行政 : NPO連絡会、税制改正の署名開始
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会(以下、「NPO連絡会」)が、10月4日、認定NPO法人制度改正のための署名運動をスタートさせた。2003年3月31日までに認証された10510法人の代表者に対して、改正のための要望書と署名用紙を送付した。連絡会では、「一つでも多くの法人の代表者の署名を」と呼びかけている。
NPO連絡会では、1999年、2001年、2002年と3回にわたって、NPO支援税制(結果的に2001年に認定NPO法人制度として実現)創設と改正のために、署名運動を展開してきたが、10月4日、さらなる改正のために4回目の署名運動を開始した。
署名の対象は、認定NPO法人制度の対象となる2事業年度が経過していると想定される2003年3月31日までに認証された10510法人の代表者(個人)。署名の締め切りは11月7日。
署名の取りまとめはNPO連絡会の世話団体のひとつである日本NPOセンター。
認定NPO法人制度は、NPOに寄附をした個人や企業のおさめる税金が軽減されるもので、資金調達に悩むNPOにとっては、寄附が集めやすくなる重要な制度。にもかかわらず、この認定をとるための要件が厳しく、全国のNPO法人が18000を突破する一方で、認定をとれたのは25法人にとどまっている。
過去の署名運動の結果、一部の認定要件が改正されてはきたものの、これらが十分な効果をもたらさなかったことが大きな問題となっていた。
今回全国に発送された署名は、NPO連絡会がとりまとめた「認定NPO法人制度の改善に関する要望書」への賛同を求めるもの。この要望書には、認定要件の包括的で大幅な緩和や手続きの簡素化、認定有効期間の延長、更新制度の導入などが盛り込まれている。
NPO連絡会は、集まった署名を要望書にそえて、11月中旬に政府や各政党、国会議員に提出していく予定。
NPO連絡会の世話団体の一つであるシーズの松原事務局長は、「一人でも多くのNPO法人の代表者の方からご賛同をいただき、税制改正の機運を盛り上げていきたい。ぜひ署名用紙が届いたらご協力を」と呼びかけている。
同連絡会では、10月16日の奈良を皮切りに、北海道や仙台、大阪など主要都市11箇所で制度改正のためのキャンペーンも実施する。キャンペーンでは、現行制度の問題点を共有し、改正への機運を高めていきたい考えだ。
今回送付した要望書の全文は以下のとおり。
認定NPO法人制度の改善に関する要望書
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会
2001年10月1日より、認定NPO法人制度(NPO支援税制)がスタートした。これは、市民や企業が、NPO法人にいっそう寄附しやすくするよう税制上の支援を行うもので、日本社会においていっそう重要性を増すNPO活動を発展させていくために極めて重要な制度であると大きな期待を集めている。
しかし、認定要件が極めて煩雑で厳しいことから、施行後丸3年を経た現在に至っても、認定を受けたNPO法人はわずか25法人にすぎない。これでは、せっかく導入された新制度も「絵に描いた餅」というべき状況にある。
多くのNPO法人が、この制度を幅広く活発に利用し、逞しく成長するような制度とすべく、今後その内容を早急に改善していくことが必要と考え、以下の点を要望するものである。
【要望事項】
1.認定要件を抜本的に改善すること
認定NPO法人の認定要件は、極めて制約が多く煩雑なものになっており、NPO法人の活動実態からみて、ほとんどの団体が認定を受けられないことは明らかである。このNPO支援税制は、未だ十分に育っていない日本の民間非営利活動を、その基礎から育て促進するためのものであるはずで、より現実的で分かりやすく、効果のあがる要件に緩和すべきである。そのために、日本版パブリックサポートテスト(収入のうち一定比率を寄附金が占めていなければならないとする要件)、共益性排除の要件、単年度主義による審査、寄附者名簿の公開などの実態に合わない要件を抜本的に改善するとともに、煩雑な申請書類を簡素化し、NPO法人が利用しやすい認定要件としていただきたい。
2.認定有効期間の延長と更新手続きを導入すること
現状では認定有効期間は2年間となっており隔年の更新事務が必要となるが、これでは各法人が本来の特定非営利活動を落ち着いて行ううえで、大きな負担となる。少なくとも認定有効期間を5年間に延ばすべきである。また従前の認定有効期間が切れるまでに次の認定がおりない場合も考えられ、この制度適用に大きな不安を残している。認定の空白期間が生じないように、「更新」の仕組みを導入し、新たな更新申請審査中の場合には、従前の認定が継続しているとみなすことを明文化すべきである。また、認定にかかる審査期間もどの程度の期間がかかるのかが、不透明である。これも審査期間を明確に法定化すべきである。
3.地方税においても税制優遇措置を実現すること
NPO法人の役割は特に地域社会に対して大きい。その活動は、地方自治や地域活性化に大きな貢献をするものである。この点から、地方税においても、国税と連携して、寄附金控除やみなし寄附金制度等の優遇措置が講じられるよう、地方税法の改正を要望する。
4.みなし寄附金の損金算入枠の拡大をすること
2003年の認定NPO法人制度改正において、収益事業所得に対する「みなし寄附金」制度が導入された。これは、NPO法人が自ら収益事業を行ってその所得の一部を特定非営利活動に用いる場合に課税を軽減する仕組みで、NPO法人が自立した社会的活動を継続的に行う上で極めて重要な制度である。しかし、現在は収益事業の所得の20%までしか「みなし寄附金」として損金算入できない。一方、社会福祉法人では所得の50%までか、200万円のいずれか高い方を損金算入できることとなっている。認定NPO法人においても、社会福祉法人と同等のみなし寄附金の損金算入枠の拡大を要望する。
5.寄附金控除枠を拡大すること
現在、個人が認定NPO法人に寄附をした場合、1万円以上寄附した場合にのみ控除することができ、その金額も、寄附金額-1万円しか控除できない仕組みとなっている。1万円という足切りであり、これでは、個人の少額寄附金には、税制優遇措置のメリットがないといえる。この1万円の足切りを廃止するとともに、1万円未満の寄附の場合は税額控除制度を選択できるなどして、個人の少額寄附金を奨励する制度としていくよう要望する。また、企業に関しても、寄附金の損金算入限度額を所得の5%までに拡大することを要望する。