行政 : 経産省、地域の魅力は「就業達成度」で
5月16日、経済産業省の「少子高齢化時代の地域活性化検討委員会」は、地域活性化政策の今後の方向性を示す報告書「地域活性化戦略」をとりまとめて公表した。報告書では、NPO活動への参加など、収入獲得以外の「働きがい」を盛り込んだ「就業達成度」を地域活性化の新たな政策目標指標とすることを提唱している。
「少子高齢化時代の地域活性化検討委員会」は経済産業省地域経済産業審議官の私的研究会。座長は、大西隆東京大学先端科学技術研究センター教授。
同委員会は、今年1月31日~4月20日まで計4回開催され、少子高齢化社会に対応する地域産業の可能性をさぐり、地域活性化に向けて経済産業省として取り組むべき政策について検討を重ねてきた。
5月16日に、同委員会は、「地域活性化戦略」(少子高齢化時代の地域活性化検討委員会報告書)をとりまとめて公表した。
この報告書では、今後の地域活性化策として、(1)複数市町村圏単位での地域活性化への取組を推進すること、(2)その際の新たな政策目標指標として「就業達成度」を設定すること、の2つを提唱。
(1)については、飛騨高山地域では3市村(合併前は15市町村)にまたがって観光業を軸に共通の圏域を構成して地域を活性化させていることを例に挙げ、国としても、今後、複数市町村圏単位における経済発展のための政策強化が適当だとしている。
さらに、報告書では、このような経済社会的に一つのまとまりをもつ複数市町村圏単位は、必ずしも固定的な地理的概念ではなく、産業・経済振興、日常の生活関連サービスの維持・向上など、目的に応じて、多様な組合せがありえるとしている。すなわち、産業・経済の振興については広域的な政策が効率的であっても、住民生活への便益を与える流通・サービス業の振興、公的サービスの提供などの面では、生活圏的なより小さい単位が、政策を講じる上で効果的だとしている。
(2)の「就業達成度」は、地域活性の成否を検証する場合に、単に各地域における総生産額だけでなく、新たに、働きがいや働きやすさなどの満足度を指標化した「就業達成度」の導入を提唱。その背景として、大都市と地方では、不動産取得価格等に差があることから、住民の実質的な生活水準は生産額や所得額だけでは対比できないこと、加えて、人間の満足度は、金銭的な所得を得ることだけでなく、良い環境の下で働きがいのある仕事をすることによっても達成されることをあげている。
「就業達成度」を物差しとすれば、恵まれた社会・自然環境における働きがいのある仕事を創出することが地域活性化につながることになる。
報告書では、徳島県上勝町の「つまもの」ビジネスを例に挙げ、企業誘致などによる雇用拡大だけが地域活性化ではないということを示している。
上勝町は、高齢化率4割を超え、人口2,000人余りの四国で一番小さな町。同町では、女性、高齢者が主体となって、紅葉・柿・南天・椿の葉、梅・桜・桃の花など、自然の中にあるものを料理の「つまもの」として商品化し販売。現在では179名が参加し、年間売り上げ2億5千万円の町の一大事業となっているとのこと。
さらに、「就業達成度」の発想に立てば、NPOへの参画も企業での就労と同等の価値があるとされることから、地方自治体の地域振興の対象は企業だけでなく、NPO、ボランティア団体などにも広がるとしている。
なお、この報告書の内容は、現在、経済産業省で最終取りまとめを行っている「新経済成長戦略」等に反映させるとのこと。
「地域活性化戦略」の本文は、経済産業省サイト内、下記に掲載されている。
http://www.meti.go.jp/press/20060516003/20060516003.html