行政 : 日商、政策提言でNPOに言及
日本商工会議所は、1月15日、東京商工会議所と共同で、「デフレ克服と行財政・社会保障・税制の改革の方向~活力ある日本の創造に向けて~」と題する提言書を発表した。提言書は、小さな政府実現のために行政とNPOとの協働を推進するほか、介護保険サービスの第3者評価組織としてNPOを活用することを盛り込んでいる。
提言は、「現状と課題」、「対策と改革の基本的考え方」、「対策と改革の方向」、「具体的対策と改革の柱」の4部構成。景気回復に明るさが見えはじめた今後3年間をデフレ脱却のための「集中再生期間」と位置づけ、金融緩和だけではなく、思い切った財政出動が必要としている。
また、経済のグローバル化や少子高齢化の進展など環境変化に対応できる新しい経済社会システムの構築が求められているとして、政治や行政の仕組みを「国から地方へ」「官から民へ」の流れを加速させ、「小さな政府」と「真の地方分権」を実現させるとともに、社会保障制度の再構築と企業の経済活力の確保のための税制改革を進めるべきだと指摘した。
このなかで、NPOについては2箇所言及された。
行政とNPOとの協働の推進は、「小さな政府」を実現するための具体策として触れられた。財政の効率化を達成するためには、公務員の定数削減を進めるべきであり、この削減は市町村合併や業務の民間委託、NPOとの協働を通じて可能になるという。また、独立行政法人、特殊法人や外郭団体についても、業務内容を徹底的に見直し、統合・廃止・民営化し、人員の削減を図っていく必要があるとした。
さらに、経済の活力を維持するために国民の安心できる社会保障制度を構築すべきとしたうえで、介護保険利用者のニーズに応じたサービスを提供するためにも、NPO法人などによる第三者評価システムを整備することを提言している。
該当箇所の抜粋は以下のとおり。
詳細は以下のホームページで読むことができる。
http://www.jcci.or.jp/nissyo/iken/040115seisakuteigen-katsuryokuarunihon.htm
【3.対策と改革の方向】
2.経済活力維持のために必要な構造改革
(2)制度の抜本改革
1. 行財政改革
□大幅な歳出削減を実現し小さな政府へ
税の自然増収だけで財政赤字の解消など政府の抱える財政不安を払拭することは極めて困難であり、聖域を設けない歳出削減が必要である。このため、日本経済が名目で2%成長の安定成長軌道に乗った段階で、効率的で小さな政府への流れを加速することが必要である。例えば、社会保障給付もわが国経済のデフレ克服が明らかとなる時点で(積極的な景気対策を実施した場合は2007年度)は大幅な給付の抑制がなされるべきである。さらに財政の効率化を達成するためには、地方への税源移譲による真の地方分権化、官から民への業務移管を含む思い切った規制緩和、公務員数の大幅削減などを、政治の強力なリーダシップで実行することが必要である。特に現在、特区に限って進められている規制緩和については、その効果や影響を吟味し、問題の無いものについては、全国展開を認めるようにすべきである。
具体的な歳出削減としては、
公共投資は、一律の削減ではなく、ばらまき型の配分を排除し国際競争力の強化や経済の効率化に資するインフラ整備に戦略的に重点配分することが肝要である。
人件費は、公務員定数削減を、国家公務員については独立行政法人化での削減を除いて相当の純減となるように努力すべきである。地方公務員についても、市町村合併や、業務の民間委託、NPOとの協働を通じて、相当程度の削減が実現される必要がある。
独立行政法人、特殊法人や外郭団体についても、業務内容を徹底的に見直し、統合・廃止・民営化を進めていくことにより人員の削減を図っていく必要がある。同時に、特殊法人改革は特別会計の徹底した外部監査・情報開示と一体で行う必要がある。
【4.対策と改革の具体的提言】
3.社会保障制度改革
(3)介護保険財政の安定化と市場機能の活用
- 介護保険財政の安定化のため、まず、介護保険の効率的な制度設計と運営、事務コストの削減などに不断に取り組み、今後急増が見込まれる介護保険費を出来る限り抑制する。
- 介護予防・リハビリテーション事業を強化し、これから介護認定の対象となる高齢者の健康維持を図り、要介護(支援)状態の出現率を出来る限り抑制する。既に要介護となった高齢者に対しても、要介護状態を悪化させない、更にはこれを改善させる取り組みを行う。
- 介護保険利用者がニーズに合った介護サービスを自由に選択できるようサービスに関する情報を積極的に提供するとともに、NPO法人などによる第三者評価システムを整備する。また、要介護度を改善させた実績を評価する仕組みも整備する。
- 事業者間の競争を通じてより良いサービスを提供するため、市場機能を有効に活用するとともに、劣悪なサービスを提供する問題のある事業者を市場から排除できるような効果的な査察の仕組みを整備する。
- 施設介護と在宅介護の適正な機能分担を進めるため、施設介護におけるホテルコストは利用者負担とし、サービス利用に伴う負担の均衡を図る。
- 特別養護老人ホームなど施設介護分野における規制緩和等を行い、介護サービス分野への民間事業者の参入を促進し、その創意工夫や競争により多様で魅力ある良質なサービスが安価で円滑に提供される環境を整備する。