行政 : 一転、経産省がエネルギー消費量開示
事業所の電力使用量等のデータについて、情報開示を求めたNPO法人「気候ネットワーク」に対し、経済産業省が情報開示を拒否し、気候ネットワークはこれを違法だとして、非開示決定の取消しを求める行政訴訟を起こしていた件で、経済産業省は、一転して、5月末から6月5日までに、訴訟対象となった28事業所のうち14事業所の報告を開示した。
NPO法人「気候ネットワーク」(代表=浅岡美恵弁護士)は、地球温暖化防止に取り組む全国の市民・市民団体のネットワーク組織として、温暖化に関する情報発信や政策提言、温暖化国際交渉への働きかけなどの活動を続けている。
1998年4月に設立され、1999年11月にNPO法人化。
1979年に制定された「省エネ法」(「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の略称)では、一定量以上のエネルギーを使用している工場は、その消費量を経済産業省に定期報告することが義務付けられている。
エネルギー消費量に一定の係数を掛けることによって二酸化炭素排出量を算出することができることから、この定期報告情報は温暖化対策の評価、見直し等を行うために不可欠な情報。にもかかわらず、この報告情報は公開されていない。
2004年6月、NPO法人「気候ネットワーク」は、2003年度分のエネルギー消費量に関する定期報告について、経済産業省に情報開示請求を行った。しかしながら、対象事業所の85%(4283事業所)については開示されたものの、残り15%(750事業所)については開示されなかった。
なかでも、高炉による製鉄、石油精製、セメントなどエネルギー多消費の業種では、ほぼ100%が非開示となった。
非開示の理由は、「製品当たりのエネルギーコストが類推され、競合他社の競争上の不利益や販売先事業者との価格交渉上の不利益が生じること等が想定される」というもの。情報公開法では、行政機関にその保有する情報の原則公開を義務付けているが、製造方法等のいわゆる企業秘密については開示しなくて良いとされており、それに基づいた企業の開示拒否理由を経済産業省が認めた形での非開示となった。
750事業所の非開示を受け、「気候ネットワーク」は、情報公開審査会に対して審査請求を行うとともに、モデル訴訟として、2005年の7月に近畿経済産業局管内の7つの代表的大口排出事業所について大阪地裁へ、また、中部経済産業局管内の9事業所については名古屋地裁へ、さらに8月にその他の経済産業局管内の12事業所については東京地裁に、非開示決定処分の取消しと開示を求める行政訴訟を起こした。現在も係争中。
今年5月、経済産業省は訴訟対象事業所の半数(28のうち14)にあたる事業所の非開示決定を「開示」に変更するとし、「気候ネットワーク」に対して、5月末から6月5日までに14事業所の開示文書が送付された。
経済産業省が一転して14事業所の情報開示に至ったのは、同省が訴訟対象事業所に対して、あらためて非開示情報とする根拠と非開示の意思を確認したところ開示に応じたため。しかしながら、残る14事業所は、今も開示に反対しているとのこと。
気候ネットワークでは、開示に転じた事業所については、「遅きに失したとはいえ、地球温暖化問題へのあるべき取組姿勢に立ち返ったことは評価される。」としている。また、今回の開示決定をもとに、訴訟対象以外の722事業所に対する情報公開審査会の答申、訴訟中の28案件の早期結審に向けて働きかけを続けていきたいとのこと。
地球温暖化防止情報公開訴訟および、今回の開示決定などについては、「気候ネットワーク」のサイト内、下記を参照のこと。
http://www.kikonet.org/iken/kokunai/2006-6-5.html