行政 : 大和市、エコマネー再生策
神奈川県大和市(土屋侯保市長)は、2月1日より、同市のホームページに広告スペースを設け、掲載料金を、地域通貨(=エコマネー)「ラブス」で支払うシステムを開始した。「ラブス」誕生から2年。一向に流通しない地域通貨に経済的価値をもたせることで普及推進をはかる。
大和市が2002年4月から運営を始めた地域通貨「ラブス」は、同市が開始した市民電子カード(ICカード)事業のひとつ。
この市民電子カード事業とは、住民票や印鑑証明の請求、公共施設の予約といった行政サービスをICカードによって提供する「行政サービス基盤関連事業」と、地域通貨「ラブス」を運営する「ラブス関連事業」の2事業からなる。この2事業は、経済産業省のモデル事業で、この2事業と関連する事業を合わせて7億円の補助金が国から出ている。
「ラブス」というのは、この地域通貨の名称で、通貨の単位は「ラブ」となる。ただし、2以上の単位になっても、「ラブ」のままである。
「ラブス関連事業」は、大和市のICカードを持つと、カードの中に電子マネーの形で地域通貨として1万ラブが提供され、「ラブス」の個人口座が開設される。
「ラブス」は、ボランティア活動への参加や不用品交換の対価、市内の商店での買い物特典などに使われる。個人のパソコンや市内に設置されたICカード専用端末機でやり取りされる。
市は地域通貨の循環にともなうコミュニティーの活性化を目指した。
このラブスのルールでは、毎年年末に各個人の口座の残高が1万ラブにリセットされることになっていた。
昨年末までに、「ラブス」を利用できるICカードを持つ市民は、全市民の4割にあたる約9万人に達した。また、NPOなど約30団体と約90店の商店が「ラブスの使えるところ」として店内に端末を設置するなどしてキャンペーンに協力している。商店によっては、1ラブ=1円として、一定の上限を設けた上で、サービスや商品の割引を行っている。
しかし、行政サービスに関してのICカード利用がほとんでで、「ラブス」の利用は進まず、2003年4月から12月に利用されたのは約600件、流通量は約78万ラブにとどまった。
そこで、昨年12月、「ラブス」の運営委員会である「どこでもコミュニティ市民会議」では、「ラブス」の運営方法について見直し、今年1月より運営ルールを一部改正。参加者全員のICカード上の「ラブス」の残高をゼロにして、再スタートを切った。
新しいルールでは、毎年年末に残高を1万ラブにリセットする仕組みをやめ、「ためていく楽しみ」を付加。また、協力商店からの「客から受け取ったラブがたまる一方で使う場所がない」という不満にこたえて、市のホームページに広告スペースを設け、商店がためた「ラブス」を広告料金として現金に近い形で活用できるようにした。
同市のホームページには毎月約350万件のアクセスがあるという。「円」で広告料を取っている他の自治体の料金を参考にして、トップページへの広告掲載料は月5万ラブに設定した。
手持ちのラブが少ない商店には市が100万ラブの原資を用意。「ラブス」普及に取り組むNPO法人「ラブスサポートセンター」を通じて「融資」する制度も設けた。
「ラブス」を運営する大和市情報政策課は、
「地域通貨の一番の目的はコミュニティの活性化。市民同士の助け合いの潤滑油となり、市民活動への参加意欲につながることが期待されている。しかし、実際には協力商店での買い物時の割引などとして、実際の通貨に近い利用が多く、受け取った商店で滞留し、流通の輪が途切れてしまっていた。
ホームページの広告料として地域通貨を使えるようにすることで、循環の輪がつながるだろう。また、市のホームページに広告が出せるということで、参加商店が増えることも期待できる。これによって、認知度が高まり、利用者が増えることで第一の目的であるコミュニティの活性化につながればいい。」
と語った。