行政 : 認定NPO法人の要件緩和へ政府動く
内閣府、外務省、厚生労働省の3省は、平成17年度の税制改正の要望事項として、認定NPO法人制度の要件緩和を求める税制改正要望を財務省に提出した。8月31日、「自由民主党非営利組織(NPO)に関する特別委員会」に於いて明らかになった。日本版パブリックサポートテストにおいて、本来事業収入を分母から全額控除することなどを求めている。
8月31日、各省庁から財務省に向けた、平成17年度の予算要望と税制改正要望の提出が締め切られた。
NPOに関連する税制改正を要望したのは、内閣府、総務省、外務省、厚生労働省、国土交通省の5省。このうち、内閣府、外務省、厚生労働省が、認定NPO法人の認定要件の緩和について要望を提出した。
各省庁の要望の主な内容は以下の通り。
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〔内閣府〕
NPO法人の活動を促進する観点から税制上の優遇措置を受けられる認定NPO法人制度が設けられたが、その認定数が24にとどまっていることに鑑み、認定NPO法人の認定要件の緩和等を要望。
具体的な要件緩和の主な内容としては、パブリックサポートテスト(以下PST)の分母から特定非営利活動からの事業収入については除外することなど、PSTの要件緩和に加え、共益的な活動の制限に係る要件のうち、公益的な活動の対象となる「会員」の範囲の見直し等を挙げている。 -
〔総務省〕
NPO・NGOなどの国際ボランティア貯金にかかる寄附金充当分の利子については非課税となる措置を要望。 -
〔外務省〕
内閣府と同じく、認定NPO法人の認定要件の緩和に加えて、中間支援型(ネットワーク型)NPO法人について、共益的な活動の制限に係る要件を緩和することを要望。 -
〔厚生労働省〕
PST要件の緩和や、介護、子育て支援サービス事業を行うNPO法人に関する税制上(主に法人税、事業税等)の支援の拡充を要望。 -
〔国土交通省〕
今年の各地での豪雨による甚大な水害の状況等を踏まえ、各地の水防管理者から指定されたNPOや協力団体の活動に対する寄附金について、別枠損金算入等の優遇措置を講ずる他、国際競争力のある観光地づくりを推進させ、地域を振興させる為の民間主体の観光地域振興機構(仮称)に対する土地の譲渡所得や不動産取得にかかる税金の控除等を要望。
各省庁から提出された「平成17年度 NPO関連省庁税制改正要望」の全文は下記の通り。
平成17年度NPO関連省庁税制改正要望
内閣府
総務省
外務省
厚生労働省
国土交通省
自由民主党非営利組織(NPO)に関する特別委員会
平成16年8月31日
NPO支援税制に係る平成17年度税制改正要望
平成16年8月
内閣府
【拡充】認定NPO法人制度に係る特例措置
NPO法人の活動を促進する観点から、NPO法人に対し寄附をした者等に税制上の優遇措置を与える認定NPO法人制度が設けられているが、当該制度に基づく認定数は24法人(平成16年7月末現在)にとどまっている。このため、NPO法人の実態を踏まえ、認定NPO法人の認定要件の緩和等を図る。
1.認定要件の緩和
認定NPO法人制度について、より多様なNPO法人の幅広い活用を促進するため、以下の認定要件の緩和を要望する。
- パブリックサポートテスト(以下、PST)の要件緩和
- 特定非営利活動からの事業収入については、PSTの分母から除外する。
- 国・地方公共団体、国際機関、公益法人、特殊法人または独立行政法人からの補助金・助成金・委託事業費については、PSTの分母・分子の両方に全額算入する。
- 初回認定時については、従前の2事業年度ともにPSTを満たすという要件を緩和し、2事業年度の合計でPSTを算出することとする。
- 共益的な活動の制限に係る要件の緩和
- 全体の事業活動のうち、自らの会員等を対象に行う共益的な活動の占める割合を50%未満とする要件について、対象となる会員等の範囲の見直しなどにより、共益的な活動に係る制限を緩和する。
2.申請・報告書類における措置
認定申請の際に必要な書類及び認定後の報告書類のうち、20万円以上の寄附者の氏名、住所、寄附金額等を明らかにした書類については、税務当局への提出にとどめ、一般の閲覧対象から外すなど個人情報保護への配慮を行う。
NPO、NGOなどボランティア活動等に関連する
平成17年度税制改正要望について
平成16年8月
総務省
施策名 | 減税額 | 税制改正内容の概要 |
---|---|---|
国際ボランティア貯金の寄附金充当分の利子非課税措置の創設 | 15百万円 | 国際ボランティア貯金にかかる寄附金充当分の利子について非課税とする。 |
平成17年度税制改正要望
認定NPO法人制度における認定要件等の緩和について
平成16年8月26日
外務省
1.要望の背景
(1)アフガニスタンやイラク等の紛争や自然災害で発生した難民や被災民に対して、我が国のNGO(民間援助団体)が、迅速かつきめ細やかな支援活動を行い、国際貢献に活躍したことは記憶に新しく、NGOが行う国際緊急人道支援活動の重要性については我が国においても広く認識されつつある。
また、開発途上国において保健・医療、教育、農業等の開発分野での国際協力活動に従事する我が国の多くのNGOは、地域住民のニーズに応じたきめの細かい支援活動を従来より行っており、我が国の「顔の見える」国際協力に大きく寄与している。
更に、国際協力活動を行うNGOを会員として傘下に有する中間支援型(ネットワーク型)NGOについても、個々のNGOが効率的、効果的に組織運営や事業を実施し、公益活動を遂行していく上で、大きな役割を果たしている。
(2)従来、NGOの組織形態は公益法人と法人格のない任意団体であったが、1998年のNPO法(特定非営利活動促進法)の施行以降は、任意団体のうちNPO法人(特定非営利活動法人)の認証を受けたNGOが急速に増えている。
2.認定NPO法人制度の認定要件緩和の必要性
(1)我が国のNGOは、このような目覚しい活躍の一方で、強い財政基盤に支えられ高い専門性と活動能力を確保している欧米諸国のNGOと比較すると、財政基盤や組織能力が未だ脆弱であり、資金面での制約が活動面での限界となっている場合が多い。このような状況下、これらNGOに対しては政府による組織強化のための支援や事業面での連携を強化しているが、同時に、NGO活動の主要な資金源である個人や法人からの寄附金収入や収益事業収入等による資金確保を促進する環境を整備することが急務となっている。
(2)税制上の優遇措置に関しては、従来からの公益法人に対するものに加え、2001年の認定NPO法人制度の導入により、一定の要件を満たすNPO法人についても寄附金控除等の特例措置が講じられることとなったが、依然としてその認定要件が厳しいことから、実際に認定を受けたNPO法人の数は極めて少なく、認定要件を一層緩和することが強く求められる。
3.要望事項
認定NPO法人制度において、NPO法にいう「国際協力」に関する事業を主たる活動目的とするNPO法人の実態を考慮し、以下の認定要件等の緩和を要望する。
(1)パブリック・サポート・テストの要件緩和
(イ)国・地方公共団体、国際機関、公益法人、特殊法人または独立行政法人からの補助金・助成金・委託事業費については、分母・分子の両方に全額算入する。
(ロ)特定非営利活動に係る上記(イ)を除く事業収入について分母から除外する。
(2)中間支援型(ネットワーク型)のNPO法人について、共益的な活動の制限に係る要件を緩和する。
(3)情報公開において、寄附者の個人情報の取り扱いにより配慮する。
平成17年度厚生労働省税制改正要望
(NPO関係)
パブリックサポートテスト要件の緩和等、介護・子育て支援サービス事業を行うNPO法人に関する税制上の支援を拡充する。
[対象税目:法人税、事業税等]
平成16年8月26日
国土交通省
平成17年度 NPO・NGOなどのボランティア活動等に
関連する税制改正要望
(新規)
税目 | 目的 | 要望の内容 |
---|---|---|
所得税 法人税 相続税 |
新潟・福島豪雨及び福井豪雨による人命及び財産等への甚大な被害の状況等を踏まえ、水災に因る被害の軽減に資する災害情報の提供の充実及び自助、共助、公助のバランスの取れた水災防止体制の確立等により地域の水災防止力の向上を図るため、水防協力団体(仮称)等に対する寄付金について税制上の優遇措置を講じることにより、水災防止体制の整備の促進を図るものである。 | 新たに水防活動を行うこととなる水防管理者から指定された水防協力団体(仮称)等水防活動に係る組織に対する寄付金について、別枠損金算入等の優遇措置を講ずる。 |
所得税 法人税 不動産取得税 固定資産税 都市計画税 |
国際競争力のある観光地づくりを成功させるためには、地域の統一的な観光地づくり戦略のもとで、官民が総合的・一体的な取組みを行うことが重要である。その一環として、民間を主体とした観光地域振興機構(仮称)(略称:ATA(エリア・ツーリズム・エージェンシー))が同戦略に沿って行う観光による地域振興施策を支援し、外国人観光旅客にとっても魅力のある観光地づくりを推進し、もって訪日外国人旅客数を増加させる。 ※ATAは、次期通常国会に提出を予定している、外国人観光客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律の一部を改正する法律による改正後の同法に規定し、市町村の策定する「観光地域振興構想(仮称)」に位置付けられた法人。 |
・所得税・法人税: ATAに対する土地等の譲渡所得について1500万円特別控除を適用する。 ・不動産取得税・固定資産税・都市計画税 ATAが特定の固定資産を取得する際に係る不動産取得税の課税標準につき土地価格の1/5を控除する。 ATAが特定の固定資産を所有する際に係る固定資産税・都市計画税の課税標準につき取得後5年間1/2とする。 |