行政 : 公益法人改革の方針、閣議決定される
政府は、12月24日、「今後の行政改革の方針」(新行革大綱)を閣議決定した。これには、行政内部の改善事項のほか、現行の社団法人・財団法人を廃止して、非営利法人制度を創設する公益法人制度改革も盛り込まれた。内容は、ほぼ有識者会議の報告書に沿ったもの。関連法案を2006年の通常国会に提出することが決まった。
24日の午前に閣議決定された「新行革大綱」には、事務事業の統廃合や民営化・アウトソーシングの促進、政策評価の充実、行政手続法の改正、徹底したオンライン化の推進など、国、地方を問わず行政内部の改革を推進していくための具体的な事項が盛り込まれている。
この中に、公益法人制度改革も含まれている。
行政改革大綱の全面改定は、4年ぶり。
公益法人制度改革の内容は、先月19日に発表された、「公益法人制度改革に関する有識者会議」(座長・福原義春資生堂名誉会長)の最終報告書に沿ったものとなった。
最終報告書で、新制度とは別に存置されるべきものとされたNPO法人制度については、閣議決定でも存置する方針が確認された。
一方、中間法人制度は、新制度に包含される関係となるため、廃止されることが決まった。
新制度は、現行の公益法人制度を廃止し、登記で非営利の法人を簡便に設立できるようにする一方で、そのなかで「公益性」のある法人を認定する、いわゆる「2階建て方式」。
大綱では、「広く民間非営利部門の活動の健全な発展を促進することが重要」と改革の趣旨を説明しており、法人格を登記により簡便に取得できるようにすることが、この改革の目玉となっている。
この「公益性」を認定する判断主体は、主務官庁から中立的に判断を行いうる、特定の大臣となることが決まった。主務官庁制は廃止される。(大綱では、「内閣」と記述されたが、それは特定の省庁を指す文言ではなく、単に「政府」というような意味)
この省庁がどこになるかは未定だが、今のところ内閣府が有力とされている。その場合、特定の大臣は内閣総理大臣となる。
この大臣の下に、民間有識者からなる委員会が設置されることとなった。公益性の判断は、この委員会の意見に基づき、特定の大臣が行うこととなる。
この委員会は、国家行政組織法の8条に基づく機関となる。
一定の地域を拠点として活動する法人には、都道府県知事が公益性判断を行う。ここでも、国に準じた機能を有する体制を整備する。
2階にあがることで、何らかの優遇措置が講じられるかどうかについては、まったく言及されなかった。「税制」を管轄する財務省に配慮したものと見られる。
優遇措置の内容に言及がなかったことで、2階建てにすることの理由は、「公益性を有するにふさわしい規律のしっかりした非営利法人の受け皿となる仕組みを構築する」ことが前面にでている。
「公益性」の判断基準としては、積極的に不特定多数者の利益の実現を図ることを基本とし、営利企業の行う活動を阻害しないことなどが例示されている。判断主体が、法人の活動実績を踏まえて、一定期間ごとに公益性の有無を確認する仕組みも導入される。
公益法人制度改革が行革大綱に含まれたことは、政府の視点からすると、公益法人とは官業の補完的存在という位置づけであることを示したものといえよう。情報公開・透明化をさらに進め、民業圧迫の観点から、事業の廃止・縮小・重点化などを行っていこうという行政改革の観点が、公益法人にも適用されているのが特徴だ。
登記で設立可能となることや、主務官庁制が廃止されることで、一見、規制緩和のような印象も受けるが、「公益性」の認定は特定の大臣が行うこととなったため、これまでの仕組みが抜本的に変わったとはいえず、「この改革で本当に民間非営利活動が活発化するか」といった批判が寄せられている。
「今後の行政改革の方針」(新行革大綱)の全文は以下を参照のこと。
http://www.gyoukaku.go.jp/