行政 : 国民生活白書、NPOを主題に
竹中平蔵経済財政・金融担当相は、5月21日の閣議に平成16年版国民生活白書を提出した。「人のつながりが変える暮らしと地域」と題する今年の白書では、NPOの活動に焦点をあて、各地でおこなわれている32の事例を紹介。それらの活動が新たな公共の担い手となっているとし、地域の活性にもプラスになっていると評価した。その一方で、資金不足、信頼性の確保などNPOの抱える課題も指摘している。
5月21日に公開された平成16年版国民生活白書の副題は「人のつながりが変える暮らしと地域-新しい『公共への道』」。地域社会の担い手、新しい公共の担い手としてNPOの活動に焦点をあて、小泉政権の「官から民へ」という政策目標を反映した内容になっている。
全3章からなる白書の第1章では「地域で起こっている注目される活動事例」として、各地域でのNPOの活動が32事例紹介されている。
第2章では、「地域における活動の意義」として、第1章で紹介した事例をもとに、市民の自発的な活動が地域社会の切実なニーズに柔軟に対応していると評価。こうした活動が地域の活性化など社会的・経済的にも大きな意義があるとしている。
第3章では「地域の活動を支えるもの」と題して人と人とのつながりや、活動の受け皿となる組織と地方公共団体や企業との協働の状況からNPOの活動が促進されるための課題を提起した。
内閣府の調査結果ではNPOの活動の認知度は高まっているが、実際に活動に参加している人の割合は1割程度にとどまった。ただし、参加してみたいとする人は5割を超えている。参加の阻害原因としては「活動する時間がない」をあげる人が最も多く、白書ではボランティア休暇制度の拡充の必要性が提言されている。
地方公共団体については8割以上の市区町村がNPOと何らかの協働をおこなっているということがわかった。そのなかでNPO側は対等なパートナーシップの構築を求めており、他方、地方公共団体側はNPOに運営能力の向上、人材の育成を求めていることが判明した。
企業とNPOの連携については、企業の社会貢献活動への支出額は経済の低迷にもかかわらず一定の水準が維持されているが、NPOとの接点がない企業が4割に上っている。企業がNPOとの連携を考えない理由としては、NPOに関する情報不足が最も多い回答だった。
白書では、新しい公共の担い手として期待されるNPO活動の推進と持続のためには、参加者、支援者の拡大、財政基盤の強化、信頼性の確保が必要だという考えを示している。
シーズの事務局長松原は、「NPOを取り上げたことは評価できるが、政府としてどういう役割があるかについてはまったく書かれていない。認定NPO法人制度が不十分なことや公益法人改革が問題となっていることなど、国の責務についてきちんと記述すべきである」とコメントしている。
平成16年版国民生活白書は、内閣府ホームページ下記で読むことが出来る。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/