行政 : 市民レベルの文化外交で国際理解推進
7月11日、国際文化交流の基本的な在り方の検討を目的として設置された首相の私的諮問機関「文化外交の推進に関する懇談会」は、「『文化交流の平和国家』日本の創造を」を発表した。報告書では、NPO・NGOなどによる市民レベルの文化外交の重要性を指摘し、東アジアと中東イスラーム地域を文化外交の重点対象地域として、滞在型の交流プログラムや海外の文化遺産の保護などに積極的に取り組むよう提言している。
「文化外交の推進に関する懇談会」は、昨年12月に首相の私的諮問機関として設置された。座長は、青木保法政大学大学院教授。懇談会メンバーには、有識者として、大学教授などのほかに、画家の平山郁夫氏、雅楽師の東儀秀樹氏、建築家の安藤忠雄氏、俳人の黛まどか氏、マリ・クリスティーヌ氏などの文化人も含まれている。
この懇談会は、昨年12月から今年7月までに7回開催され、加えて2回の国際文化交流関係団体などへのヒアリングを実施。親日感を醸成して諸外国との友好関係を増進するために、国際文化交流はどうあるべきかを検討してきた。
同懇談会は、7月11日に、最終報告書「『文化交流の平和国家』日本の創造を」をとりまとめ小泉首相に手渡した。
報告書では、市民レベルの文化外交の重要性を指摘。韓流ブームを例に挙げ、諸外国との相互理解や信頼には一般市民の理解促進が政府の態度にも大きな影響を与えるものだとしている。そのためには、「外交空間」を国や政府に限らずに、NGO・NPO、民間機関、メディアなど広い視野でとらえるべきだとしている。
また、伝統的な日本文化に加えて、マンガやアニメ、ゲームなどの現代日本文化を積極的に発信することで、より深い日本理解が得られると提言。
具体的な文化外交への取り組みとしては、留学生のより積極的な受け入れ、外国の芸術家を招聘して住居や創作の場を提供して活動を支援する「アーティスト・イン・レジデンス」事業の推進、紛争地域などでの文化遺産の保護・修復に積極的な役割を果たすことなどを提言している。
さらに、文化外交戦略上の重点対象地域として、歴史認識をめぐる諸問題を抱える東アジア地域と、文明間の対話を促進させて国際平和に資するために中東イスラーム地域をあげている。
内閣官房の担当者によれば、この提言をもとに、関係省庁は来年度の予算案に国際文化外交のための具体的な支援策などを盛り込んでいくとのこと。
「文化外交の推進に関する懇談会」の詳細と最終報告書は、官邸サイト内、下記を参照のこと。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/bunka/