行政 : 細田官房長官が、寄附税制整備に言及
細田官房長官は、2月22日の衆院予算委員会で、スマトラ島沖大地震・津波の被災地で活動するNGOへの支援に関連した質問に対し、個人的な見解としながらも、「寄附に対する税制優遇措置などで、NGO活動を建設的なものにするべき」と述べた。これを受けて谷垣財務大臣は、「寄附税制はどうあるべきか、広い観点から議論していきたい」と述べた。
このやり取りは、民主党の藤田幸久議員が、アチェで緊急支援活動を展開するジャパン・プラットフォームの活動を例にあげ、NGOへの支援が資金的に不十分であることを質したことに対するもの。
細田官房長官はこれに対し、個人的な考え方も含むとしながらも、政府としては各国と連携して復興計画にのっとって資金協力をするのがひとつの考え方であり、もう一方の支援方法としては、寄附税制の優遇措置などでNGOの活動を建設的なものにすべきであるとの考え方を示した。
また、「寄附税制もままならないし、いろんなことが障害になっている面もある」と寄附税制の不備についても言及した。
これに対し、谷垣財務大臣も、NPO法人への寄附の問題に触れ、「広い観点からさらに議論をしていきたいと思っております」と政府として検討をすすめていく考えを明らかにした。
やり取りの詳細は以下のとおり。
○藤田幸久議員
(略)
官房長官。今回、私3ヶ所ほど被災地をまわりまして、ジャパン・プラットフォームの力が、一番まあ、ある意味では比較優位のある形で活用されたというふうに現場でも感じたわけであります。これは、長官自身が、このジャパン・プラットフォーム創設には大変ご尽力いただいたわけですけれども、私もジャパン・プラットフォーム、たまたまアチェにおきましては3人の女性が、本当に瓦礫のなかで活躍をされておられました。
私は、思わずエンジェルが活躍しているようだというふうに思ったわけであります。それから自衛隊の医療チームも含めまして、いわゆる日本の総合力の援助のオリンピックのような形で、大変いろんな方々が活躍されていると感動したわけであります。
しかし一方で冒頭で申し上げました被害の大きさから比べますと焼け石に水と言ってはなんですけれども、まだまだ十分でないと。エンジェルも本当に気の毒だなという気がしたわけであります。
今後はいわゆる緊急人道支援体制から復旧復興支援へと大きく舵をきる時点になってきていると思いますけれども、ジャパン・プラットフォームは緊急援助の調査からはじめて26日に津波がおきた翌日から、ぱっと飛んでいけた。スターターとしてはいいんですけれども。
所期の目的は相当果たしたと思っていますけれども、これからは復旧復興支援になってきますと、まずひとつは、前から長官とも話をしていますけれどもNGOへの直接資金協力が規模の面と範囲の面ですね。つまり緊急支援以降については、やはりカテゴリー的に十分でないということ。
それから申請を前倒しで外務省は実質的に受け入れて、審査を前倒しをしているとか、補正から本予算にかわる際も執行が早まるような工夫を今やっていただいているということもあるんですけれども、やはりまだまだその部分が薄いと思うんです。従ってもう少し直接資金協力等が範囲と規模を拡大をし柔軟性が拡大するような検討が必要ではないかと思っておりますけれども、官房長官、いかがでしょうか。
○細田内閣官房長官
(略)
私自身も通産省におったときに有償、無償の援助を担当しておった。そして自民党外交部会長のときにコソボの難民問題が起こって現地に行き、そしてWFPなどの日本の食料支援が、先ほど委員がおっしゃっていましたが、日の丸が付いていない。小麦がどこから出たか、お金がどこから出たかわからないような援助はおかしいんじゃないか、というんで、そういうことをはっきりさせようじゃないか、というようなこともやりました。
それから大きなプロジェクトはNGOが出せないということで政府の制度を改正して、ジャパン・プラットフォームというような中核団体を育てて、たくさんの団体も傘下におさめながら、巨額なものも対応できるというような体制は整備したわけでございますけれども、今回のインドネシア・スマトラ沖大地震の関係でいうと、まだまだ、ジャパン・プラットフォームに対する支援は3億6千万円。当時のコソボに2千万円とがいう時代からみると飛躍的ですけれども、実際の資金需要からみると、とても足りないわけですね。
そこで私は個人的考え方も含みますけれども、2つあると思います。政府は有償、無償にかかわらず国際的に協力して、これだけの大災害からの復興でございますから、全部が連携をして、そしてしかるべき負担をすると。そこには、きちんとした復興計画があって、そこに国際的にどういうお金を投入すべきか、また日本政府は、あるいは日本の企業も含めましてどういう技術があるか、そこにどう貢献できるか、しっかり確定することが、まず大変大切であると思います。
それからジャパン・プラットフォームを中心とするNGOは、非常に、先ほど天使と言われましたが、個別個人で貢献されている方もすばらしい方が多くて、現地で献身的な活動をしておられますが、まだまだお金が足りません。政府がそれでは、この3億6千万円を、また増やしていくらになるかというと、なかなか大変だと思うんですね。
私は日本の国内で余っているお金を寄附をしてもらったり、そういうお金を集めて、それを例えば税制上の優遇措置などで、それこそ何十億、あるいは百億、そういうお金でも国内で集めてもらって、そしてNGO活動をより豊かで建設的なものにすべきじゃないかと。政府と民間であわせてやるべきじゃないかと。ところが、これをあんまり政府内で言うとあれですが、なかなか、そういう寄附税制もままならないし、いろんなことが障害になっておる面もあると思います。
私は藤田議員のおっしゃることを、きちっと、国際的にも対応し実現するためには、そういった制度面での改革も必要でなかろうかと。私も微力を尽くしてまいりたいと思いますが、そのように考えております。
○藤田幸久議員
財務大臣。突然の質問なんですが、今、官房長官の方から、この寄附税制も含めた、つまり3億6千万円、だいぶ増えたけれども、コソボの時よりは。ただ、これを増やすというよりは日本であまっているお金が集まるような寄附税制も含めた対応が必要ではないかというお話なんですが、財務大臣、いかがでしょうか。
○谷垣財務大臣
寄附税制については、既に今までいろんな議論がありまして、例えば、ちょっと今の委員の問題関心とはずれてしまうかもしれませんが、国立大学が国立大学法人になったと。それぞれが、やはり自分のところの財政的基盤を充実するにはどうしたらいいかというようなことで、寄附税制というものが、その背後にあるのじゃないかと大学関係者からもそういうようなご指摘をいただいたりしているわけであります。
それからちょっと話を大きくひろげますと、いつぞや総理が憲法89条でしたか、私学助成というものが果たして憲法にぴたっと素直に読めるかどうかというような問題提起をされたこともありますが、個人的な考え方としては多分、ああいう法制が憲法に入ってきているのは、非常に寄附というようなものに対して前向きの社会、個人の寄附というものは前向きな社会は、ああいう学術であるとか技芸であるとか、あるいは宗教というようなものは、私自身の寄附によって維持できる、そういう制度をもったところでは、ああいう憲法体制が割合すんなり出てくるんじゃないかというような気もするわけですね。
その辺も含めて、私ども、寄附税制はどうあるか、これはNPO法人の寄附の問題なんかでも、随分いろいろ議論がございましたけれども。財政の問題もございますので、ただちに私もここでどうということはできませんけれども、広い観点からさらに議論をしていきたいと思っております。
※ 衆議院審議中継ビデオライブラリからシーズ事務局で聞き取り作成。