行政 : 国連報告を受け、人権NGO共同声明
「日本には人種差別と外国人嫌悪が確かに存在する」と明言された、人種主義・人種差別等に関する国連特別報告者による報告書の国連における公表を受け、3月7日、反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)をはじめとする人権問題に取り組む71のNGOが、その報告書の意義と価値を主張する共同声明を発表した。
国連人権委員会が任命した「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容に関する特別報告者」であるドゥドゥ・ディエン氏(セネガル出身)による、初の日本公式訪問(2005年7月3日~11日)を受けた報告書が1月24日、国連に提出公表された。
国連人権委員会が任命した特別報告者が日本の問題について単独の報告書を発表したのは、ラディカ・クマラスワミ「女性に対する暴力に関する特別報告者」による「日本軍「慰安婦」に関する報告書」(1996年)以来2度目のこと。
同報告書では、「日本には人種差別と外国人嫌悪が確かに存在する」と明言し、その影響を受けている主な集団として、1)ナショナル・マイノリティ(被差別部落出身者、アイヌ民族、沖縄の人びと)、2)朝鮮半島・中国など日本の旧植民地出身者とその子孫、3)その他のアジア諸国および世界各地からやってきた外国人・移住労働者、を取り上げ、それらの集団が被っている差別状況を記述している。
あわせて、同報告書では、日本政府に対し、人種差別の存在を公式に認めそれを撤廃する政治的意思を表明することや、差別を禁止する法律の制定や問題に対処するための国内機関の設置、歴史教科書の見直しなど24項目にわたる勧告を提示している。
この報告書発表を受けて、「反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)」は、日本において人権が侵害されているマイノリティ集団の存在と歴史、現状に対する相互理解を深め問題意識を共有する広範な連携に参加するよう呼びかけを開始した。
「反差別国際運動日本委員会(以下、IMADR-JC)」は、世界から一切の差別撤廃をめざす活動を行っている国連経済社会理事会との協議資格をもつ国連NGO。1988年に、部落解放同盟や国内外の被差別団体や個人によって設立された。
3月7日、IMADR-JCは参議院議員会館で院内集会を開催。日本における、さまざまなマイノリティ・グループと、差別撤廃に取り組むNGOとともに、ディエン報告書に対する「NGO共同声明」と、ディエン特別報告者への「NGO共同公開書簡」の発表を行った。
71団体から提出された「NGO共同声明」では、報告書について、日本における人種主義・人種差別・外国人嫌悪の問題を、法的側面にとどまらず、社会的・歴史的文脈にまで踏み込んで包括的に捉えた、初めての国連文書であると評価。その上で、日本の政策責任主体が「日本には人種差別と外国人嫌悪が確かに存在する」ことを自覚し、勧告を履行すること、マイノリティ当事者との対話を深めることを求めている。
IMADR-JCでは、この声明について、より多くの署名が集まることで、報告書の意義と価値を一層強めていきたいとして、引き続き共同署名団体を募っている。今後は個人にも署名への協力を求めて、一定の期間が経過した段階で集約し、声明文の署名団体/個人の一覧を改訂していくとのこと。
人種主義・人種差別に関する国連特別報告者による報告書の日本語仮訳(IMADR-JC訳・平野裕二監訳)、NGO共同声明文、報告書発表を受けて展開している共同行動への呼びかけ、等の詳細は、下記、IMADR-JCのサイトを参照のこと。
http://www.imadr.org/japan/