行政 : 民主党、独自の公益法人改革案発表
民主党は、7月13日、同党独自の公益法人制度改革案を、2005年中間報告として発表した。中間法人は現在のまま存続させることや、税制支援を受ける団体の認定期限を設けず、寄附金の50%までを税額控除にできるようにするなど、政府が現在検討している案よりも踏み込んだ内容になっている。
民主党のNPO・公益法人改革プロジェクトチーム(PT)と民主党税制調査会は、連名で、7月13日に「民主党・公益法人制度改革案(2005年中間報告)」を発表した。
民主党案は、登記により簡易に設立できる非営利法人(仮称)をいわゆる一階部分とし、そのうち、税制支援を受ける税制支援非営利法人(仮称)を二階部分とするところは、政府案と共通している。
しかしながら、現行の中間法人を存続させて、この改革からは切り離し、そのことで一階部分は残余財産の分配を不可とする点や、二階部分の税制支援非営利法人に寄附した個人は、寄附額の半分までを、所得控除ではなく税額控除とできる点など、同党独自の内容となっている。
民主党案の政府案との主な違いは次の点。
- 非営利法人(仮称)【一階部分】
- 非営利の定義を「非分配」とする
- 残余財産の分配は不可。法人税は原則非課税(税法上の収益事業は課税)
- 中間法人制度は、残余財産が可能な非営利法人として存続させる
- 税制支援非営利法人(仮称)【二階部分】
- 税制支援の対象とする法人の判断要件は、できる限り法律に明記し、認証主義をとる
- パブリック・サポート・テストを満たすことを要件とするが、満たさない場合でも、「判断主体」の判断で認証できるバスケット規定を考える
- 寄附金控除
- 個人の寄附は、寄附金額の50%までを税額控除の対象とし、上限は所得税額の20%までとする
- 個人の寄附は、寄附金控除の適用下限額を3000円とし、3000円を超えた場合は全額控除対象とする
- 個人の寄附金が税額控除の上限を超えた場合は、5年間繰越できることとする
- 法人については、課税所得の10%までの寄附金の損金算入を認め、限度超過分は5年間繰越できることとする
- みなし寄附金
- 所得金額の50%までの損金算入を認める
- その他
- 税制支援非営利法人の認定期間については、特に期限を設けない。(事業報告書等については、毎年の提出を求め、要件を満たさなくなるまで資格は継続)
民主党としては、今後、年末に向けて最終報告とすべく、NPO界・公益法人界の意見を聞きながら、さらに作業を進めていく予定。
民主党NPO・公益法人改革プロジェクトチームの中村哲治事務局長(衆議院議員)は、シーズのNPOWEBに対し、次のようなメッセージを寄せている。
「民主党NPO・公益法人改革プロジェクトチーム事務局長、衆議院議員の中村てつじです。
私たち民主党は、民間のNPOこそ21世紀の日本において公(パブリック)を担う中心的存在になるべきだと考えています。しかし、現状はといえば、非営利法人の諸制度は、権威的な官主導のものになってしまっています。
そこで、NPOの皆様がより自由に自律的な活動をできるような法的なスキームを作るという観点から、民主党の公益法人制度改革案(2005年中間報告)を作成させていただきました。
民主党案の内容によれば『果たして特定非営利活動法人制度は必要あるのか?』という指摘もいただいております。しかし、民法非営利法人一般法である公益法人制度改革の議論の行方はまだまだ見通しがつきません。「統合」という言葉だけが独り歩きし、政府案に取り込まれる懸念もあります。
そこで、民主党の公益法人制度改革案では、特定非営利活動法人制度は統合の対象としませんでした。ただ、本質的により使い勝手の良い制度になるのならば、特活法人の皆様にも新非営利法人に移ってきていただけるので、現実的な問題はないものと考えております。
この他も、いわゆるNPO界の皆様が懸念を持っていらっしゃる点はあろうかと存じますが、皆様のご意見をうかがう中で、最終報告と最終報告に基づく民主党の政府対案を作っていこうと考えています。
皆様からのご意見をお待ち申し上げます。」
民主党案の全文は以下のとおり。
2005年7月13日
民主党・公益法人制度改革案(2005年中間報告)
NPO・公益法人改革PT
民主党税制調査会
一.はじめに
政府は、「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」(平成15年6月閣議決定)に基づく「公益法人制度に関する有識者会議」の報告書を基に、昨年12月に「今後の行政改革の方針」(公益法人制度改革の基本的枠組み)を閣議決定し、現在、公益法人改革案の原案を作成している。しかし、依然として、一階部分の「非営利法人」(政府案)が原則非課税となるのかどうかなど、はっきりとしない部分もある。
公益法人改革で求められているのは、(1)現行公益法人について指摘されている諸問題に適切に対処する(官業公益法人の見直し)とともに、(2)多様な市民ニーズを実現し、活力ある社会を構築するために、民間非営利部門を自律的に発展させる土台をいかにつくるか(民間非営利活動の活性化)という2点である。民主党は、以上の観点から、2003年6月には、原則非課税・設立は準則主義(または要件をはっきりさせた上で認証主義)・残余財産分配不可の3点を特色とする「公益法人制度改革案(中間報告)」(以下、2003年中間報告)を「次の内閣」で決定した。2003年中間報告は、民主党としてのあるべき公益法人制度(民間非営利セクター)を政府・与党に先んじて示すものであった。
政府の議論の進展と並行して、民主党としても、官業公益法人への天下り等の問題については、特殊法人等改革推進本部や特別会計WTで、また、非営利法人法制については、引き続きNPO・公益法人改革PTや税調で議論を続けてきた。この時点で、民主党としてさらに詰めた議論をまとめることで、あるべき非営利法人法制の姿を示す必要があると考えた。
全体の構成としては、民法34条以下の公益法人制度を抜本的に改革し、「非営利法人法」(仮称)という別の法典を作る点、「税制支援非営利法人」(仮称)の要件を検討している点が、特色として上げられる。
この中間報告による改革案の実現は、民間活動を官が事前に規制する(官-民規制)社会から脱却し、市民の自主性・自律性を基に政府に頼ることなく自らが互いに支えあう(民-民評価)社会の実現に大きく寄与するものである。
二.非営利法人(仮称)(一階部分)について
総則的事項
- 社団形態と財団形態の2種類の法人類型を設ける。
- 登記による設立を可能とする。
- 理事の責任を明確化する。
- 非営利の定義:非分配(非分配には、広く私的流用の禁止も含まれる)。
- 事業は格別の制限を設けない(共益も可とする)。
- 裁判所による解散命令制度等、不適切な法人や休眠法人を整理する制度を設ける。
- 残余財産の分配は不可とし、法人税は原則非課税とする(収益事業(33業種)については営利企業並に課税)。
社団形態の非営利法人制度について
- 社員2名以上で設立可とし、設立時の財産保有規制を設けない。
- 社員総会および理事は必置。理事会及び監事の設置も可能。
- 拠出金制度については別法(特別法)で対応する。
財団形態の非営利法人制度について
- 300万円以上の純資産保有を義務付ける(設立時及び存続中)。
- 理事会、評議員会、監事を必置とする。
その他
- 暴力団による設立は規制(特定非営利活動法人と同じ)。
- 大規模な法人については、会計監査人による監査を義務付ける方向で検討。
- 財務状況の一般的な開示、定款又は寄付行為の変更、解散、合併、清算等について法定。
- 中間法人制度は、残余財産の分配が可能な非営利法人として残す。
- 特定非営利活動法人制度については、市民活動の活性化に特化した、非営利法人法制の特別法的な位置づけにあると解し、当面存続する。今後非営利法人制度が施行され、その運用が落ち着いた段階で、その統廃合については改めて検討する。
三.税制支援非営利法人(仮称)(二階部分)について
判断主体について
- 特定大臣および知事の下、民間有識者からなる合議制の委員会を設置し、この委員会において実質的に判断。活動が都道府県を跨る公益法人については特定大臣の、それ以外の公益法人については知事の管轄とする。
- 判断主体の主な機能:
- 税制支援非営利法人の認証
- 認証の取り消し(事後チェック)
- 判断要件の追加
- 情報公開
判断要件について
- 要件については、できる限り法律に明記することとし、認証主義を採る。
- 具体的な要件について
- (定款又は寄付行為の)目的に「不特定多数の利益の実現」が盛り込まれていること
- 当該法人の事業の過半を占める事業(本来事業)が、公共性のある特定分野(分野を列挙)のいずれかに該当すること
- 収益事業の利益は、原則として本来事業に充てること
- パブリックサポートテストを満たすこと
- 役員等について、同一親族の占める割合が過大でないこと等
- なお、4.パブリックサポートテストを満たさない場合でも、「判断主体」の判断で認証することができるようにすることも考えられる(バスケット規定)。
税制支援の内容
(1)寄付金控除
- 個人の寄付については、所得税の税額控除の対象とする。その際、控除額は寄付金の50%(上限は所得税額の20%)とし、従来の適用下限額は3000円にするとともに、たんなる適用下限制度から、寄付が適用下限額を超えた場合には、寄付した金額全額の控除を認める制度に変更する。税額控除の繰越期間については5年間とする。
- 法人については、損金算入(上限は課税所得の10%、限度超過分は5年の繰越)を認める。
- 相続税の優遇措置
- 相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続税の提出期限内に税制支援非営利法人(仮称)に贈与した場合には、当該財産を課税対象から除外する。
- 税制支援非営利法人(仮称)に対する遺贈又は贈与に係るみなし譲渡所得を非課税とする。
(2)みなし寄付
所得金額の50%まで損金算入を認める一方で、収益事業(現在33分野)への軽課課税は存続。
(3)金融収益への課税
金融収益については(収益事業に属するもの、属さないものを問わず)非課税とするが、本来事業以外の収益事業に投資することは禁ずる(資産運用という形での再投資は可能)。
(4)本来事業である収益事業について課税上の取扱い
公共性のある本来事業については、収益事業に該当しても法人税は課税除外とする。
(5)その他
「納税者が支援したい「税制支援非営利法人」を1団体選び、所得税・住民税の1%相当額を支援できる制度を創設する」というような制度の導入も検討。
適正運営確保のあり方
- ガバナンスについては、理事会及び監事を必置。
- 情報開示については、業務・財務等に係る事項、判断要件に係る事項、役員報酬や管理費の水準等社会監視に付すべき事項等について、インターネットの活用を図りながら国民に開示。
- 判断主体も、法人の開示情報を集約しデータベース化を行い、インターネットにより国民に公開。
- 税制支援非営利法人認定の期間については特に期限を設けない(事業報告書等については、毎年の提出を求めることとし、要件を満たさなくなるまで資格は継続される)。
- 過剰な内部留保の蓄積を防ぐため、資産の一定割合を定期的に公共性のある事業へ支出することを義務付ける。
民-民規制について
- 行政の役割は情報公開を徹底することにとどめ、その先については民間の評価に任せる。(判断主体は、事後チェックにおいては、民間からの情報提供も参考とする)
- 民間の相互監視機能を強化するための制度整備(代表訴訟の整備、判断主体への提訴制度等)については、その必要性も含め今後検討する。
四.その他
収益事業の範囲について
- 収益事業の範囲については、昭和59年以来対象範囲の見直しが行われておらず、現実との乖離が指摘されている。その範囲や定義の方法等について何らかの見直しが必要と考える。
- なお見直しの際には、抜け穴が多いとされる行政委託型公益法人への課税についても包括的な見直しを行う必要があると考える。
以上
この民主党の公益法人制度改革案は、同党の次のホームページで読むこともできる。
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/zaimu/BOX_ZAI0109.html