行政 : 遠野市、特区で寄附金控除申請
どぶろく特区や企業の農業参入など、これまでもユニークな特区で地域活性化を進めている岩手県遠野市は、6月30日、3つの新しい特区申請と1つの新たな地域再生の申請を行った。そのひとつは、公益法人、NPO法人などへの寄附者の市民税軽減や、こうした法人が納めた法人税(国税)を市へ還元する「みんなで支える民輪(みんわ)のまち構想」。
岩手県遠野市が6月30日に申請した3つの構造改革特区・地域再生構想は、次の3件。
(1) 結いタク子供送迎構想
(2) ふるさと活田構想
(3) みんなで支える民輪のまち構想
(1)の「結いタク子供送迎」は、児童生徒の安心安全運送システムを構築するもので、いわば福祉運送特区の拡大版。(2)のふるさと活田は、すでに特区で実施している企業の農業参入の拡大で、企業が休耕田を借り受けてドジョウ養殖により土壌改良を行うもの。
なかでも画期的な提案は(3)の「みんなで支える民輪のまち構想」。これは、「特区」と「地域再生」の2つの部分からなっている。
「特区」申請部分は、地域の公共的なサービスを担うNPO法人や公益法人に対して、寄附を行った遠野市民が、自らが納める所得からその寄附金額を控除できるようにすることで、個人市民税を軽くするもの。この対象となるNPO法人や公益法人は、市長が特に認めたものに限られるが、公共的地域サービスを実施するこうした法人への寄附が集まりやすくすることで、資金的自立を促すことを目的としている。
「地域再生」申請部分は、「ふるさと再生税の創設」と呼称されるもので、地域で公共的サービスを担うNPO法人や公益法人、市の出資する第3セクターに課せられる法人税(国税)に相当する額を、市へ還元するよう求めるもの。すなわち、こうした法人を、公共法人と同等の扱いとし、法人税相当額を国ではなく、市へ「法定外目的税」として納付し、地域振興に宛てようという構想。
内閣官房構造改革特区推進室・地域再生推進室によれば、これまで特区・地域再生・規制改革において、適正な競争を推進させるようなもの以外は、国税や地方税を軽減するような提案について、実施決定が降りた例はないという。
遠野市では、「かなりハードルが高いことは承知している。しかし、チャレンジ精神で申請した。できる限り頑張りたい」としている。決定は、9月頃になる予定だ。