行政 : 観光立国へ政府の戦略会議が提言
政府の観光立国推進戦略会議(座長・牛尾治朗ウシオ電機会長)は、11月30日、外国人旅行者を増加させるための方策を盛り込んだ報告書をとりまとめた。国際競争力のある観光地づくりを国が支援する必要性や、外国人の入国手続きの簡素化などを提言している。政府はこれを受け、年明けにも魅力ある観光地づくりの構想をNPOなどから公募し、これへの支援を行う方針。
観光立国推進戦略会議(以下、「戦略会議」)は、2003年1月に設置された内閣総理大臣主宰の「観光立国懇談会」の報告書を受け、同年7月に設置された「観光立国関係閣僚会議」の下部組織。
戦略会議は、旅行会社や大学関係者、マスコミ、運輸関係者などで構成され、2004年5月から11月まで5回の本会議と、4回のワーキンググループを開催、観光立国に向けての方策を検討してきた。
このたびの報告書は、これまでの議論を取りまとめたもの。経済的効果が高く裾野も広いとされる観光を振興するため、4つの課題と55の提言が示された。
政府は、現在の外国人旅行者数500万人を2010年までに1000万人にするという目標を掲げて、トップダウン方式のビジット・ジャパン・キャンペーンなどを展開しているが、さらに、この戦略会議では、
- 日本の観光地と観光関連産業が国際競争力を失っている、
- 目標を達成するためには、国の総力を挙げて取り組まなければならない、
- 国民の国内観光も重要である
との認識から、観光立国を更に推進するための方策を検討した。
課題として指摘されたのは、
- 観光の対象を宿から街、地域へ広げることが必要で、面的観光づくりを国が支援すること、
- 観光関連産業の近代化、合理化、人材育成などソフトインフラの強化、
- 外国人旅行者の受入体制の整備と外国人への戦略的情報発信、
- 休暇の取得促進や分散化などによる国民観光の促進
の4課題。
これらの課題を解決するため、体験型、参加型の観光資源の発掘、棚田や農山村の景観の保全、食・土産品などの地域ブランドの確立、旅行業者と交通事業者が別々にサービスを提供する「交泊分離」の推進、観光統計の整備、通訳・観光ボランティアの登録制度の整備、大学への観光関連学部・学科の設置、外国人旅行者の査証発行・免除の拡大、案内表示の絵文字や多言語化の促進、大人の休暇取得促進策と、子供の学校休業の多様化と柔軟化など、具体的な55の提言が盛り込まれている。
随所に成功事例やコラムも掲載されており、読みやすい構成となっていることも特徴。
また、報告書では、地方自治体だけでなく、観光協会、商工会議所、青年会議所、NPOなどが連携して、創造的で斬新な観光振興策を打ち出していくことが重要であると提言しており、政府は、適切な支援をしていく必要性を指摘している。
これを受け、政府では、年明けにも、国際競争力のある観光地づくりのアイデアを自治体や企業、NPOなど多様な主体から公募する方針。採択されたアイデアには、既存の政策メニューを紹介したり、省庁横断的な支援の実施、新規の支援策なども講じていく予定。
報告書の詳細は以下から見ることができる。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko2/