行政 : 介護ボラ控除制度、厚労省見送り
東京都の稲城市と千代田区は共同で、介護の現場でボランティアをした高齢者の介護保険料を安くできるよう、今年8月、厚労省に対して、介護保険制度の改正を要望していた。しかし、12月7日、厚生労働省は、当面はこれに関する制度見直しは当面行なわないことと決定。これを受けて、稲城市と千代田区では来年、特区申請を検討中だ。
稲城市(石川良一市長)と千代田区(石川雅己区長)は、今年8月1日、厚生労働省老健局長に対し、「(仮称)介護支援ボランティア控除」を可能とするよう、介護保険制度の改正要望書を提出していた。
この「介護支援ボランティア控除」とは、介護の現場で周辺のボランティア活動をした65歳以上の高齢者を対象に、年間の介護保険料を5千円程度安くするというもの。
この目的は、高齢者が介護支援のボランティア活動を通じて地域貢献することを支援し、それにより、いきいきとした地域社会を目指すもので、より具体的には、次のような効果をねらっている。
- 地域の高齢者のボランティア参加を促すことで、高齢者に「社会に役立っている」意識を持ってもらい、健康な高齢者を増やす。
- 元気な高齢者を増やすことで、上がり続ける保険料の高騰に歯止めをかける。
- ボランティア活動を通して、介護を受ける時のイメージをつかんでもらい、自身の「老い仕度」に役立てる。
昨今「介護保険も使わないと損をする」という感覚が広がりつつあることから、稲城市と千代田区では「元気な人が元気に地域貢献する」というインセンティブを施策として取り入れたいと考えたものだ。
しかし、現行の介護保険制度では、自治体独自の保険料控除は認められないことから、来年4月1日を施行とする法令改正において、介護支援ボランティア控除を可能とするような改正を要望していた。
しかし、12月7日、厚生労働省は「当面、平成18年4月1日を施行とする制度見直し(法令改正)は行なわないこととし、保険者等の意見を聞きながら、実施について引き続き検討を進めていくことが必要と判断した」と発表。
厚生労働省の介護保険課によると、積極論もあったが、一方で慎重論も強く、時間的制約から見直しの決定となったという。
慎重論のなかには「介護保険では現金給付を行なっていないが、この制度は現金給付を想起させる」、「ボランティアは、対価的な性格のものではない。この制度ではボランティアの意義がうすれる」、「ボランティアとして参加できない高齢者もおり、こうした人たちにシワ寄せがいく」などの意見があったとのこと。
稲城市と千代田区では、「この度の決定は、大変に残念。しかし、厚生労働省も、地域づくりの観点から保険料の設定について創意工夫していきたいとしており、その意味でも介護支援ボランティア控除の提案は意義がある」として、今後は、こうした制度を有効と考える自治体と連携し、構造改革特区への提案を検討していきたいとしている。