行政 : 全国対話集会で新制度の概要解説
公益法人制度改革問題連絡会が、10月29日、全国の主要都市30箇所で行った対話集会の最終回を東京で開催した。この集会で、公益法人協会の太田達夫理事長から、10月28日時点で推測される政府案の概要が報告された。
「公益法人制度改革問題連絡会」は、(財)公益法人協会の呼びかけで、今年3月に発足したネットワーク組織。現在改革の対象となっている財団法人、社団法人の連絡組織を中心として、シーズを含めた29団体が参加している。
同連絡会は、制度改革の現状や問題点を広く情報共有して世論喚起をはかるために、全国対話集会を企画。4月から10月にかけて、全国の主要都市30箇所で公益法人制度改革について考える集会を開催した。集会には、30箇所合計で1000名を超える参加があったという。
10月29日は、この対話集会の最終回。東京都千代田区で開催されたこの集会には、120名を超える公益法人関係者が集まった。
冒頭、講師の太田達男(財)公益法人協会理事長は、「政府の有識者会議のとりまとめは11月中旬から下旬になると予想されている。これまで、対話集会で全国の公益法人関係者から意見をうかがい、民間法制・税制調査会で理論的な検討をおこなってきた。これからはいよいよ実行の段階である。政府、与野党の議員に対して、この改革がよりよいものとなるよう、積極的に働きかけていく」と、意気込みを語った。
続いて、太田氏は、10月28日時点で推測される政府案の概要を詳細に報告した。
創設される制度は、営利を目的としない社団または財団を、登記(準則)で簡便に設立できることにする一方で、その中から「公益性」のある法人には、一定の優遇措置を与える、いわゆる「2階建て」方式。
太田氏の報告によると、新制度の概要は、以下のようなものと推測されるという。
まず、1階の法人制度部分。
- 1階の法人は、社団型と財団型に分けられ、拠出金制度も導入される。
- 1階の法人制度の名称は、「非営利法人」という仮称になっているが、実際の名称として、「社団法人」、「財団法人」とする案が検討の俎上に上っている。
- 1階の社団型の法人は、2名以上で設立でき、事業の制限はなし。一方で、財団型には事業に一定の制限がかかる可能性。
- 1階の財団法人には、設立時および存続中、300万円の最低保有財産規制がかかる。
- 社団型の法人には、社員による理事・監事に対する代表訴訟制度を導入。一方で、乱訴防止、理事の責任制限規定も検討。
- 計算書類等は公告またはウェブで公開。社員、債権者は、閲覧、謄抄本の交付請求ができる。
- 残余財産については、社団型は「定款または社員総会の決議により自立的な意思決定に委ねることが相当」、財団型は「寄付行為の定めによることが適当であるが、その内容に一定の制限を設けることの当否をさらに検討」。
- 一定規模以上の法人には会計監査人による監査を義務付ける方向。
- 中間法人制度は、新制度に統合する。(中間法人制度は廃止する)
一方、注目されていた、公益性の判断機関としては、特定の大臣の下に民間有識者からなる合議制の委員会(国家行政組織法第8条)を設置し、最終的な判断は、特定大臣が行うことがほぼ確実となってきているようだ。公益性のある非営利法人の名称としては、「公益社団法人」「公益財団法人」か「社会貢献社団法人」「社会貢献財団法人」という案が出されているという。
公益性の判断要件としては、以下のようなものが挙げられた。
- 目的
- 不特定多数の利益の実現を図ること。「不特定多数」については、判断主体において、委員会の意見を求め、個別に判断。
- 事業
- 公益的事業が法人事業の過半を占めることが必要。ただし、ボランティア主体の公益事業など、理由があれば基準に満たなくとも許容。
- 営利企業として行うことが社会通念上適当と認められる事業を主たる事業とするのは不適当。営利企業による同種の事業が普及するなど民間営利活動と競合する場合は、民間営利活動を阻害することのないようにすることが適当。これらを判断主体が個々の事業ごとに判断。
- 収益的事業は原則として公益的事業のために使用する。
- 規律
- 役員構成に親族規制導入。同一親族の割合は3分の1以下。
- 役員報酬に基準は設けないが、自律性を尊重し、情報公開。
- 残余財産は、公益性を有する非営利法人や国・地方公共団体に帰属させる。
- 内部留保は、1事業年度の事業費・管理費を超えないこととする。合理的理由があれば許容。
- 管理費の一律の基準は設けないが、情報公開し、市民の監視対象とする。
- 株式保有制限の導入。財産の管理運用や、寄付者の意思に基づく運用以外は認めない。また、財産の管理運用の場合でも、当該発行企業の全株式の2分の1超は認めない。
また、公益性のある法人の適正な運営を確保するため、以下のような制度の導入や監督内容が示唆された。
- 理事は3人以上、監事・理事会は必置機関。
- 大規模法人に外部監査の義務づけ
- 公開対象情報のインターネットによる開示を義務づける方向。ただし、法人の負担を考慮。開示の際は、公益的事業の割合、内部留保水準も分かりやすく提示する。
- 判断主体への定期的な報告書等の提出や、判断主体による立ち入り検査等を規定。
- 国民一般による判断主体への通報制度の導入を検討。
- 一定期間ごとの公益性確認(更新制度の導入)。
これらに加え、現在の社団法人や財団法人が新制度に移行する際の方法などの政府の検討状況が報告された。
NPO法人が改革の対象とならないこともあわせて言及された。
会場からは、公益性のある法人の税制がどうなるかや、役員構成の制限に同族企業などからの役員もはいったりするのか、といった質問や、移行に関する質問などがだされ、制度の概要が明らかにならない段階では、推測でしかないという前提で、太田氏が丁寧に会場からの質問に答えていた。
政府の有識者会議は、11月2日に24回目の会合が開かれ、次回は9日。行革事務局によると、次回でほぼ、報告書の内容についての議論を終了する見込みとのこと。その後最終調整をして報告書をとりまとめ、発表は16日か、19日となる線が濃厚となってきている。