行政 : 【追報】中間報告全文
3月31日、政府が発表した、『「議論の中間整理」の概要』、『議論の中間整理』、『新たな非営利法人(仮称)制度の骨格とその検討課題』の全文は、以下の通り。
「議論の中間整理」の概要
1.改革の意義
○基本認識
- 民間非営利活動の促進
- 公益法人制度に係る諸問題に適切に対処
○基本的検討方針
- 営利(剰余金の分配)を目的としない民間団体に、公益性の有無に関わらず、一般的に法人格取得の機会を与えることを通じて、人々の自由活発な活動を促進するため、新たな非営利法人制度を創設。
- 新たな非営利法人制度において、法人が公益性を有する場合の取扱いについては、主務官庁制の抜本的見直しが必要との考え方の下、以下の視点を踏まえ検討。
- 法人設立の簡便性
- 法人の自律性
- 情報開示による透明性
- 公益性判断の客観性
- 法人格の取得と公益性の判断の分離
- ガバナンスを強化し、しっかりした規律を確保
2.新たな非営利法人制度
○社団形態の非営利法人制度
- 事業については、格別の制限をせず、幅広い活動ができることとする。
- 社員の権利・義務の内容としては、1)出資義務を負わない、2)利益(剰余金)分配請求権を有しない、3)残余財産分配請求権を有しない、4)法人財産に対する持分を有しないこととする。(解散後の残余財産の帰属は、定款又は社員総会の決議で定める。)
- 設立、社員、管理、定款の変更、解散、清算、合併等に関する所要の規定を置く。
- 非営利法人制度と中間法人制度との関係について、さらに検討。
○財団形態の非営利法人制度
- 公益性を要件としない財団法人制度の創設の適否、基本財産、ガバナンス、寄附行為の変更等の要件については、さらに検討。
3.公益性を取り扱う仕組みのあり方
○基本的考え方
- 下記の2つの考え方に基づき、異なる類型の仕組みが考えられる。
[考え方A-公益性に相応しい規律の法人の受け皿の仕組みを民法等で規定]
(公益性を有するに相応しい、しっかりした規律の法人の受け皿となる仕組みを規定。判断主体については、主務官庁制の縦割りの弊害を避け、公益性を統一的に判断し得る、中立で第三者的な、又は、単一の公的機関を念頭に、さらに検討。
[考え方B-税法以外に公益性を取り扱う仕組みを特に設けない]
(税制上の効果の重要性に鑑み、課税庁が公益性の観点から課税の取扱いを判断。)
○今後の検討課題
- 上記の2つの考え方を基に、以下の仕組みのあり方に係る論点のほか、公益性を取り扱う仕組みの効果、現行の民法・公益法人に係る指導監督基準等の関連規定及び公益法人等の実態を踏まえ、さらに検討。
1)公益性の考え方
- 不特定多数人の利益を図ることをどの程度厳格に求めるか
- 不特定少数人の利益についてどのように位置付けるか
2)判断主体のあり方
- 的確な公益性判断のための一定の体制(組織・人員等)の必要性と、行政組織の膨張抑制の要請との調和
- 民間の考えを適切に反映する視点の必要性
- 地方における判断主体のあり方
- 公益性判断を伴う不服申立てなど、不利益救済のあり方
3)判断要件のあり方
[検討の視点]
- 裁量の余地の少ない客観的で明確な要件の必要性
- 時代の変化に応じて適切に見直し得る必要
- 要件の法定化のあり方
- 法人を目的、事業及び規律の面から捉え、i)公益性の有無を判断する際の要件と、ii)公益性の維持・確保のための要件に分けて検討
- 形式要件に加え、いずれかの段階で法人の実績を要件とする必要性
[検討課題]
- 数値的基準の要否を含めた具体的な要件のあり方
- 当初段階の要件として、どの程度の事業計画や予算上の裏付けを求めるか
- 公益性の判断が出来るだけ早期に行われるなど申請者の視点に留意した手続きのあり方
- 活動実績の要件をどの段階で求めるか
- 法人や事業の規模に配慮した要件、地方における公益性判断の仕組みに応じた要件の要否
- 残余財産の帰属のあり方(社員への分配を禁止する方向)
4)適正運営の確保のあり方
[検討の視点]
- 公益性を有するに相応しい規律を前提とした法人の自律性の確保
- 法人の組織・運営が適正であるか否かの判断に資する透明性の確保
- 現行の主務官庁制の下での指導監督の手法を離れ、法人の適正運営の確保を担保する手段の必要性
[検討課題]
- 公益性を有する非営利法人について、ガバナンスを強化し、一般の非営利法人に比べしっかりした規律を確保すべきとの観点を踏まえた、理事の責任のあり方や理事に対するコントロールのあり方
- プライバシーの保護に留意しつつ、利害関係者に対する情報開示にとどまらず、いわゆる社会監視の考え方により適正運営を図ることの必要性及びその開示の対象・内容・方法のあり方
- 法人の不適正な運営に適切に対処する観点から、現行の主務官庁による指導監督に代わる、実効性のある事後チェックの手段のあり方
- ガバナンスや情報開示等のあり方について、法人や事業の規模に配慮する必要性
※現行の公益法人から新たな非営利法人等への移行等のあり方については、新たな制度の姿がより具体化した段階で本格的に検討を進め、現行の中間法人制度・NPO法人制度との法制上の関係も整理
公益法人制度改革に
関する有識者会議
当会議は、「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」(平成15年6月27日閣議決定。以下「基本方針」という。)を踏まえ、改革についての具体的な提案を行うため、行政改革担当大臣の下、昨年11月28日の初会合以来、本年3月末まで計9回にわたり開催し、議論を重ねてきた。また、当会議の下に、新たな非営利法人制度のあり方について専門的観点から検討を行うため、非営利法人ワーキング・グループを設け、7回の会合を開催した。
本中間整理は、「基本方針」において、新たな制度の検討状況を適時に公表し、広く国民の理解を得つつ、改革を推進することとされていることを踏まえ、3月までの審議において当面の論点について幅広い議論を行ったことから、今後の具体的な検討に資するため、これまでの当会議における議論を中間的に整理したものである。今後、当会議では、本中間整理についての国民一般の意見も参考にしつつ、議論を集約していきたい。
1.改革の意義
(1)基本認識
我が国では、個人の価値観や社会のニーズが多様化し、地域を基盤としたコミュニティの機能向上が求められる中、阪神・淡路大震災等を契機に、民間非営利活動に対する関心が高まり、個人として、自ら社会の構築に参加し、自発的に活動していこうとする傾向が見られる。
民間非営利活動は、多様な価値観の下、個人が、そのライフスタイルに応じ、多様な幅広い活動に主体的に参加することを通じて、自己実現を図る機会を提供するものであり、これを促進することは、高齢社会を迎えている我が国の社会を活性化する観点からも有意義である。
また、政府や市場だけでは様々な社会のニーズへの対処が困難な時代となりつつあり、21世紀の我が国社会・経済システムにおいては、個人や法人の自由で自発的な活動に根差す民間非営利部門が、政府部門や企業を中心とする民間営利部門と相互に自立と協働の関係を維持しつつ、機動的な対応が難しい政府部門や、採算性が求められる民間営利部門では十分に対応できない活動領域を担っていくことが期待される。その際、民間非営利部門による公益的活動が果たす役割は極めて重要である。
このように今後の我が国社会の中で重要性を増すと見込まれる民間非営利部門にあって、その代表的な主体として歴史的に一定の大きな役割を果たしてきた公益法人については、その制度のあり方との関係で、1)主務官庁の自由裁量による許可主義の下、法人設立が簡便でなく、2)事業分野毎の主務官庁による指導監督が煩雑、3)情報開示(ディスクロージャー)が不十分、4)公益性の判断基準が不明確、5)公益性を失った法人が公益法人として存続し続ける、6)ガバナンス(法人の管理運営のあり方)に問題があるといった指摘があり、何が公益であるかを主務官庁が自由裁量によって判断するという考え方を見直し、こうした指摘に適切に対処すべく改革に取り組み、具体的方策を構ずる必要がある。
(2)基本的検討方針
改革の基本的な枠組みを具体化するに当たっては、上記のような基本認識の下、以下の方向を基本としつつ、検討を進めることとする。
- 21世紀の我が国社会において、民間非営利部門は重要な役割を果たし得るとの認識の下、営利(剰余金の分配)を目的としない民間団体について、公益性の有無に関わらず、一般的に法人格取得の機会を与えることを通じて、人々の自由活発な活動を促進し、一層活力ある社会の実現に資するため、新たな非営利法人制度を創設する。
- この新たな非営利法人制度の下における、公益性を有する場合の取扱いについては、主務官庁制の抜本的見直しが必要との考え方の下、(a)法人設立の簡便性、(b)法人の自律性、(c)情報開示による透明性、(d)公益性判断の客観性、(e)法人格の取得と公益性の判断を分離、(f)ガバナンスを強化し、公益性を有するに相応しいしっかりした規律の確保といった視点を踏まえ、今後の我が国社会において民間非営利部門による公益活動が果たす役割の重要性を見据えつつ、真に時代の要請に応え得るものとして、公益法人制度を改革する。
2.新たな非営利法人制度
新たな非営利法人制度については、「基本方針」に基づき、1)法人格の取得と公益性の判断が一体となった公益法人制度を改め、公益性の有無に関わらず、準則主義(登記)により簡便に法人格を取得できる非営利法人制度を創設することとし、2)財団については、今般の改革の趣旨を尊重しつつ、制度的課題も含め、そのあり方を検討することとする。
この一般的な非営利法人制度の骨格及び検討課題は、別紙のとおりであるが、その要点は、(1)、(2)のとおりである。
(1)社団形態の非営利法人制度
まず、非営利(剰余金を社員に分配することを目的としない)法人を設立して活動しようとする人々の自由活発な活動を促進するという基本理念の下、その行い得る事業については、格別の制限をせず、公益活動を含め、社員に共通する利益を図ることを目的とする活動やその他の活動など幅広い活動ができることとする。
次に、営利法人制度との区別を明確化するため、社団形態の非営利法人(以下「非営利社団法人」という。)の社員の権利・義務の内容として、1)出資義務を負わない、2)利益(剰余金)分配請求権を有しない、3)残余財産分配請求権を有しない、4)法人財産に対する持分を有しないこととする。(もっとも、定款で定めれば社員が出資する(財産の拠出をする)法人を設立することも可能であり、その場合の出資の意味については、上記の非営利性の原則2)3)4)に抵触しないように、さらにそのあり方について検討する。)。
また、法人の自律を基調とした設立、社員、管理、定款の変更、解散、清算及び合併等の組織、運営に関する所要の規定を置くこととする(解散後の残余財産の帰属については、定款又は社員総会の決議によって定めることとし、その結果、残余財産を社員に帰属させることも妨げないこととする。)。
さらに、外部者による監査等、法人の規模等に応じた特例の要否等について、引き続き検討を進める。
なお、非営利社団法人制度と現行の中間法人制度との法制上の関係については、さらに検討する。
(2)財団形態の非営利法人制度
財団形態の非営利法人制度に特有な検討課題である、公益性を要件としない財団法人制度の創設の適否、基本財産、ガバナンス、寄附行為の変更等の要件については、引き続き検討する。
3.公益性を取り扱う仕組みのあり方
(1)主な視点
新たな非営利法人制度の下で、公益性を有する場合を他と区別して取り扱う際の考え方については、今後の社会において非営利法人による公益的活動が果たす役割とその促進は一層重要との認識の下、次のような視点を踏まえる必要がある。
- 国等の機関が、公益性を有する非営利法人について特別の取扱いを行うことについて、(a)公益性を有するに相応しい規律のしっかりした法人の受け皿となる仕組みを用意することにより、市場経済では供給が困難な財・サービスが安定的に提供されるという点や、(b)私人による寄附やボランティアといった活動は重要との認識の下、このような仕組みが、そうした私人の善意の受け皿となることを通じて、私人の公益的活動が促進されるという点についての意義。
- 2)現行の公益法人制度に係る主な法律上の効果として、(a)主務官庁の許可に基づく、公益性・非営利性の認定を前提にした法人格の付与、(b)名称の使用制限、(c)税制上の取扱い等が挙げられるが、新たな非営利法人制度の下で、公益性に係る特別の取扱いの効果について、(a)税制上の措置、(b)法人のガバナンスの強化、(c)社会的信用の向上等の視点を踏まえ、具体的にどのようなものを考えるか。
(2)基本的考え方
公益性を取り扱う仕組みのあり方については、上記の視点を踏まえれば、主に以下のような2つの考え方に基づき、異なる類型の仕組みが考えられる。
[考え方A-公益性に相応しい規律の法人の受け皿の仕組みを民法等で規定]
公益性を有するに相応しい、しっかりした規律の法人の受け皿となる仕組みが必要との考え方に基づき、その仕組みを民法や新たな非営利法人法など税法以外の法律で規定する考え方。
[考え方B-税法以外に公益性を取り扱う仕組みを特に設けない]
税制上の効果の重要性に鑑み、公益性に係る特別の取扱いは税制上の観点から行う考え方。
なお、考え方Aを中心に検討を進めてはどうかとの意見が多かった。また、国等の機関が公益性の判断を行わず、民間機関が行うこととする考え方についても議論したが、公益性に着目して特別の法律的取扱いを国等から受けることとする場合、公益性判断を民間機関に委ねてしまうことは必ずしも適当ではないのではないかとの意見があった。
考え方Aに基づく判断主体としては、主務官庁制の縦割りの弊害を避ける観点から、公益性を統一的な機関で判断することが適当であり、中立で第三者的な、又は、単一の公的機関を念頭に置きつつ、そのあり方について、さらに検討が必要である。また、考え方Bに基づく判断主体としては課税庁が考えられるが、最終的には、税制の観点から検討されるべき課題である。
(3)今後の検討課題
公益性を取り扱う仕組みのあり方については、上記の2つの考え方を基に、以下のような、公益性の考え方や、公益性の判断主体、判断要件及び適正運営確保のあり方のほか、公益性に着目した特別の取扱いの効果等を総合的に勘案しつつ、引き続き検討を進める必要がある。
-
公益性の考え方
公益性の考え方については、利他や社会貢献の視点の重要性を念頭に置きつつ、公益性を有する非営利法人の目的について、不特定多数人の利益を図ることをどの程度厳格に求めるか、また、不特定少数人の利益についてはどのように位置付けるかなどといった点を含め、引き続き議論を深める。
-
判断主体のあり方
判断主体のあり方については、上記(2)の基本的考え方を基に、公益性の有無を的確に判断するための一定の体制(組織・人員等)の必要性と、行政組織の膨張抑制の要請との調和を図る観点を踏まえ、さらに検討を進める。その際、判断主体の体制の検討に当たっては、民間の考えを適切に反映する視点の必要性についても議論を深める。また、地方における判断主体のあり方についても、引き続き検討する。併せて、公益性判断に伴う不服申立てなど、不利益救済のあり方についても検討を進める。
-
判断要件のあり方
判断要件のあり方については、(a)客観的で明確なものとし、判断に当たっての裁量の余地を出来るだけ少なくすべき、(b)時代の変化に応じて適切に見直し得る必要、(c)要件の法定化のあり方、(d)法人を目的、事業及び規律の面から捉えた上で、 i)公益性を有すると判断する際の要件と、 ii)その公益性が維持・確保されるための要件に分けることが可能、e)形式要件に加え、いずれかの段階で実績要件が必要、といった視点を踏まえる必要がある。
その上で、具体的な要件については、公益性に着目した特別の取扱いの効果を念頭に置きつつ、現行の民法及び公益法人に係る指導監督基準やNPO法人制度等の関連規定のほか、公益法人等の実態を踏まえ、数値的基準の要否も含め、さらに検討を進める。
その際、当初の要件として、事業計画や予算上の裏付けについて、どの程度のものを要求するかについてさらに議論を深め、公益性の判断が出来るだけ早期に行われるなど申請者の視点に留意した手続きのあり方についても検討する。また、事業などの活動実績を求める場合には、どの段階でこれを求めるべきか、について議論する。法人や事業の規模に配慮した要件や、地方における公益性判断の仕組みに応じた要件の要否についても検討する。なお、公益性を有する法人の解散後の残余財産の帰属については、社員への分配を禁止する方向で検討を進める。
-
適正運営の確保のあり方
公益性を有する活動を行う法人について、その適正な運営が確保されるための方策を検討するに当たっては、(a)公益性を有するに相応しい規律を前提とした法人の自律性の確保、(b)法人の組織・運営が適正であるか否かの判断に資する透明性の確保、(c)現行の主務官庁制の下での指導監督の手法を離れ、法人の適正運営の確保を担保する手段の必要性、といった視点を踏まえる必要がある。
(a)自律性の確保については、非営利法人が公益性を有する場合は、ガバナンスを強化し、一般の非営利法人に比べしっかりした規律を確保することにより、適正運営を図る必要がある。こうした観点から、理事の責任のあり方や理事に対するコントロールのあり方等について、さらに検討を進める。
(b)また、透明性の確保については、情報開示を充実し、利害関係者に対する情報開示にとどまらず、いわゆる社会監視の考え方により、適正運営を図ることの必要性について、プライバシーの保護に留意しつつ、議論を深める。その際、情報開示の開示対象、開示内容及び開示方法のあり方を含めた検討を行う。
(c)さらに、ガバナンスの強化や、情報開示の充実によっても、なお法人の不適正な運営が生じる可能性があることから、こうした事態に適切に対処するため、現行の主務官庁による指導監督に代わる、実効性のある事後チェックの手段が必要であり、そのあり方について、外部監査等の必要性と併せ、さらに検討を行う。
今後、上記(a)~(c)の検討に当たっては、判断要件のあり方と同様、公益性に係る特別の取扱いの効果や判断主体のあり方等を念頭に置きつつ、現行の関連法制等や公益法人等の実態を踏まえることが必要である。その際、法人や事業の規模に配慮する必要性についても検討を行う。
今後、本年末までを目途にさらに基本的枠組みを具体化するとの「基本方針」のスケジュールに沿って、当会議は、現行の公益法人等の実態を踏まえつつ、引き続き検討を進めていく。なお、現行の公益法人から新たな非営利法人等への移行等のあり方については、この中間整理を踏まえた今後の検討の進捗に応じ、新たな制度の姿がより具体化した段階で本格的に検討を進め、現行の中間法人制度・NPO法人制度との法制上の関係も整理することとする。
新たな非営利法人(仮称)制度の骨格とその検討課題
第1 総論
1 非営利法人(仮称)制度を創設する意義、理念
営利(剰余金の分配)を目的としない民間団体について、公益性の有無に関わらず、一般的に法人格取得の機会を与えることを通じ、人々の自由活発な活動を促進することを目的とする。
※1 法人の活動に着目する考え方として、「非営利の法人の自由な設立を認めることにより、社会を活性化し、文化と科学の発展を図り、併せて福祉の増進を図る」という指摘や「非営利法人制度を創設する主たる目的は、「私人の公益的活動の支援」「生活世界の充実」「民間非営利活動の促進」などにある。」という指摘がある。
※2 法人格の法技術的な側面に着目する考え方として、「非営利法人法制は、財産管理に関する法技術であって、「公益性の高いもの」、「構成員の共通の利益を目的とするもの」、「純然たる法技術として法人格が用いられるもの」などのすべてが対象となる。」という指摘がある。
2 定義、名称
非営利法人(仮称)の定義、社団形態及び財団形態の非営利法人(仮称)の名称並びにその総称について、さらに検討する。
※ 名称使用制限について、所要の規定を置く方向で検討する。
3 事業
非営利法人(仮称)の行う事業については、格別の制限をしないこととする。
※ 公益活動を含め、社員に共通する利益を図ることを目的とする活動やその他の活動など幅広い活動ができることとする。
第2 非営利社団法人(仮称)
1 非営利の概念(営利法人制度との区別)
営利法人制度との区別を明確化するため、非営利社団法人(仮称)の社員の権利・義務の内容として、1)出資義務を負わない、2)利益(剰余金)配当請求権を有しない、3)残余財産分配請求権を有しない、4)法人の財産に対する持分を有しないこととする。
※1 社員が任意に非営利社団法人(仮称)に財産を拠出することは妨げないこととする。また、社員が法人に財産を拠出した場合の法律関係については、1)拠出額の限度でその返還を受けることは妨げないのではないか、2)1)の返還請求権は、他の債権者に劣後するものとすべきではないか、などの点に配慮しつつ、引き続き検討する。
※2 定款又は社員総会の決議によって、社員に残余財産を帰属させることは妨げない。
2 設立
準則主義を前提とする所要の規定を置くこととし、設立時に一定額の財産の保有を求めることの要否について、最低資本金制度の見直しに関する議論を踏まえつつ、引き続き検討する。
3 社員
(1)社員の最低人数、地位
社員たる資格の得喪等に関する規律について所要の規定を置くこととし、社員が1人となっても法人の存続を認めることとするが、設立の要件として社員が2人以上であることを要するかどうかについて、引き続き検討する。
(2)社員の責任
社員は、法人の債権者に対して責任を負わないこととする(有限責任)。
※ 有限責任タイプのほかに、社員が法人の債権者に対して責任を負うタイプの法人類型を設けるべきどうかについては、有限責任タイプの制度設計を踏まえ、なお検討する。
4 管理
(1)社員総会、理事(理事会)及び監事に関する制度設計
1)最高(万能)意思決定機関として社員総会を、執行機関として理事をそれぞれ置き、法人の業務を監査する機関として監事を置くことができることとする(社員総会万能タイプ)
2)社員総会万能タイプの他に、「基本的意思決定機関として社員総会を、業務執行に関する意思決定及び執行機関の業務執行を監督する機関として理事会を、執行機関として代表理事を、法人の業務を監査する機関として監事をそれぞれ置くこととする(理事会設置タイプ)」ことについて、引き続き検討する。
(2)社員の議決権、社員総会の議事運営等
社員の議決権や社員総会の議事運営について、所要の規定を置くこととする。
(3)理事及び監事に関する規律
定数、任期、選解任、欠格事由及び法人との関係等に関する規律や非営利社団法人(仮称)又は第三者に対する責任等について、所要の規定を置くこととする。
5 計算等
会計帳簿及び計算書類等の作成等について所要の規定を置くこととし、計算書類等及び定款等の開示の在り方については、引き続き検討する。
6 定款の変更等
定款変更、解散及び合併等について、所要の規定を置くこととする。
7 清算時の残余財産の帰属
残余財産の帰属は、定款又は社員総会の決議によって定めることとする。
8 外部者による監査等
外部者による監査等、法人の規模等に応じた特例の要否については、会社法の見直しに関する議論を踏まえつつ、さらに検討する。
第3 非営利財団法人(仮称)
1 公益性を要件としない財団法人制度の創設の要否
公益性を要件としない一般的な財団法人制度の創設の要否について、その創設の意義と留意点を踏まえつつ、さらに検討する。
※ 財団法人制度における非営利の概念について引き続き検討する。
2 基本財産制度、ガバナンス、計算等、寄附行為の変更等
基本財産制度の要否、ガバナンスの在り方(評議員会制度の要否、理事、監事制度の拡充の要否)、計算等及び寄附行為の変更等に関する規律の在り方について、公益性を要件としない一般的な財団法人制度の創設の要否と併せ、さらに検討する。
第4 その他
1 立法の形式
立法の形式や民法にどのような規定を置くべきかについて、引き続き検討する。
2 中間法人制度との関係
新たな非営利法人(仮称)制度と現行の中間法人制度との法制上の関係については、中間法人法を統合することを含め、さらに検討する。