行政 : 教育資産をNPOでトラスト化
民間のシンクタンク、財団法人社会経済生産性本部(会長、牛尾治朗ウシオ電機会長)の「若年者の雇用の将来を考える会」は、5月14日、失業率が10%にもおよぶ若者層の就業支援策をとりまとめた行動計画を発表した。このなかで、若者が社会活動に関心を高めるためにNPOへの参加を促進することや、技能継承、産業界のメッセージといった地域の教育資産を伝える仕組みの受け皿として、NPOを設立するレインボートラスト構想などを提言している。
「若年者の雇用の将来を考える会」(世話人、高梨 昌信州大学名誉教授)は、2003年1月に学識者や財界人などで発足。若者の雇用問題について有効な解決策を探ってきた。(財)社会経済生産性本部に事務局がある。
このほど、同会は「若者に希望と誇りをもてる職業を」と題する行動計画を発表。
これまでの学校や企業、行政だけの取り組みだけでは不十分で、教育界、産業界、行政や家庭、地域などの力を集め、各方面の連携と協力で若者の就業支援をしていかなければならないとした。
同報告書では、義務教育段階からキャリア教育を正課として導入することや、学校とハローワークとの連携、フリーターやいわゆる「ひきこもり」の若者など、対象者ごとのきめ細かな支援を実施するための「若年キャリア支援センター」の設置、若者の就業意欲を高めるために個人のキャリアを記録し政府の各種援助メリットを受けることも可能な「キャリアパスポート制度」の創設、などを提言している。
NPO関連では、若者の社会活動への関心を高めるために、NPOへの参加を促進することや、就労支援の新しいかたちとして注目される若年キャリア支援センター(全国500ケ所の勤労青少年ホームが核)の連携組織として、NPOに期待していることなどが盛り込まれた。
また、若者の職業観を育むには産業界の生の情報が有益であることから、地域の関係者が持っている有形、無形の「資産」(ヒト、モノ、カネ、情報)をトラストとしてひとつに集め、若者のキャリア支援に活用する「レインボートラスト」構想を提案。そのトラスト化を進める母体として、NPOが相応しいとしている。
「若者の雇用の将来を考える会」事務局によると、「トラストの受け皿組織としてNPOを提案したのは、企業にも行政にもない柔軟性と連携力に注目したから。縦割りでコスト意識の低い行政では限界があり、民間の知恵を導入することが必要であると考えた。また、企業や行政といった地域の資産を横断的に結ぶ組織としてはNPOが最適である。実績をあげているNPOもでてきているので、期待したい」と話している。
同会では、今後、この報告の提言内容について、関係省庁をはじめ教育界、産業界、労働界等が具体的行動に取り組むよう要請していく。
行動計画の詳細は以下のURLを参照のこと。
http://www.yef.jp/