行政 : 福井県で災害ボランティア条例制定へ
福井県で、全国初の災害ボランティアを対象とした条例「福井県災害ボランティア活動推進条例」が誕生しそうだ。行政のみならず、県民、企業の役割や県外へのボランティア活動も支援する内容。3月18日まで開かれている県の定例議会に提出されている。
福井県では、2004年7月の集中豪雨により大きな被害を受けたが、1997年1月の「ロシアタンカー油流出事故」の経験から、翌日には災害ボランティア本部を設置、全国から駆けつけた多くのボランティアの受入れを混乱なく行い、早期の復旧につなげた。
これには、漁業や観光業に深刻な被害をもたらしたタンカー事故の教訓から、さまざまな災害ボランティアのための取り組みを行ってきたことが功を奏したと評価されている。
具体的には、青年会議所、NPO、社協等で構成する連絡会の設置、マニュアルなどの作成、平常時からのボランティアセンターの立ち上げ訓練などが行われてきていた。
また、タンカー事故の際、全国から寄せられた義援金の一部(1億2千万円)を原資として、災害ボランティア活動基金を設置。大規模な災害が発生した際には、災害ボランティアセンターの設置、ボランティア活動に必要な資機材の購入、ボランティア保険の負担などをスムーズに行える仕組みづくりをつくっていた。
このため、昨年7月の豪雨の際には、復興支援のため約9千万円の予算措置がこの基金から可能となり、加えて、10月の新潟県中越地震の際には県民が行う被災地支援活動に、ボランティアバスや資機材の購入費などを支援することも可能となった。
福井県では、このような先進的な経験を活かし、さらに、総合的かつ計画的に推進するための基本理念や県の責務を明らかにする目的で、2月定例議会に「福井県災害ボランティア活動推進条例」案を提出した。
条例案の内容は、昨年10月に設置した「災害ボランティア活動の推進を考える懇話会」(学識経験者、NPO、被災自治体、マスコミ関係者等で構成)の提言や、県民との意見交換会、パブリックコメントなどを踏まえたものとなっている。
条例案では、「災害ボランティア活動」の対象を災害時だけでなく、平常時の活動も包含すると規定。県民と関係行政機関との信頼関係に基づく密接な連携および協力が欠かせないことを基本理念としている。また、ボランティアの自主性や自律性が十分に尊重され、生命や身体の安全について十分に配慮されなければならないことをうたっている。
県には、災害ボランティア活動を推進する責務があると規定したうえで、県民、事業者の責務も盛り込んだ。事業者には、従業員がボランティア休暇をとりやすいような体制づくりなどを求めている。
平常時には、人材の育成や、大学、研究機関と連携して調査や情報収集を行うとともに、災害時には能力のある団体に災害ボランティア本部の設置を要請できることや、その本部に施設や情報通信機器の整備など必要な支援を行う。
これら県内の災害活動のみならず、県民が県外のボランティア活動に参加する際には、移動手段の確保や保険の支援を行うことが盛り込まれている。
また、前の基金を廃止して新たに「福井県災害ボランティア活動基金」も設置する。これは、福井豪雨の際の義援金などの残金に、廃止する基金の残高を原資とした6億円規模のものとなる予定。
福井県では、この条例案に基づく来年度の事業として、災害ボランティア全国フォーラムの開催や、県内のブロック別の研修会、災害ボランティアリーダー塾の開催などを予定している。
今議会で成立すれば、4月1日からの施行となる。