行政 : 「NPO」商標登録、取り消しの方向へ
大阪NPOセンターなど6つのNPO支援団体(シーズ含む)は、(株)角川ホールディングス(旧角川書店)が雑誌・新聞の分野で「NPO」という語を商標登録した件で、昨年7月25日付で特許庁に対して異議申立をおこなった。9月に入り、特許庁のホームページ(電子図書館)で、「NPO」商標登録について、今年6月29日に特許庁から角川に対して「取消理由通知」が出されていたことが確認された。最終決定は下されていないが、特許庁が「NPO」商標登録を取消す方向で進んでいることが判明した。6団体は、「NPO」商標登録が取り消される可能性が出てきたとし、9月14日、NPO関係者に対して経過報告を発表した。
2002年1月18日に、(株)角川書店(現(株)角川ホールディングス、以下「角川」)は、雑誌・新聞についての商標として「NPO」を出願した。その後、特許庁が審査をした結果、2003年4月25日に登録され、5月27日には商標掲載公報に掲載され、商標権が正式に角川に発生している。
これに対し、「NPO」という語を含む題号の雑誌や新聞を発行すると商標権侵害に当たる可能性が出てきたとして、NPO関係者が反発。新聞などマスコミでも「角川NPO商標登録問題」として大きく報道された。
商標法では、商標登録から2ヶ月以内なら、誰もが特許庁に対して異議を申し立てられるとされている。そこで、「NPO」商標登録について、大阪NPOセンター、大阪ボランティア協会、関西国際交流団体協議会、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会、市民活動情報センター、日本NPOセンターの6団体は、2003年7月25日付で異議申立をおこなった。
異議申立に対する審理は、特許庁と権利者の間で進められるため、異議申立人には最終決定が下されるまで特段の通知はなされない。そこで、6団体は審理の進展状況を定期的に特許庁ホームページ(電子図書館)で確認してきたが、9月に入って、今年6月29日に特許庁から角川に対して「取消理由通知」が出されていたことが判明した。
この「取消理由通知」とは、特許庁が異議申立の審理の結果、商標取消の決定をしようとする際に、商標権者に事前に取消理由を通知する制度。この取消理由通知を受けた角川は、意見書で反論することが可能。現段階で角川が意見書を提出したか否かは公表されていない。
そこで6団体は、もし意見書が提出されているならば、その内容を確認して反駁の機会を得たいとする上申書を、9月10日付で特許庁に対して提出した。
6団体は、「NPO」商標登録が取り消される可能性が出てきたとし、9月14日、NPO関係者に対して下記の経過報告を発表した。
■「NPO」の商標登録に対する異議申立に関する経過報告
2004年9月14日
特定非営利活動法人日本NPOセンター 常務理事 山岡義典
特定非営利活動法人大阪NPOセンター 事務局長 山田裕子
社会福祉法人大阪ボランティア協会 事務局長 早瀬 昇
特定非営利活動法人関西国際交流団体協議会 事務局長 有田典代
特定非営利活動法人市民活動情報センター 代表理事 今瀬政司
シーズ=市民活動を支える制度をつくる会 事務局長 松原 明
(異議申立書の当事者表示順)
上記代理人 弁護士 三木秀夫
「NPO」「ボランティア」を新雑誌の名称として、角川書店(現・角川ホールディングス)が商標登録した問題で、皆様のご賛同とご支援のもとに、昨年7月25日に、特許庁に対して異議申立を提出いたしましたが、新たな展開がありましたので、ご報告いたします。
記
1 特許庁による「取消理由通知」
このたび、特許庁ホームページ(電子図書館)での確認により、「NPO」「ボランティア」のいずれの件も、本年6月29日に特許庁から権利者である角川側に対して「取消理由通知」がなされていたことが判明しました。
この「取消通知」とは、特許庁が異議申立の審理の結果、商標登録の取消決定をしようとする際に、商標権者に事前に取消理由を通知する制度です。この事実は、特許庁が今回の角川側の商標登録を取り消す方向で進んでいることを示すものです。
ただし、この取消理由通知を受けた角川側は、この通知に対して、指定された期間内に意見書を提出することが可能となります。実際に角川側が意見書を提出したか否かは確認が取れていませんが、提出されたものと推測されます。
2 今後の動きについて
通常、取消理由通知があれば、取り消しになる可能性が高いと言われていますが、角川側からの意見書内容によっては、まだまだ予断は許せません。
このため、角川側の意見書に対して反論したいので、異議申立人および弁護団としては、反論の機会を与えてくれる旨の上申書を、9月10日付けで特許庁に提出いたしました。制度上、異議申立人に反論の機会を与えるという法的保証はなく、特許庁の裁量になり、その必要がないと判断されれば、その機会はなく、審理は終結になり、正式決定に至ります。
反論の機会が認められると、結果的には審理が長引き、結論の出る時期が遅くなりますが、慎重を期する意味で必要と判断したものです。
3 この事実の判明が遅くなった理由について
今回、この事実が今になって判明したのは、異議手続きの性格に由来するものです。
この異議手続きは、公益的見地から特許庁が自らの処分を見直す制度であり、異議申立人は、単に、異議申立の審理を開始させるきっかけを作った者としか扱われず、異議申立人は異議審理の当事者としては扱われません。
つまり、審理は、もっぱら、特許庁と権利者の間で進められるため、異議申立人には、異議申立の最終結果は通知されますが、途中経過である今回の件も、特段の通知がなされません。このため、審理の進展状況は、特許庁ホームページ(電子図書館)での公表事実に頼る以外にないのですが、これまでは具体的な進展はなく、定期的に調べていたところ、9月に入った段階の調査で初めて判明したものです。
4 これまでの経過概要
2003年6月3日 | 本件問題についての情報発信 |
2003年6月5日 | マスコミ等の報道 |
2003年7月25日 | 商標登録異議申立書の提出(特許庁へ) |
2003年8月25日 | 証拠を添付、補正書並びに口頭審理を求める上申書提出 |
2004年6月29日 | 特許庁が「取消理由通知」(角川側に意見書提出の機会付与) |
以上