行政 : 「NPO」商標登録、取消し確定
6月15日、(株)角川ホールディングスは、同社が新聞・雑誌の分野で登録した「NPO」「ボランティア」という語に関し、特許庁が商標登録の取消しの決定をしたことについて、この決定を受け入れる旨を同社のホームページで発表した。
2003年4月に、(株)角川ホールディングス(以下、角川)は「NPO」を新聞・雑誌の分野で商標登録した。なお、同時期に、同社は「ボランティア」の語についても新聞・雑誌の分野で商標登録している。
「NPO」の商標登録に対して、大阪NPOセンター、大阪ボランティア協会、関西国際交流団体協議会、市民活動情報センター、日本NPOセンター、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会の6団体は、NPO活動の根幹にある定期刊行物の題号に「NPO」の語を使うことが制限される可能性が生じたとして、同年7月25日に特許庁に異議申立を行った。
また、8月25日には、NPO関係者から集めた既刊の「NPO」という語を含む定期刊行物26点や異議申立への賛同書(団体:44、個人:81)をまとめて、「手続補正書」として特許庁に提出した。加えて、この補正書では、雑誌、新聞の記事、公的機関の名称など約50項目を列挙して、「NPO」という語が公共の財産として定着した言葉であることを示し、「NPO」1語による商標登録は、識別性が欠如していると同時に、独占的に使用されることが社会公共の利益に反するという異議申立の根拠を補強した。
翌2004年6月29日に、特許庁から角川に対して「取消理由通知」が出された。この通知書で、特許庁は、「NPO」に関しては社会的な関心が高いこと、多くのNPO団体が「NPO」の文字を含んだ題号の定期刊行物を継続・反復して発行していることを認めた上で、「NPO」という商標には自他商品識別力がないとことを主な取り消し理由としてあげていた。
「取消理由通知」の出された後、6団体は、「NPO」商標登録の取り消しを後押しする内容のNPO側からの意見書を特許庁に提出していた。また、角川は、この取リ消し理由に反駁する内容の意見書を提出していた。
今年5月10日、特許庁は、「NPO」という商標は「識別性に欠け」、「この語の独占使用を認めることは公益上適当とはいえない」という理由で商標登録の取消しを決定し、決定書を5月17日に角川と異議申立を行った6団体に対して送達した。
角川は、この決定に不服であれば、決定書の送達から30日以内に特許庁長官を相手取り、「知的財産高等裁判所」に提訴することができるとされていた。
6月15日、(株)角川ホールディングスは、同社のホームページで、「登録商標『NPO』『ボランティア』の登録取消について」と題する文章を発表。今回の特許庁の登録取消決定を総合的に検討した結果、「雑誌、新聞」に関する商標制度の法的側面を争点として争うことはNPOやボランティ活動の後押しをするという同社の基本的な考えに合致しないとして、取消決定を受け入れる旨を明らかにした。
そのため、角川による「NPO」と「ボランティア」の商標登録の取消しが事実上確定したことになった。