行政 : 自民税調、NPO税制検討始まる
自民党税制調査会は、11月29日、自民党NPO特別委員会から認定NPO法人制度の改正ポイントについてヒアリングを行った。認定要件の緩和の議論が本格化。12月15日頃には結論が出る。
自民党税制調査会(柳沢伯夫会長)は28日に総会を開き、06年度与党税制改正大綱の12月中旬決定に向け論議を開始した。29日には、自民党の各部会や特別委員会から、それぞれの税制改正の課題についてのヒアリングを実施。
NPO特別委員会からは、鴨下一郎委員長、加藤紘一顧問が、認定NPO法人制度の改正要望書を提出して、そのポイントを説明した。特別委員会の改正要望は、全国38のNPO支援団体のネットワークである「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」の要望に添った内容となっている。
今年の改正議論では、パブリックサポートテストの計算式の改正、申請書類の簡素化および小規模団体への特例措置、寄付者名簿等の非公開措置が焦点となる。
小規模団体への特例措置は、現在収入1千万円未満の団体に対しては、簡易なパブリックサポートテストの適用などがNPO特別委員会では案としてあがっている。
議論は、これから12月中旬まで行われ、12月15日前後に与党税制改正大綱として決定される見込みだ。
自民党NPO特別委員会が自民党税制調査会に提出した要望書の全文は以下の通り。
平成18年度税制改正要望事項
自由民主党
非営利組織(NPO)に関する特別委員会
第一 認定NPO法人制度に係る特例措置(所得税、法人税、相続税、法人住民税、法人事業税)
1.認定要件の緩和について
(1)パブリック・サポート・テスト(以下、PST)の要件緩和
- 基準値の引下げ(1/3⇒1/5)に係る時限措置を3年間延長する等、実態に合わせて再検討する。
- 社員からの会費(ただし対価性のない部分)を、PSTの分子に算入できることとする。この場合、社員の議決権は、会費の反対給付とはみなさない。
- 国等からの補助金及び委託事業費、並びに法令の規定による国・地方公共団体の負担金について、一定の条件の下でPSTの分子に算入できることとする。なお、国等とは、国・地方公共団体、国際機関、公共法人、国・地方公共団体が一定の出資をする法人をいう。
- 以下の助成金については、全額を分子に算入できることとする。
- 特定公益増進法人・認定NPO法人からの助成金
- 公益法人からの助成金で、公募され、外部の審査委員会が選考を行い、助成期間が連続して3年を超えないもの(公益法人制度改革が終わるまでの暫定措置)
- 特定非営利活動に係る事業収入のうち実費相当額をPSTの分母から除外できることとする。
- 任意団体からNPO法人化した際の、任意団体からの引き継ぎ資産は、PSTの計算においては分母分子に含めないこととする。
- PSTにおける単年度の10分の1の下限は廃止する。
(2)運営組織及び経理の適正性に係る要件の明確化
- 将来の施設購入や緊急災害時などのために、基金を積み立てる場合は、届出をすることで、寄付金を特定非営利活動に支出したこととし、取り崩した場合には、その金額および使途について年度終了後に税務署に届け出ることとする。
(3)共益的な活動の制限に係る要件の明確化
- 「単なる顧客」として会員等の範囲から除かれる「当該法人の運営又は業務の執行に関係しない者」、「当該資産の譲渡等以外の当該法人の活動に関係しない者」の範囲を明確化する。
2.申請手続きの負担軽減措置
(1)親族関係の確認手続きの簡素化
- PSTの計算において、寄附者の3親等以内の親族からの寄附に関して、とりまとめて「一者からの寄附」として計算する要件を、一定数以上の寄附者がいる場合には、適用しないこととする。
- 親族等や特定の法人の従業員等の役員・社員に占める割合に関する制限については、一定数以上の社員がいる場合には、役員だけに限定して制限を課すこととする。
- 特に、小規模法人に対して、上記i.及びii.の措置を実施するとともに、PSTの計算式の簡素化を図ることにより、段階的に申請書類の軽減を行うこととする。
(2)認定有効期間の延長等
- 認定有効期間を5年間に延ばす。
- 認定の空白期間が生じないように、「更新」の仕組みを導入する。または、事業年度毎の報告書において要件を満たしていれば自動更新できるようにする。
- 認定にかかる審査期間を4ヶ月以内と明確に定める。
(3)その他
- 役員の状況、社員の状況、賃金に関する情報、従業員の給与などの提出書類を廃止し、申請書類をより一層○×式等で解答できるようなものとするなど、提出書類の簡素化を行う。
- 申請書類を明確に限定し、申請書類以外の書類に関しては、原則的に提出しないでよいこととする。
3.寄附者名簿の公開措置の緩和等
- 20万円以上の寄附者の氏名、住所、寄附金額等を明らかにした書類は、税務当局への提出にとどめ、一般の閲覧対象としないこととする。
- 社員全員の氏名、住所、職名、続柄等を記した「社員の状況」に係る書面は公開の対象としないこととする。
- 役員・従業員の給与に関しては、全員の給与を公開することとなっているが、公開は役員のみとし、従業員については廃止することとする。
第二 公益法人を含む非営利組織(NPO)全般の活動を支援するための税制の改善(所得税、法人税、相続税、個人住民税、法人住民税、法人事業税)
1.認定NPO法人及び特定公益増進法人に対する寄附金等への特例措置の拡大
(1)みなし寄附金制度の控除枠の拡大
- 現在、所得金額の20%を限度としているみなし寄附金制度の控除限度額を50%に引き上げる。
(2)国税における寄附控除枠の拡大等
- 個人が寄附をした場合の寄附金に関しては、控除対象額の計算において1万円の足切りがあるが、これを撤廃する。
- 法人寄附者については、寄附金の損金算入限度枠を所得の5%にまで拡大する。
- 個人、法人とも、寄附金控除限度額を超えた寄附金額に関しては、5年間にわたって繰り越し控除ができるようにする。
- 企業が消耗品や棚卸し資産を寄附をした場合には、全額損金算入できるようにする。
- 相続財産および資産の寄附に関して、2年以内に公益事業に使用しなければならないとする期間を延長するとともに、非課税措置取り消しの場合でも寄附者に課税しないこととする。
- 個人の物(現物)の寄附を所得控除の対象にする。
(3)地方税における寄附金控除制度の適用
- 個人住民税の課税所得の計算において、寄附金を国税と連動して控除できるようにする。
- 地方税における寄附金控除の10万円の足切りを撤廃する。