行政 : NPO支援財団も中間整理に意見書
公益法人制度改革に関する有識者会議の「議論の中間整理」への意見募集に対して、5月10日、NPO支援に積極的な財団関係者で組織するNPO支援財団研究会の有志が、意見書を提出した。
NPO支援財団研究会は、2001年6月に発足した財団関係者とシーズの松原を含むNPOの有志で立ち上げた研究会。NPO法人や助成財団をとりまく状況の変化をとらえ、NPOの活動を資金面で援助する社会的システムを研究したり、いかにして助成財団とNPOの協働によって社会のニーズに対応していくかなどについて研究。過去に3回のシンポジウムを開催している。
同会は、5月10日、議論の中間整理への意見書を行政改革推進事務局に提出した。
意見書では、中間整理の基本認識において、民間非営利団体の活動を促進するには、活動資金確保のための支援が極めて重要で、「民間資金を民間非営利活動へ」という社会システムの構築を明確に謳うべきであると強調。
これに加えて、以下のような点につき、提言した。
- 「残余財産の分配を認める法人」と「認めない法人」を明確に2分すること。
- 政府の定義する公益性の基準から漏れた財団の設立も認めること。
- 企業財団も重要な役割を果たしているので、企業の役割についても重要な視点として捉えること。
- 公益性の判断主体は、中立的な第三者機関とすること。
- 公益性の判断要件に実績要件を加えないこと。
- 公益性を有する法人のガバナンスには、法人規模や事業規模等を勘案すること。
- 公益性を有する非営利法人には、非収益事業所得に対する法人税非課税、金融収益に対する所得税非課税、地方税免税、みなし寄付金の損金算入等現行制度の存続を。
意見書の全文は下記を参照のこと。
内閣官房 行政改革推進事務局
公益法人制度改革推進担当室 殿
「議論の中間整理」に関する意見について
平成16年3月31日付の公益法人制度改革に関する有識者会議「議論の中間整理」に関しまして、NPO支援財団研究会有志の意見を集約し、別添の通り提出いたします。
NPO支援財団研究会メンバー有志 | |
阿部陽一郎(中央共同募金 企画部副部長) | |
雨宮孝子(明治学院大学法科大学院 教授 | |
石崎 登(三菱財団 常務理事) | |
金沢俊弘(キリン福祉財団 常務理事) | |
蟹江宣雄(トヨタ財団 常務理事) | |
熊谷康夫(助成財団センター 理事) | |
社浦迪夫(伊藤忠記念財団 元常務理事) | |
北村必勝(損保ジャパン環境財団 専務理事) | |
堀内生太郎(助成財団センター 専務理事) | |
松原 明(シーズ 事務局長) | |
溝口 健(伊藤忠記念財団 常務理事) | |
野口親一(庭野平和財団 専務理事) | |
山岡義典(日本NPOセンター常務理事、法政大学 教授) | |
事務局 | 田中 皓(損保ジャパン記念財団 専務理事) |
(順不同)
私たちNPOを支援する助成財団のほか、経済界、募金団体、NPO関係団体、学者の有志で構成する「NPO支援財団研究会」は、21世紀のわが国の発展に重要な役割を果たすであろうNPOの活動を資金面で援助する社会的システムを研究するグループとして3年前に結成され、毎月定例的に研究会を開催するほか、毎年1回シンポジウムを開催し、広く全国の関係者にその成果を発表しております。
今回発表された公益法人制度の抜本的改革に関する有識者会議の議論の中間整理について、以下のとおり意見書を提出いたします。
1.「1.基本認識」に対する意見
-民間資金を民間非営利活動へ向けるシステム構築と助成財団への認識-
「議論の中間整理」1.改革の意義(1)基本認識の中では、わが国における非営利活動の重要性、民間非営利団体による公益活動の重要性について認識されてはいるが、非営利法人の準則主義による設立以外に、その活動を活性化する支援策の具体的な方向が何ら示されていない。
現在わが国は厳しい財政状況の下にあり、早急に事態の改善が望める状況にない。
従って民間非営利団体の自由活発な活動を促進するには、法人格取得を容易にすることによる法人数の増加とともに、活動資金確保のための支援が極めて重要な課題となっている。その中で民間非営利活動を資金面から支援する団体として、助成財団の果たしてきている役割には大きいものがあり、有識者会議ではその点が十分に議論されておらず、わずかに「非営利財団法人についてはその課題と要件につき引き続き検討する」との記載に止まっていることは誠に残念であるといわざるを得ない。
すでに財政危機に直面した米英においては、国の政策として、NPOに対する民間資金の導入を容易にするための税制をはじめとする施策を積極的に構築し成果を挙げている前例が存在しており、わが国においても見習うべきである。
中間整理で記された「民間非営利部門の自由活発な活動を促進し、一層活力ある社会の実現に資するための新たな非営利法人制度を創設する」との文言を真に実現するためには、その具体的な方向として「民間資金を民間非営利活動へ」という社会システムの構築を基本認識の中に明確に謳うべきである。
2.各項目に対する意見
- 準則主義での新たな非営利法人設立を前提として、その法人制度上、「残余財産の分配を認める法人」と「認めない法人」を明確に2分することを強く要望する。
非営利法人の設立目的、その目的を実現する事業を論ずるうえで、残余財産を分配出来るのと出来ないのでは大きな差があり、市民から理解され、信頼される良質の非営利活動を促進する上からも明確な区分が必要である。 - 財団法人の設立に公益性の有無の判断を加えることは、制度改革の大前提である公益性の有無を問わず準則主義で法人を設立できるという趣旨に反し、論理の展開に矛盾が生じる。仮に公益性を有する財団のみが認められた場合、その定義に漏れた財団は解散しかないとすれば問題である。公益性の定義に漏れたからといっても、その財団の活動が実質的に社会に貢献する活動を行っていないという結論にはならないからである。
- 公益性を取り扱う仕組みのあり方(1)主な視点、①の中で、(b)として「私人による寄附やボランティア—-」の記載があるが、企業の出捐による助成財団が多く存在するわが国の実状を考え合わせ、企業の役割についても極めて重要な視点として捉えることを要望する。
- 公益性の判断主体のあり方については、中立で第三者的な機関とすることを強く要望する。「一定の体制の必要性と行政組織の膨張抑制との調和を図る観点を踏まえ—-」とあるが、どこが判断主体となっても「一定の体制の必要性」が大きく変わるものではなく、このコメントが判断主体のあり方に影響を与えるものとは考えにくい。
- 公益性の判断要件のあり方について、「いずれかの段階で実績要件が必要、—-」の記載があるが、新たな公益性ある法人設立を制約することになるので、削除することを要望する。
- 公益性を有する法人の適正運営の確保のあり方に関して、自律性、透明性、事後チェックの手段等の検討を進めるとあるが、その適用にあたっては、現状を踏まえた上で法人規模や事業規模等を十分勘案することを要望する。
- 今回の中間整理ではまったく触れられていない税制上の取扱については、特に残余財産の非分配を明確にした公益性を有する非営利法人について、非収益事業所得に対する法人税非課税、金融収益に対する所得税非課税、地方税免税、みなし寄付金の損金算入等現行制度の存続を強く要望する。