行政 : 国交省、地域づくりでNPOに期待
5月27日、国土交通省(石原伸晃大臣)の「多様な主体による地域づくり戦略研究会」(高巌座長)は、NPOや地域住民など、多様な主体が参画した地域づくりを進める上での留意点や具体的取り組み例などを盛り込んだ報告書「地域からの日本再生シナリオ(試論)」をまとめた。報告書では地域づくりに果たすNPOの重要性を確認すると同時に、役割と責任を明確化した協働の場(プラットフォーム)の設置、多様な主体の協働をコーディネイトするキーパーソンの必要性に言及している。
「多様な主体による地域づくり戦略研究会」は平成15年7月に国土交通省に設置された。高巌麗沢大教授を座長とし、委員会は大学教授、NPO関係者など地域経営に関する有識者や実践者から構成される。
同研究会は、NPO、自治組織、事業者、行政など、地域で暮らし活動している多種多様な人々が、地域の課題とビジョンを共有して地域づくりを実践していく「地域経営」のありかたについて調査・研究を重ねてきた。
5月27日にまとめられた報告書「地域からの日本再生シナリオ(試論)~市民自治を基礎に置く戦略的地域経営の確立に向けて~」は、地域経営のための具体的な枠組みのあり方について、その課題、論点を「試論」として取りまとめたものである。
報告書では、地域を取り巻く環境は、行政や一部の関係者のみでは解決し得ない課題が山積しているとして、NPO、地域住民、事業者など多様な主体が行政と連携して課題解決に取り組む必要性が強調されている。
しかしながら、行政側が地域住民やNPOなどに大きな期待をよせてはいるものの、市民側の行政依存体質や行政側の協働能力不足などによって、多様な主体が連携して実施する「地域経営」が必ずしも成功しているとは限らないと指摘している。
一方で、既に多様な主体が連携して地域づくりを積極的に進めている地域では、経済活性化のみに軸足を置くのではなく住民の誇りや愛着を重視した地域づくり、自治体主導ではなく主体間の役割分担と連携による地域経営、やりっぱなしではなく継続的な見直し、などがなされているという。
こうした実態をふまえ、報告書では役割と責任を明確化した協働の場(プラットフォーム)の設置、多様な主体の協働をコーディネイトするキーパーソンの必要性をあげ、行政は「黒子に徹すべし」と強調している。
また、報告書では、「コミュニティ・連帯感が薄い地域」「行政依存意識が強い地域」などの地域特性や、連携する主体の違いを踏まえた対応策を例示。取り組みがイメージしやすいよう、自治体や海外の取り組み例や、行政や住民、NPOなどのコメントも載せている。
国土交通省国土計画局によれば、「この報告書はすべての都道府県、市町村に配布する。報告書をもとに市町村などとの間で積極的な意見交換がされていくことを期待する。あわせて、国土審議会などでの検討における参考ともしていきたい。報告書は400ページに及ぶもので、ホームページ上では概要しか掲載できないが、近々政府刊行物として出版するので、地域づくりに関心のある方々には是非参考にしてもらいたい。」とのことである。
「地域からの日本再生シナリオ(試論)」の概要は、国土交通省サイト内下記を参照のこと。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/02/020527_.html