行政 : 民間法税調の議論から22の対案
10月27日、(財)さわやか福祉財団と(財)公益法人協会が主宰する民間法制・税制調査会(堀田力座長)が、公益法人制度改革に対する民間サイドの検討成果として、「これでよいのか政府の構想-民間の力を活かす22の対案-」を発表した。
民間法制・税制調査会(以下、「民間法税調」)は、公益法人制度改革の諸論点に関する理論的検討を行うことを目的に、(財)さわやか福祉財団と(財)公益法人協会の呼びかけで、本年1月に発足した研究会。民法や税法の学者、実務家ら計11名で構成している。この9月まで13回にわたり会合をもち、公開で議論を重ねてきた。
この対案は、民間法税調の報告書としてとりまとめられたものではなく、同会座長の堀田力氏(さわやか福祉財団理事長・弁護士)、同座長代理の山田二郎氏(租税訴訟学会会長・弁護士)、太田達男氏(財団法人公益法人協会理事長)の3名の責任編集というかたちで出版された。
「対案」は、民間法税調での議論のなかから、政府案と異なる選択肢として検討に値するものを取り上げたもの。したがって、委員の意見を集約するような方法をとらず、「数人の意見であっても、検討に値するものを収録した」(堀田力氏)とのこと。法人制度で11の論点、税制度で11の論点、計22の論点を提示している。
法人制度では、政府案のいわゆる2階建て構想に対して、公益性のある法人となるために、いったん1階を経由しなければならない煩雑さを問題点として指摘。本来、「公益、私益、共益は別の軸にあるべきもの」(太田達男氏)で、非営利法人もその法人の性格や機能に着目した分け方が同時にあってよいものとした。そのうえで、一般の人に識別がつくように、登記に公益性のある法人であるかどうかを反映させるべきとしている。
また、政府が創設を検討している、「非営利財団法人制度」は、財産隠しに使われる可能性があり、ニーズもないと推測されることから、反対であることなどが盛り込まれている。
税制度では、登記で簡便に設立できるから課税、といった主張に対しては、現に準則主義でも非課税の法人もあることなどを指摘。また、たとえ中間法人が統合された場合においても、残余財産を分配するときはその際課税すれば足りるなどの理由で、寄附金や会費には課税されない非課税措置を継続することは可能とした。
さらに、公益性が認められる法人は、本来事業から生じる収益も非課税とすべきとした。公益法人の提供するサービスは国や地方自治体の提供するサービスと異ならないことを理由としている。加えて、収益事業から公益事業へ投入される資金は、納税と同じ機能を果たすのであるから、みなし寄附の100%損金算入を認めるべきであるとした。
寄附税制については、英米同様設立と同時に支援措置を付与するべきと提言している。
「対案」の発表にあたって行われた記者会見で、座長の堀田力氏は、「そもそも、政府の進め方は、民間活力をどう活かすか、という視点にたっていないことが大きな問題。民間が何をしたいと思っているのか、現制度のどこが使いにくいと思っているのか、ということを聞いて制度設計に活かすという作業をしていない。政府案は、法律家の美学に基づいてつくられようとしている」と厳しく批判した。
また、太田達男氏も、「我々が一番懸念しているのは、新制度が国民の信頼を裏切るようなものにならないか、ということだ。政府案は、残余財産を分配してもいい類型が一緒になっていたり、残余財産の分配可能な非営利の財団を認めてしまっていたり、2階から1階に落ちたときに、財産を分配してしまうようなことを認容するようなものになっている。これでは、市民の信頼を損なう原因となってしまう」と政府案の問題点を指摘した。
この冊子は、A5版、140ページにのぼるもので、2500部作成。議員や、関係省庁、マスコミや公益法人関係者に無料で配布する。以下のサイトからダウンロードすることもできる。
(財)さわやか福祉財団のホームページ
http://www.sawayakazaidan.or.jp/i_index.htm
(財)公益法人協会のホームページ
http://www.kohokyo.or.jp/