行政 : 東京都「運用方針」でNPO監督強化
4月14日、東京都は、内閣府が平成15年3月に策定(同年12月改定)した「NPO法の運用方針」を基本に、東京都の実情に即した「東京都におけるNPO法の運用方針」を策定し発表した。内閣府の方針よりもさらに監督が強化された内容で、5月1日より実施される予定。
東京都によれば、4月14日に発表された「東京都におけるNPO法の運用方針」の目的は、NPO法人活動の健全な発展を図ること。「法人格取得の簡便さからNPO法人であることを利用して、必ずしも公益・非営利とは認められない活動を行う団体も見受けられるようになってきている」ことから、方針の内容を策定したという。
この運用方針は、内閣府が平成15年3月に策定(同年12月改定)した「NPO法の運用方針」を基本としているが、さらに東京都独自の認証基準と監督基準が盛り込まれている。
東京都独自の認証基準や、報告徴収等の対象となる監督基準は、具体的には次のような点などである。
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定款上の事務所の所在地は地番、ビル名、階層、部屋番号まで記載すること
(認証基準) -
社員総会の定足数は、社員総数の2分の1または過半数以上とすること
(認証基準) -
社員総会の議決事項は、定款変更、解散、合併のほか、事業報告および収支決算、社員の除名、監事の解任、その他運営に関する事項を最低限とし、定款に記載すること
(認証基準) -
定款に、特定非営利活動に係る事業の種類として「その他目的を達成するための事業」を含めている法人が、同じ内容の事業活動を「その他目的を達成するための事業」として2事業年度以上継続する場合は、定款変更して、その事業を具体的に記載すること
(監督基準: 報告徴収等の対象) -
特定非営利活動の事業会計から、「その他の事業」に対して資金の繰り入れを行わないこと
(監督基準: 報告徴収等の対象) -
「その他の事業」の収益は全額、特定非営利活動に係る事業会計に繰り入れること
(監督基準: 報告徴収等の対象)
これらの他にも、法人名称や、社員の資格の得喪などに関する方針も盛り込まれている。
東京都によれば、法人の定款に記載された「その他目的を達成するための事業」とは、「スポット的な事業であり、たとえば設立5周年事業など、継続性のないものを指す」とのことである。そのため、2事業年度以上継続する場合には、具体的に定款に事業を記載しなけばならないという。
また、「その他の事業」については、東京都は「あくまでも特定非営利活動に係る事業に『支障がない限り』行うことが認められたものであるから、特定非営利活動を圧迫してはならない。そのため、『その他の事業』のために、特定非営利活動の事業会計からお金を繰り入れることはできない。そうでないと主客転倒となる」と、している。
東京都によれば、新たに「その他の事業」を始めるために、一時的に特定非営利活動の会計の資金を借りるような場合でも、年度末には「その他の事業」は黒字になるであろうから、借り入れた分よりも大きな金額を特定非営利活動の会計に返すことができるから問題ないだろう、としている。
(※ 都の方針では、内閣府と同様、「その他の事業において2事業年度連続して赤字計上されている場合」も監督の対象となるとしている)
なお、「『その他の事業』の収益は特定非営利活動の事業会計に全額繰り入れなければならない」としている点について、翌事業年度に設備を整えて、さらに収益をあげたいと考え、その設備充実のための資金を少し残した場合に、報告徴収されるかどうかについては、ケースバイケースとなりそうで明確ではない。
この東京都の方針に関して、NPO法の立法過程に関わったシーズの松原事務局長は、
「NPO法が本来求めていないことを、行政が勝手な理屈で決めていて大きな問題だ。
たとえば、定款に書かれる事務所所在地は、従来、最小行政区画(市町村)まででいいとされてきており、実際、東京都もNPO法スタート当時は、そのようにして運用して、認証してきた。運用をコロコロ変えて良い訳ではないし、解釈で法律を改変していっていいわけでもない。これではとても法治国家とは言えない。
今回の運用方針は、認証の基準を法律が求めていないものに変えようというものであり、新しい裁量行政とでもいうべきものだ。行政の恣意的裁量を排除しようというNPO法の精神からは大きく逸脱している」
と強く批判している。
東京都の運用方針の概要は、東京都ホームページ下記を参照のこと。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2005/04/20f4e101.htm
また、運用方針本文は、東京都ホームページ下記を参照のこと。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2005/04/20f4e102.htm