行政 : 内閣府、民間委託の阻害要因調査
内閣府は、11月17日、行政サービスの民間委託(アウトソーシング)に関する調査結果を発表した。地方公共団体や先進自治体の取り組み事例、ウェブサイトを利用した民間からの意見などをまとめた。民間委託に関する阻害要因については、制度的要因のほか、職員の処遇の問題、組合の問題、適切な委託先の不足などがあげられた。
この調査は、10月3、17日の経済諮問会議で、「行政サービスの民間開放は、民間の力を活用しつつ地域の活性化もたらし、地域経済の再生に大きく貢献すると考えられる一方、様々な阻害要因が存在し民間開放が進んでいないのではないか」という議論に基づくもの。
調査は内閣府が実施。
- 地方公共団体に対するアンケート調査
- 先進自治体からのヒアリング
- 経済諮問会議ウェブサイトを活用した民間からの意見募集
- 関係各省の把握事例
の4項目について調査した。
地方公共団体に対するアンケート調査は、47都道府県、13政令指定都市、そのほかの市および特別区688の合計748地方公共団体に対しメールにより実施した。うち、487団体からの回答を得た(回答率は、65%)。
全回答のうち3割が、民間委託を進めるうえでの阻害要因に「法令等制度的要因」をあげた。
具体的には、図書館や公民館等には、教育委員会が選んだ館長を置く規定があることや、知的障害児施設、児童養護施設などにおいて、調理員を置かなければならない規定があり、調理義務の包括的な外部委託ができないこと、介護保険料の普通徴収等の行政事務を取り扱う者が公務員等に限定されていることなどが指摘された。
そのほかにあげられた阻害要因としては、「適当な委託先がない」がもっとも多く、ついで「職員の処遇の問題」、「組合の問題」、「委託資金不足」、「守秘義務の問題」が続いた。
先進自治体のヒアリング調査は、静岡県や東京都足立区、愛知県高浜市など8団体に対し行った。
山口県や、足立区では、外部委託に関する「ガイドライン」を策定しており、それに基づき、積極的にアウトソーシングを実施。愛知県高浜市では、市全額出資の株式会社を設立し、窓口業務の包括的な委託を実施している状況などが報告されている。
民間人からの意見としては、参入の制約、自治体の広域連携の必要性、複数年契約の認可などを求めるものがあった。
委託ではなく、IT化の推進により行政事務の簡素化、効率化を図ることを求める意見もあった。
委託するときの留意点として、個人情報保護に関わるものや、委託先の公平性の確保、効率以外のファクターへの配慮を求めるものなどがあった。
関係省庁の委託に対する姿勢は、概ね、前向き。委託の成果として、「コストの削減」、「業務負担の軽減」をあげる意見が多かった。ほかに「民間の雇用創出」、「委託先のノウハウの活用による公共サービスの向上が図れる」などの意見もあった。
問題点としては、「公務員の雇用問題への対応」、「個人情報保護の観点からの懸念」、「成果物のチェックに時間を要するため、必ずしも合理化につながらない」という意見がみられた。
内閣府では、この結果を、11月26日に行われた経済諮問会議で報告。公共施設管理のさらなる民間開放策として、「指定管理者制度」の活用や、国庫補助金等の交付を受けて設置された公共施設の目的外使用への転用制限の緩和などを提言している。
指定管理者制度とは、2003年6月に改正され、9月施行の地方自治法で創設された仕組み。株式会社やNPOなど民間事業者でも自治体から議会の議決を経て指定を受ければ、公共施設の管理を行うことができるようになるもの。従来は、公の施設の管理は、地方公共団体の出資法人などに限定されていた。
内閣府ではさらに、地方公共団体より阻害要因として回答のあったものについて各省庁に照会を行っており、図書館や公民館、博物館の管理・運営については、指定管理者制度の導入により可能であることや、知的障害児施設、児童養護施設等における調理義務も限定的ではあるが、特区において可能となっていることなどの回答が得られた。
この調査については、以下のURLから詳細を見ることができる。
http://www.keizai-shimon.go.jp/survey/result.html
各省庁の回答状況については、以下のURLを参照のこと。
http://www.keizai-shimon.go.jp/2003/1126/1126item12.pdf