行政 : 「ふれあい事業」訴訟全面敗訴
4月2日、千葉地裁(山口裁判長)は、会員間で高齢者の介助などを行う「ふれあい事業(たすけあい事業)」に関して、法人税法上の課税事業であるという判断を示した。税務署が、「ふれあい事業」に法人税を課税したことに対して、NPO法人さわやか福祉の会流山ユー・アイネットが更正処分の取り消しを求めて訴訟を起こしていたもの。NPO法人側は全面敗訴となった。
「ふれあい事業」とは、介護保険の対象とならない家事援助や介助を会員間で提供するシステムのこと。
利用会員は1時間のサービスに対し800円相当の利用券を渡し、このうち600円相当の利用券をボランティア会員が受け取り、200円は事務運営費に当てるためにNPO法人に支払われる。
ボランティア会員に支払われる金銭が、「活動への謝礼」であるという理由と、最低賃金以下であることから、通常「有償ボランティイア」と言われるものである。
松戸税務署は、NPO法人さわやか福祉の会流山ユー・アイネットに対して、この事業を請負業に当たるとして課税したが、流山ユー・アイネットは、これを不服として提訴していたもの。
この日の判決は原告側の全面敗訴。原告はただちに東京高裁に控訴するとしている。
NPO法人をめぐるこの種の判決は全国初。
原告は、(1)有償ボランティアの謝礼は労働の対価ではない、(2)事務運営費は会員の寄付、(3)不定形のサービスを請負とするのは民法第634条の請負の定義に該当せず拡大解釈するのは租税法律主義に反すると主張していたが、主張はすべて退けられた。
これに対し流山ユー・アイネットの米山孝平代表は「残念、たいへん驚いている。全国の同様の活動にたいへんな影響がある」と語っている。また、原告代理人の堀田力弁護士は「実態を見ずに形式論だけで判断しており承服できない」と語っている。
公認会計士の赤塚和俊氏は、「税務署の主張は、『サービスの提供はすべて請負業』と言っているに等しい。そうなれば物品販売と合わせすべての対価を得る事業は収益事業として課税されるということになってしまい、33業種を限定列挙している意味がないことになる」と判決に疑問を投げかけている。