望書」をとりまとめた。
今回の要望は、「認定NPO法人制度の改善」と「公益法人制度改革との切り離し」の2点についてなされている。
認定NPO法人制度の改善では、以下の7点を要望事項とした。
- 認定要件の緩和を
- 申請書類・報告書類の簡素化を
- 認定の有効期限の延長、または更新制度の導入を
- みなし寄附金制度の控除枠の拡大を
- 審査期間を明確に
- 寄附金控除枠の拡大を
- その他
認定NPO法人制度は、今年4月に認定要件の緩和が実施されたが、それから半年たって増えた認定法人の数はわずか5件だけ。今年3月末に12法人だったのが、17法人に増えただけで、改正の効果はまったく認められない状況だ。
このような状況を受けて、連絡会ではさらなる緩和をもとめているもの。
また、公益法人制度改革に関しては、NPO法人制度は、当面、制度改革から切り離し、非営利法人制度が定まった後の検討を要望している。
連絡会では、この要望書を年末の税制改正に向けて各党や政府に提出していく予定だ。
要望書の全文は以下の通り。
平成16年度に向けたNPO法人制度に係る改正に関する要望書
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会
はじめに
1998年にNPO法が施行されてから約5年が経過し、NPO法人の数は1万3千を超えるまでとなっている。NPOの話題が新聞に載らない日はなく、社会がNPOへ寄せる関心も高い。NPOも、社会問題に対してこれまでに無かった新しい取り組み方法を提示し、地域において重要な役割を担うようになってきている。
しかしながら、NPO法人の平均年間事業規模は、約1千5百万円前後と5年たっても大きな変化は見られない。NPOが抱える最も大きな課題は財政的基盤が脆弱だという点である。
これを支援するために2001年10月から認定NPO法人制度が施行された。しかしながら、その認定要件が複雑で理解しがたく、かつ2003年に改正されたとはいえ、まだその対象となる「認定」を受けるための要件が厳しすぎ、2003年11月14日現在、認定NPO法人は17法人しか誕生していない。
また、現在進められている「公益法人制度の抜本改革」においては、組織構造や趣旨の異なる財団法人・社団法人と十把一絡げに議論されていることに対する違和感、不安感も募っている。
こうしたNPO法人を取り巻く現在の問題に関して、当連絡会は以下の点を強く要望し、改善にむけて積極的に取組んでいただくことを要望する。
要望I.認定NPO法人制度の改善
認定NPO法人制度は2001年10月1日から施行されたが、2003年11月14日現在、国税庁長官の「認定」を受けたNPO法人は未だ17法人に留まっている。
2003年4月から、認定要件が一定程度緩和され、みなし寄附金制度も導入されたが、この17法人という数字は、NPO法人にとって認定要件が煩雑を極め、とうていクリアできない要件が残されていることを如実に物語っている。
日本において今後、NPOが発展し、そのことで豊かな社会を築くためには、さらなる要件の緩和は必須である。平成15年度の税制改正において、ぜひとも抜本的な緩和を実現していただきたく、以下の改正を要望する。
1.認定要件について
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2003年4月、パブリック・サポート・テストの割合が三分の一から五分の一に緩和され、また一つの市区町村内だけで活動しているNPO法人であっても認定を受けることが可能となるなど、一定の改正が行われた。
しかしながら、民主的な運営を目指して正会員を多く持つNPO法人が認定を受けにくく、また本来目的に沿った事業とはいえ、多くの市民へのサービスから得られた対価収入が多いと認定は受けられないなど、NPO法人本来の存在意義をも否定するような要件は残されたままである。
シーズが実施した試算によれば、改正された制度においても認定を受けることができるのは、全体のNPO法人のうちわずか2.0%という数字である。このうち、要件の煩雑や2年毎に申請をする事務手数を覚悟して申請に踏み切れるNPO法人は、全体の1%にさえ、はるかに及ばない。
NPOの発展を真に施策とするのであれば、もう一度この認定要件を見直し、抜本的改正へと勇気をもって取組んでいただきたい。
(認定要件に関する具体的要望事項は「別紙」参照)
2.申請書類・報告書類の簡素化を
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認定申請を検討するNPO法人にとって、申請をためらわせる要因のひとつは、認定要件の複雑さを反映して認定申請書類、また事業年度毎に提出する報告書類が膨大となっている点である。
申請時には13の書類を作成し、さらに非常に詳細なデータを記した8つの表を作成・提出しなければならない。比較的小規模なNPO法人にとっては、本来の事業に加えてこうした労力を裂かなければならないこととなり、申請はとうてい不可能である。
加えて、ようやく認定を受けた場合であっても、毎年国税庁に提出しなければならない書類には、年度末に所轄庁に提出する事業報告書、財産目録、収支計算書など、6つの書類に加えて、寄附者の一覧(氏名・住所・金額・受領年月日)、資金に関する情報、取引情報など、12もの書類を作成して国税庁に提出しなければならない。
NPO法人の3分の2は、年間収入規模が1千万円未満という現状であり、こうした書類の作成にかかる負担は相当なものとなる。認定申請時の要件緩和に加え、申請書類の簡素化、認定を受けた後の報告書類の負担軽減を実現しない限り、認定を受けようとするNPO法人の数の増加はほとんど望めない。
認定要件の緩和と並行して、こうした申請書類、報告書類の簡素化についても、ぜひ措置を講ずるべく努力していただきたい。とりわけ、小規模なNPO法人向けには、その事業規模の程度によって、いっそう書類を簡素化していただくよう強く要望する。
3.認定の有効期限の延長、または更新制度の導入を
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現在の国税庁長官の認定は2年限りである。更新という概念もないため、認定を受けてから1年を過ぎると、再び新しい認定を受けるための申請準備をしなければならない状況である。これも、認定申請をためらわせる大きな要因となっている。(米国においては期限は存在しない)
認定を受ければ、要件を満たし続けているか否かについて、年度毎の報告書で判断できるものであり、改めて認定申請の手間を取らせる必要性はないものと考える。
せめて認定有効期限を2年から5年と延長するか、あるいは年度毎の報告書において要件を満たしていれば自動更新できるようにすべきである。
4.みなし寄附金制度の控除枠の拡大を
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2003年4月からみなし寄附金制度が導入され、認定NPO法人が収益事業を行い、その収益を非収益事業に支出した場合、その認定NPO法人が納める法人税が軽減されるようになった。しかし、この内容は所得税の20%までを控除できるようにしたものであり、まだまだ十分な支援税制とは言い難い。
みなし寄附金制度の控除枠を50%とすべく、ご努力いただきたい。
5.審査期間を明確に
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認定申請をしてから、認定・不認定の結果を得るまでの審査期間が明確になっていないため、5ヶ月間も待たされるケースもある。この審査期間を3ヶ月以内と明確に定めていただきたい。
6.寄附金控除枠の拡大を
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(1)国税について
- 個人の寄附金については、確定申告時に控除する際、1万円の足きりがあるが、これを撤廃していただきたい。
- 企業などの法人の寄附金に関する損金算入限度額については、所得金額の5%相当額以内にひきあげていただきたい。(現在は、資本金の0.125%+所得金額の1.25%相当額。資本金のない場合は所得金額の2.5%相当額。)
(2)地方税について
- 個人住民税の課税所得の計算において、認定NPO法人に寄附をした場合の寄附金を国税と連動して控除できるようにしていただきたい。
- 地方税における個人住民税の寄附金控除の10万円の足きりを撤廃していただきたい。
7.その他
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(1)小規模な売り上げに関しては非課税を
- 法人税法上の収益事業に該当していても、収益事業の収入の合計が、年間300万円を超えない場合には、収益事業に該当しないこととして、課税しないようにしていただきたい。(米国と同様の措置)
(2)利子等の所得への非課税措置を
- 認定NPO法人が支払いを受ける所得税法上の利子・配当等については、「公益法人等」と同様に、非課税扱いとしていただきたい。
要望II.「公益法人制度改革」との切り離し
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公益法人制度改革については、2003年6月27日に「基本方針」が閣議で決定している。そこには、「(新たな)非営利法人制度の設計にあたっては、現行の公益法人制度の問題点を踏まえた検討を行い、現行の中間法人制度・NPO法人制度との法制上の関係を整理することとする」という一文が盛り込まれている。
「法制上の関係を整理する」という、その具体的内容については今後議論されるところであろうが、NPO法施行から未だ5年で、ようやく日本社会に定着してきたNPO法人が、この公益法人制度改革によってその発展の芽を摘まれるのではないか、という危惧も広がっている。
従来の公益法人と異なり、斬新で自由なアイデアで、市民が主体となって広がっているNPO活動を阻害せぬよう、今回の公益法人制度改革からNPO法人は切り離して進めていただくよう強く要望するものである。NPO法人については、新たな公益法人制度が施行された後、その行方を見極めたうえで、改めて検討していただきたい。
平成16年度に向けた税制改正での認定NPO法人制度の「認定要件」に関する具体的要望事項
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会
1.日本版パブリック・サポート・テストの計算式の修正を
- 社員からの会費に関しては、総会での議決権は会費の反対給付とはみなさないこととし、対価性のない社員からの会費は寄附として、日本版パブリック・サポート・テストの分子に全額算入できるものとする。
- 国、地方公共団体、国際機関、公益法人、特殊法人又は独立行政法人からの補助金・助成金・委託事業費については、分母・分子の両方に全額算入できるものとする。
- 総収入金額等の計算においては、総収入金額から特定非営利活動に係る事業収入のうち対価を得て行った事業収入の収入金額を控除できるようにする。
2.法人の規模により認定要件の難易度に段階を
- 法人の事業規模によって、認定要件のハードルの高さに段階を設け、小さな法人でも認定が受けやすくする措置を求める。
3.情報公開の内容の改善を
- 役員・従業員の給与は全員の給与金額を公開することとなっているが、従業員に関しては上位5名までとする。
- 20万円以上の寄附をした者の名簿を公開することとなっているが、この金額を50万円に引き上げる。
- 法人の事業規模によって、情報公開の内容の程度を変える。
4.単年度主義の撤廃を
- 単年度の収入等でチェックする方法を、2事業年度の合計でチェックする方法に変更する。認定の有効期限を延長または更新制度を導入した場合は、4事業年度の合計でチェックする方法に変更する。(米国と同様の措置)
5.共益団体等の排除の規定の緩和
- 会員等に対価を得て資産の譲渡等を行う活動や会員等への連絡・交換を行う活動に関する制限があるが、この会員等の範囲が、実質的に会員と同等の資産の譲渡等を受ける者としていて、広すぎる。社員名簿に掲載されている人に限定する。
- 特定者や特定の著作物の普及・宣伝活動に関する制限があるが、これを撤廃する。
6.役員・社員の親族要件等の緩和を
- 親族等や特定の法人の従業員等の役員・社員に占める割合に関する制限を課すのは役員に限定し、社員に関しては親族等や特定の法人の従業員等の割合の制限を加えないこととする。
- 親族等の範囲に「役員(社員)と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」も入っているが、これは削除する。(他の要件でも親族等の範囲から削除する)
7.宗教・政治活動の制限の緩和を
- 宗教活動・政治活動の全面禁止となっている要件を、「主たる事業活動として行っていないこと」とする。
8.所轄庁の証明書の撤廃を
- 所轄庁による法令等の違反がないことに関する証明書の添付を廃止する。