行政 : 京都市、住民参加型の町家ファンド創設へ
京都市は、町家改修の支援をする「京町家まちづくりファンド」(仮称)を来年度創設する方針を明らかにした。市から1億円の資金を拠出し、これに企業や市民からの寄付を募る方式。改修費はその運用益から充当する。進行する京町家の消失をこのファンドの創設で、歯止めをかけたい考えだ。
具体的なスキームとしては、京都市が2003年に設立した(財)京都市景観・まちづくりセンターにこの「京町家まちづくりファンド」(仮称)を創設する。このファンドに、京都市から1億円を拠出、同時に、準備段階から企業や市民からの寄付を募り、5億円規模をめざす。この運用益で町家の改修希望者に資金支援をする方針。
京都市では、「当市では、町家を市民で保全しようという機運が高まっており、町家の再生に特化して利用されるファンドなので、趣旨に賛同して寄付をしてくださる方は潜在的に多いと思う。同時に、市内に限定せず、市外の企業や個人にもぜひ、このファンドの存在を知ってもらい、協力してもらいたい」と、創設が決まった時点で、広く寄付を呼びかけていきたいとしている。
このファンドの運営にあたる(財)京都市景観・まちづくりセンターは、町家の所有者や移住希望者に対する相談やセミナーを開催するなど、京町家の保全・再生事業を実施してきた専門機関。
今後、京都市では、このセンターを景観法に基づく景観整備機構(※)に指定し、町家を改修したい人の支援をするとともに、改修された町家を景観重要建造物に指定、伝統的な町並みの保全・再生を促進していく考えだ。
ただ、このファンドは現在、公益信託となる予定で、公益信託の場合は、そのファンドに寄付した企業や個人の寄付は、寄付金控除の対象とはならない。
そこで、京都市では、昨年、同センターだけではなく景観整備機構一般に寄付した人に対する寄付金控除制度の創設を国に要望するなど、町並み保全のための環境整備に積極的に取組んできた。
自治体への寄付に関しては、寄付金控除の対象になったとしても、一般会計に繰り入れられてしまうと目的を限定した予算の使い方ができないといった問題も背景にある。しかし、景観整備機構への寄付金控除制度は、現在のところ実現していない。財務省が難色を示したことが伝えられている。
京都市は、これまでも「京町家再生プラン」を策定するなど、京町家の保全・再生に積極的に取り組んできた。このたびの「京町家まちづくりファンド」の創設は、昨年の京都市の調査で、約7年間で13%の京町家が消失したことが明らかになったことや、景観法が昨年成立したこと、国土交通省が、「住民参加型まちづくりファンド支援事業」を来年度予算要求していることなどが背景にある。
景観法では、保存したい建造物を景観重要建造物に指定することで、所有者が勝手に増・改築などができないようにすることなどが法律的に担保されている。
また、国交省の「住民参加型まちづくりファンド支援事業」では、地域の資金を地縁により調達してきた実績があったり、これから集める見込みがある場合は、(財)民間都市開発推進機構を通じて、原則として2000万円、必要性が認められる場合は最大5000万円の資金支援を得ることができる。
京都市では、さらに税制改正を国に要望することや、国の支援制度を利用することによって、今後も、町並み保全に取り組んでいく考え。
NPOなどさまざまな主体がなることができる景観整備機構への税制支援制度は、景観保全の機運の高まりを支援する意味でも、その実現が期待されるところだ。
※ 景観整備機構は、残すべき建造物を「景観重要建造物」に指定するよう景観行政団体の長(京都市の場合は市長)に提案することができる。景観整備機構には、公益法人やNPO法人がなることができる。ただ、まだ実際に指定を受けた団体はない。