行政 : 稲城市、介護ボランティア特区提案
6月9日、東京都稲城市(人口7万8000人)は、介護支援ボランティア活動を行った高齢者の介護保険料を割り引く「介護支援ボランティア控除」特区の提案を内閣官房構造改革特区推進室に提出すると発表した。
昨年8月、東京都の稲城市と千代田区は共同で、介護の現場で一定時間ボランティア活動をした65歳以上の高齢者を対象に、年間の介護保険料を5千円安くできるよう、厚生労働省に対して介護保険制度の改正を要望していた。
しかし、昨年12月、厚生労働省は、当面はこれに関する制度改正は行なわないことと決定。当時、厚生労働省の介護保険課によれば、積極論もあった一方で慎重論も強かったとのこと。
慎重論のなかには「介護保険では現金給付を行なっていないが、この制度は現金給付を想起させる」、「ボランティアは、対価的な性格のものではない。この制度ではボランティアの意義がうすれる」、「ボランティアとして参加できない高齢者もおり、こうした人たちにシワ寄せがいく」などの意見があったそうだ。
その後、稲城市は、「介護支援ボランティア控除」を実施可能な保険者が試行して、その効果や問題点を検証し、あらためて制度見直しを行っていくことが必要だとし、構造改革特区への提案を検討してきた。
また、同市は、今年4月から5月にかけて市内のボランティア関係者105名に対して、「介護支援ボランティア控除」制度の創設に関するアンケート調査を実施。結果は、59.6%が創設に賛成、反対が26.9%だった。
6月9日に公表された稲城市の提案内容では、介護保険料控除の対象となる高齢者(65歳以上)について、下記を想定している。
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前年度、指定する介護保険施設、地域支援事業等において、介護支援ボランティアとして、3ヶ月以上(週1回(2時間)として12回程度)継続参加した者。
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前年度、指定する地域支援事業等において、介護支援ボランティアとして、36回以上(1回2時間程度)参加した者。
なお、当面、在宅でのボランティアは対象とせず、また、いわゆるNPO法人等の「有給職員」も含まない予定。
また、保険料控除の申請方法は、まず、指定されたボランティア受け入れ機関が介護支援ボランティア手帳を発行。介護支援ボランティアは参加の都度、スタンプを押印してもらう。これをもとに社会福祉協議会が「(仮称)介護支援ボランティア証明」を交付。希望者は、「(仮称)介護支援ボランティア証明」を添付した介護保険料控除申請書を市の介護保険担当へ提出し控除を受ける、というもの。
現在、政府は6月1日から30日までの1か月間を「特区、地域再生、規制改革・民間開放集中受付月間」とし、特区における規制の特例措置の提案、地域再生に関する支援措置の提案及び全国で実施すべき規制改革・民間開放の要望の提案を受付け中。稲城市は、近日中に内閣官房構造改革特区推進室に「介護支援ボランティア控除」特区の提案を行うとしている。